CFOの適切な経歴について考える
これまで色々なUSCPAの活躍する場について記事にしてきましたが、今日は、CFOへのキャリアパスについて考えてみます。
※本記事では、以下会計資格については、USCPAについてのみ言及していますが、当然に日本やその他の公認会計士資格でも同様のことは言えると思っています。適宜読み替えて読み進めて頂ければと思います。
さて、議論を進める前に、一冊、本の紹介します。
『CFOを目指すキャリア戦略』
CFOに必要なスキルや経験について記載されているので、CFOを目指す方には是非ご一読されたい本となっています。
この本の素晴らしいと思う点は、
「大企業」「再生企業」「MBO企業」「事業承継企業」「中小・ベンチャー企業」「外資系企業」と企業の種類ごとに必要なCFOのスキルについて解説があることです。
未だにCFOを経理部長の延長と考えている企業や経営者が多い中で、本当に成功するために必要なCFO像というものが読み解ける書籍となっています。
CFOを目指す人は1度目を通しておいて損はないでしょう。
CFO人材に有用な資格はMBA!?
なぜ書籍の紹介から入ったのかというと、
上記の書籍の中で、個人的に気になったのが、CFOの有用な資格についてのページ。
あまり詳細を書くとネタバレしてしまうのですが。
いや、というか記事にしている時点で多少ネタバレするんですが、
一見驚きの結果が書かれていたんです。
この書籍では、
CFOに最も有用な資格は、USCPAにも日本の公認会計士も抑えて、MBAとなっています。(厳密には資格ではないですが)
とは言え、改めて考えてみると一理あるな、と思い返しました。
MBAとは経営学修士、つまり高度な経営学の大学院を卒業するということ。
そして、海外・国内のどのMBAにおいてもほとんどの場合、どのポジションの経営人に対しても当てはまる基礎的に履修しておかなければならない科目と、そこから上級者へ向かうための選択クラスがあります。
そして、1~2年、仕事を離れてみっちり勉強する。
CFOは管理部門を任されることばかり見られがちですが、
実はそれ以上に会社の業績向上の責任を負っています(特に外資系企業のCFO)。その時に、単なる「管理担当」では、対応しきれません。
強力なリーダーシップを発揮することや、時にはマーケティングや事業側へ顔を出して、ファイナンスの専門家の立場からコミュニケーションを取り、会社の業績の最大化を図る。
1人の経営者として、そしてCEOの補佐役として、企業価値の最大化を図る。
それに必要な学びをMBAで得られることは何ら不思議ありません。
実際に、最近はMBA卒業した投資銀行(IBD)出身者がベンチャーのCFOに就くことも増えています。彼らは必ずしもUSCPAや日本の公認会計士を持っておらず、これまでの業務経験も、管理部門を向いてはいません。
別にIPOのためだけに呼ばれたわけではなく、金融・ファイナンスの視点から会社にしっかりと貢献することを期待されています。
(逆に言えば、管理は管理部門長にかなりの部分を任せることになるでしょう)
なお、CFOの業務の重要ポイントである、「攻めの経営」については、以下の記事にも書いているので、ご参考にしてみて下さい。
USCPA+M&Aアドバイザーの効能
では、USCPA取得後に、MBAも出なければいけないのか?MBAに代わる方法で必要な力が身に付かないだろうか?
もちろん、ないことはありません。
個人的にお勧めしたいのが、『USCPA+M&Aアドバイザリーの経験』です。
M&Aアドバイザリーと言っても業務は多岐に渡りますが、以下を一通り経験することが、望ましいと考えています。
まぁ、要は全部じゃん!ということですが、
プレM&Aを一通り経験し、可能であればPMIの現場も見ておけたらなおの事良いというイメージでしょうか。
個別のスキルとしては、
財務DDで、PL・BS・CFの一体の考え方と分析手法が身に付き、
ビジネスDDで、事業環境分析やKPIの分析などが経験でき、
バリュエーションでコーポレートファイナンスの理解と財務モデルを作成する能力が身に付きます。
そして、
ファイナンシャルアドバイザーとして案件を自ら案件を回せるようになり、
買収後のPMIの流れなどを多少なりとも経験していれば、一通りCFOとしてM&AをEnd to endで理解できている状態に加え、業績向上・企業価値最大化への道筋を自ら考えることができるようになります。
従って、外資系のCFOはもちろん、IPO前後のベンチャーでも使える知識がもろだくさんです。
最後に、
めちゃくちゃ大変で激務なM&Aの業務を経験しておくことで、ハードワークや多少の無理難題ならば、普通に乗り越えられるタフさが身に付きます。この点は、CFOに限りませんが、業務をして行く中で、地味にデカいです。
(ある意味、MBA行くメリットも同様で、ハードに学び、ハードに遊ぶ・ネットワーキングをするためにあらゆる所へ顔を出す、ということでタフで積極的になりますね)
僕自身はBig 4のFASでM&Aを経験し、その後ベンチャーCFOをやりました。やはり、M&Aで得た経験は、非常に大きなステップであったことから、USCPA取得後にFASでM&Aを経験したい人に向けた、FASへの転職のサポート記事も書いています。
以下は、有料・無料記事を組み合わせた、FASについてのマガジンです。
→ FASの業務内容、職場の雰囲気、得られる知識・経験などの情報と、
転職活動時に必要な未経験者の職務経歴書の書き方、面接対策などの記事をまとめたマガジン。(3,600円相当の有料記事がマガジンだと620円お得になっています)
→上記必勝転職メソッドの記事に加え、FASでのPEファンドとの関わり方や、FAS後のキャリアパスなど、更に充実した情報パッケージ。
(5,560円相当の有料記事がマガジンだと980円お得になっています)
ところで。
このUSCPA+M&A経験の場合に経験が不足するものとしては、むしろ管理系です。CFOを目指すのであれば、事前に経理や監査などの経験を一定程度積んでいるとより望ましいです。
タッグを組める経理部長や管理部長として日本の公認会計士出身の方がいると更に心強い所ではありますね。
USCPA→監査法人→(FP&A)→CFO
このルートは、実際には一番多いのではないでしょうか。
監査法人で財務・管理のチェックを包括的に外部から行ってきた経験がCFOの管理系の業務で活きないわけはありません。
ただし、特に外資系の場合には、FP&Aか類似の経験を挟む必要があります。この辺は前述の業績向上に向けた事業へのアプローチの所をしっかり入って行く経験を身に付ける必要があるためで、監査法人では中々経験しづらい点ではあります。
何を隠そう、
僕が過去勤めた外資系企業のCFOは、全てこのパターンの人でした。(日本人もアメリカ人も)
外資系と言っても、日本拠点での話なわけで、
グローバルで見ると、海外の一拠点でしかないという点があります。資金調達も、本国へ必要な状況を説明して送金を依頼することが多いですし、本国の判断抜きで国内だけで自社のM&Aを決めることもまずありません。
積極的に自らの業務範囲として業績管理をして、コミットした数字の達成し、同時に管理部門をまとめて行くことができれば、十分に通用すると思われます。
USCPA→経理→FP&A→CFOの王道キャリア
最後に、最も想像に難くない、王道キャリアについて。
このパターンでCFOへのし上がる人ももちろんいないわけではありません。
ただ、1社で勤めあげてそれを達成するのは至難の業と言えるでしょう。
というのは、CFOのポジションは1つしかありません。
当然に、ポジションが空くまで待つ必要がありますし、空いたタイミングで自分がその第1候補にいなければなりません。
そして、これまで見て来たように、他の経験を積んだ人たちが横入りしてくるリスクもあります。
その点、外資系で多いのですが、
何年か毎に転職して、ポジションを徐々に上げて行くと言う方法はあり得ます。
その時に、経理として本国へのレポーティングや管理会計を経験した後に、FP&Aとして業績予測を徹底する業務に身を置き、最後にCFOへ上り詰める、という流れはやはり、王道として存在します。
しかしながら、「要所要所で転職する」とは言え、それなりの時間は同じ会社で過ごすことが絶対です。上へあがれる人とは、必ず上からの信頼を得て、いずれかのタイミングで引っ張り上げてもらう必要があります。
経営陣になるとは、人格も大事と言えるでしょう。
これは、仮にCFOとして直接どこかの会社へ転職する場合においても同様です。CEOや、外資であれば本国のレポーティング担当から絶大の信頼を得られなければ、簡単にはCFOとして納まることは難しいです。
結論として
USCPAを解説しているnoteでMBAを推すところからスタートして、元も子もない記事でしたが、やはりMBAの破壊力は高い、ということは言えるでしょう。
最もMBAは、コストが段違いに高く、海外留学で一流のMBAへ自費で行くのはかなりの投資となるため、Why MBA?の質問を突き詰める必要があります。
その中で、USCPAや日本の公認会計士と天秤にかけることは必要となるでしょう。そして、どのルートを取ったとしても、CFOへの道筋は過去の先人たちによって作られており、可能性は十分に存在しています。
つまり、
どの道を選ぶにしても、『それを信じて長期間かけてやり抜く力』が重要であることは間違いありません。
個人的な話を含むため、有料記事としていますが、海外MBA留学とUSCPA取得を天秤にかけた際のシミュレーション方法について記事にしています。ご参考になれば。(上記で紹介した『FAS 転職 コンプリートパッケージ』には含まれています)