ホロの推し活英語講座3:この公式翻訳字幕がすごい!(ホロぐら編)
はじめに
久しぶりのこのシリーズです。下書きはいくつかあったのですが、ついつい後回しにしてしまったので、タイムリーなネタを優先しておりました。
ホロライブ公式の一部の動画(ホロぐら、公式チャンネルでアップされる動画、一部オリジナル曲)は、YouTubeの字幕機能を使って様々な言語の字幕がついております。基本的には英語・インドネシア語、簡体、繁体、動画によっては他の言語(スペイン語、ロシア語、フランス語など)も用意されています。僕はこれを英語学習に使えると考え、いつも英語の字幕をオンにして観ています。すると「なるほど!」「そう訳したか!」と驚くことが多々あり、これをぜひみなさんに共有したいと思い、この記事を書くことにしました。
特にホロぐらの翻訳は秀逸なものが多く、思わず笑ってしまうものや「天才か?」と呟いてしまうものまで豊富です。そもそもホロぐらを観たことがある方ならお分かり頂けるかと思いますが、あの脈絡が意味不明でカオスなストーリーを翻訳することは大変難しいでしょう。
そこで今回は、3年ほど前のホロぐらから観返して、面白いと思った字幕をメモとしてスクリーンショットを撮る、ということをしてみました。ところが、およそ10回分くらいだけで大量のスクショが集まってしまいました。恐るべし。というわけで今回は溜まった分だけご紹介しようと思います。今回取り上げなかった回でも秀逸な翻訳が多くあるので、また後日別の記事として書こうと思います。というか、ホロぐらが公開されるたびに翻訳について紹介・解説する記事を書いても面白いかもですね。
分類
今回、ホロぐらを英語字幕つきで何話か観て、秀逸だと感じる翻訳は次の3種類に分類できることに気づきました。
難しい(単純に自分が知らなかった)言い回し、フレーズ、イディオム、スラングなど
キャラクターやトーンに合わせた翻訳
日本語の言葉遊び、駄洒落、日本でしか伝わらないネタなど、翻訳が難しいフレーズの翻訳
ということでここからは、これら3つの翻訳を紹介し、(可能な限り)解説をしていきます。
難しい(単純に自分が知らなかった)言い回し、フレーズ、イディオム、スラングなど
*mumble mumble* / ブツブツ
mumbleは「ぶつぶつ呟く」という意味です。動詞を連続させてオノマトペにする手法です。
I think you need a better gameplan. / 間違ってるよ、その努力
ノエルさんがつよつよVTuberを目指すために、潜水時間を伸ばそうと息止めの練習をしています。ここでフレアさんが言ったのがこのセリフ。ここでのgameplanはもちろんゲームのプレイに関する話ではなく、行動計画や方針という意味です。「もっと良い計画が必要だと思う。」というところですね。
Not on your life. / やだよー
マリンさんが持ってきた「くさや」を見つけたフレアさん。食べる?と尋ねられ、こう返しました。ただ単に「Nope」だけでもいい気がしますが、この言い方をすると「絶対にヤダね」というトーンになります。「on your life」は「あなたの命に」という直訳で、これを否定することで「あなたの命をかけられても嫌だ」ということになるそうです。
Yeah, right! / 嘘つくなー!
これは実は知っていたのですが、初見では絶対わからないなと思いご紹介。謎の宇宙船のような乗り物に乗ってミオさんに前に現れたおかゆさん。ミオさんが「何それ?」と尋ねると、おかゆさんは「ランボルギーニ」と嘘をつきます。そしてそれに対するミオさんのツッコみがこちら。「嘘をつくな」なのになぜ「yeah, right(ああ、そうだね)」に?と疑問に思う方も多くいらっしゃることでしょう。
実はこの「yeah, right」は、心底どうでも良いことに対する皮肉めいた相槌なのです。日本語で言うところの「あっそ」「はいはい」「勝手に言ってな」みたいなニュアンスです。実はこれ、僕は知らずに一度使ってしまったことがあります。その時に「もしかして、これってこういう意味があるの知らない……?」と教わりました。
つまり今回も、おかゆさんがあからさまな嘘をつくので、「勝手に言ってろ〜!」とツッコみ?を入れた感じですね。
I wanna try doing a raid! / カチコミしてみたい!
カチコミってどうやって訳すのか疑問に思っていましたが、そのまんま「raid」なんですね。龍が如くの英語版Fan wikiを調べてみましたが、そちらでもraidになっていました。
余談ですが、「東城会」などの「会」は「clan」と呼び、「荒川組」などの「組」は「family」と呼びます。「東城会四代目会長」は「Forth chairman of the Tojo Clan」です。もちろん女性の場合は「chairwoman」です。(例:五代目会長代行の堂島弥生は「Interim Chairwoman」)
Fun fact: …… / ちなみに……
直訳すると「面白い事実」ですが、ちょっとしたトリビアを言うときの枕詞として使います。
TIL. / へぇ〜
TIL: Today I learnt(今日、私は学んだ)を意味するスラングです。初耳だったことや、知らなかったことを聞いたときに使いがちです。
T-minus three minutes to detonation. / 爆発まであと3分ね。
事務所にゴキブリが出てしまったため、勢い余って時限爆弾をしかけてしまったようです。ここで「T」は、物事が起こる時間……ここではdetonation(爆発)が起こる時間を意味します。現時点で「T-3 mins」ということなので、爆発が起こる時間マイナス3分ということですね。
Pin-drop silence, Coco-chan. / ココちゃん、私達静かにしていようね。
ボトルシップを買って組み立てているマリン船長。しかし、みんながやかましくするため集中できません。ぺこらさんをぶん殴り、ココさんとすいせいさんにも静かにするように促します。
Pin-dropのpinとは「針」のこと。つまり、針の音が落ちるのも聞こえるほど静かにしよう、ということですね。
Can always count on you! / さすが〜!
突然流し素麺をしたくなるおかころ+あやめさん。そんなこともあろうかと、流し素麺セットを用意していたフブキさんに思わず出たあやめさんの言葉です。
count on youで「あてにする」「頼りにする」ということなので、「いつも頼れるね〜!」みたいな感じで、「流石」を表現しています。
Daylight robbery! / このボッタクリ!
流し素麺をしたいのに、素麺そのものがない……と思いきや、たまたま通りかかった素麺売りのはあとさん。最初は安価で売るつもりが、状況を判断すると、途端に売価を10000円に上げました。
Daylight robberyは直訳すると「白昼の強盗」で、「法外な金額を請求すること」を意味します。白昼堂々とできてしまう強盗。面白い言い回しですね。
Hell hath no fury like a rabbit angered! / 怒り狂ったウサギは容赦がねえぜ!
狼と狐に襲われる哀れな羊。弱肉強食は儚いものです。そこで突然現れ、このセリフを言い放つ兎。
これはどうやら「Hell hath no fury like a woman scorned. / (夫に)裏切られた女の怨念は恐ろしい。」という意味のことわざからきているようです。hathという見慣れない単語がありますが、これは英語の古語で「has」に相当します。直訳すると「地獄には裏切られた女(怒ったウサギ)のような怒りはない。」ということになります。なぜこれがその意味になるのかはわかりませんでしたので海外ニキに聞いたところ、キリスト教では地獄は「霊魂が神の怒りに服する場所」とされているそうです。つまり、そんな地獄にすらもないほどの怒り、神の怒りですらも比べ物にならないほどの怒り、ですね。
A fox can outfox defeat! / 狐に敗北は無い!
ドラゴンになるために修業を重ねたわためさん。食物連鎖をひっくり返すための逆襲が始まりました。しかし、そこに立ちはだかる狐。
このoutfoxというワードは実際に狐 (fox) から来ています。その狡猾さから「惑わす」「出し抜く」「凌ぐ」という意味があります。つまり直訳すると「狐は敗北を凌ぐ!」ということですね。ここでこの言葉がスッっと出てくるようになりたいですね。
Does that really fly in a band? / バンドでトライアングルってありなの?
突如バンドをやりたくなったまつりさん。しかし取り出したのはトライアングル。思わずるしあさんのツッコミが入ります。
ここでのflyとは「飛ぶ」という意味ではなく「通用する」という意味です。「それは本当にバンドで通用するの?」という直訳になります。
キャラクターやトーンに合わせた翻訳
単語のところどころにpekoを入れる(ぺこらさんの翻訳全般)
日本の「語尾」システムの翻訳は、単純に言えばフレーズやセンテンスの最後にその語尾を入れるだけで、(日本語やアニメに詳しい人には)伝わるのですが、語尾にあたる言葉をフレーズ内の単語に入れることで遊び心のある翻訳にしているようです。例えば:
When did you pekonjure that up?(いつの間に作ったぺこか?)
conjure upで「魔法のように素早く用意する」という意味。
Was that the pekonly idea in there?!(その案しか入れてないぺこか?)
peko + only
など数多くあります。雰囲気的には日本語の駄洒落に近いのでしょうか。
rの音がwになる(ルーナさんの翻訳全般)
ルーナさんの舌っ足らず滑舌は、英語だとrの音をwにすることで表現されます。例えば……
Ugh, the sunshine's too bwight.
bright -> bwight
I'm all weady.
ready -> weady
I'll surpwise her with this big bazooka.
surprise -> surpwise
I wuv you… 'cause you'll eat this Dark Matter for me.
wuv -> love
これは有名な言い回しですね。kors k作曲のWuv Uもこれと同じで「love you」という意味です。
ケツではないでしょ。
ちなみに海外ニキ的にはこれをお気に召さない方もいるようです……笑
Academics shall rule the coming age (citation needed) / これからは勉強の時代でヤンス
アキさんが急に勉強に目覚めて、このフレーズを言い放ちます。このruleは動詞なので日本語での「ルール」という意味ではなく、「支配する」「統治する」「君臨する」といった意味があり、全体を直訳すると「学問は来(きた)る時代を支配するだろう(要出典)」といったところです。
あえて強い「shall」を使って、最後に「citation needed」と入れることで、日本語の「でヤンス」の胡散臭さを表現しているのかな?と思います。個人的にはしっくり来ました。
Ya little punks! Yer asses gon' pay for this big time, ya hear me?! / んだらぁ〜!どう落とし前つけるつもりじゃい!
カチコミ=事務所のガラスを割られてブチギレの友人Aさん。オラオラ系の喋り方になっていて、翻訳もガッツリスラングまみれです。
まず「ya」は「you」です。そして、「little punk」は青二才とか若造、チンピラという意味があるため、Ya little punks!は「このガキども!」みたいな感じでしょうか。
そして次のセンテンスですが……
yer: yeah
asses: assの複数形
gon': going to
pay for: 〜の支払いをする、弁償をする
big time: ものすごい
という感じなので、「おいクソども、どうやってこのとんでもないやらかしの代償を払ってくれるんだ?」という感じになるはず……ちょっと自信ないです。
ya hear me?!は「You hear me?!」で「聞いてんのか?!」って感じでしょう。
Want some candy, lassy? / 飴ちゃんあげよか?
スバルさんとミオさんの脳内で大阪のおばちゃんになったルーナさん。大阪のおばちゃんはなぜか飴玉をカバンにたくさんキープしていて、孫世代の人に突然渡しがちです。ちなみに僕も大阪に行ったときに貰ったことがあります。あと虎柄のスウェットみたいな服を着たおばちゃんにめっちゃ自転車のベルを鳴らされたこともあります。
この「lassy」は正直わからないのですが、イギリスのスラングで小さな女の子をlassieと呼ぶらしいので、おそらくそれに近いものかと思います。「飴いる?お嬢ちゃん」みたいな感じですかね。ちなみにlassieはスコットランドなど訛りの強い地域の方々が使うイメージだそうです。
日本語の言葉遊び、駄洒落、日本でしか伝わらないネタなど、翻訳が難しいフレーズの翻訳
What is this, a correspondence course?! / あ、これ進研ゼミでやるやつだ!
忘れ物をしたまつりさんにお届け物をしたいのですが、とんでもない速度で移動するまつりさん。追いつくためには……ここで問題です!と、ちょこ先生が「旅人算」の問題を出します。そこでツッコむミオさん。これは……間違いなく日本でしか伝わらないネタですよね。
correspondence courseは「通信講座」という意味ですので、「何これ、通信講座?!」とシンプルに翻訳しています。まあ、進研ゼミは通信講座なので間違いはないですね。
I'm so sorryacinth. / 許してヒヤシンス
ヒヤシンスは「hyacinth」なので、このダジャレ(そもそもダジャレではない)は翻訳しやすい部類ですね。元ネタはアニメ「日常」ですが、どうやらヒヤシンスの花言葉に許しを請う意味があるそうです。
ちなみに次の「許ソーラン!」は「You are absoraned!」となっています。最初はYou are absorbedかと思いましたが、「夢中になっている」「吸収される」という意味で、いまいちピンと来なかったため、これも海外ニキに聞いてみました。absorbedではなくabsolvedで、「(罪などを)免れる」という意味だそうです。
余談:「ピンと来る」は「ring a bell」と言います。
You should be fine with your hooves. - That's a goat! / 羊だから余裕ですよね? - それはヤギ!
このあたり一連の流れが、クレヨンしんちゃんのギャグの応酬みたいになっているのですが……
元:羊だから余裕ですよね?
英:You should be fine with your hooves.
訳:その蹄があれば大丈夫のはずだよ。
元:それはヤギ!
英:That's a goat!
訳:それはヤギ!
元:細長い野菜だから降りれるでしょ?
英:You can sink straight to the bottom.
訳:そのまま底に沈めばいいよ。
元:それはネギ!
英:That's a boat!
訳:それはボート!
元:もしもし?オレオレ
英:Hello? Is this the police?
訳:もしもし?警察ですか?
元:それは詐欺!
英:That's a report!
訳:それは通報!
元:JR西日本因美線の駅名?
英:Cut your life into pieces?
訳:人生を切り刻め?
(解説:これはLast Resortという曲の歌詞の一部)
元:それは那岐!
英:That's my last resort!
訳:それはLast Resort!
元:メェ〜って鳴くやつ?
英:What goes "baa"?
訳:メェ〜と言えば?
元:それは羊!
英:That's a sheep!
という怒涛の展開でした。日本語版が「ヤギ・ネギ・詐欺・那岐」で回しているのに対して、英語版ではギャグの雰囲気だけを残しつつ、内容をがっつり変えて「goat, boat, report, resort」で回しています。とんでもない勢いなので最初は見逃してしまいましたが、ちゃんと読んでみると英語でもシュールですね。
Why say "knock your socks off" when the shoes go off first? / どうして靴の中なのに靴下って言うんだろう?
スバルさんの正論ツッコミに興味を示さず、突然謎の疑問を口に出すトワさん。僕も同じことを小学校の時に思っていました。なんででしょうね。
英語で靴下はsock(s), 靴はshoe(s)なので、当然ながらこれを直訳してしまうと「Why is it called a sock even though it's inside a shoe?」になってギャグとして成立しません。そこで、靴下に関わるギャグというところは残して、英語でも伝わるように変更したのですね。
「knock ones socks off」は「驚かせる、感動させる」という意味があります。信頼できるソースは見つかりませんでしたが、靴下がまだ貴重品だった時代に、相手を殴って靴下を奪ってしまうところから「相手をボコボコに負かす」という意味があり、そしてそれが転じて「気絶させる」「驚かせる」という意味になったそうです。その語源を知らなければ、「Why say "knock your socks off" when the shoes go off first?」つまり「なぜ靴を先に脱がせるのに、靴下を取る(=驚かせる)って言うの?」と言いたくなりますね。
ちなみに日本語の靴下の「下」は「内側」を意味するので、靴の内側、で靴下だそうです。
My jaws can't wait! / 楽しみ〜!
これは……正直驚きました。日本語ではダジャレでもなんでもないのですが、なんと英語ではダジャレになっているのです。
流し素麺をするはずが、なんやかんやあって海に来た一行。もう、ここで流し素麺をしてしまおう!と提案すると、どこからともなく現れたサメが「楽しみ〜!」と言ってノッてきます。これは特にダジャレでもなんでもないですよね。
しかし英語字幕を見ると……。「My jaws can't wait!」直訳すると「私の顎も待ち切れない!」ということで、「早く食べたい!」という意味になるのですが……jawsって……ジョーズですよね。サメだから……(もちろんサメのジョーズも顎から来ているのですが)。
またまた余談ですがにスプラトゥーン3のオカシラシャケ「ジョー」は、その大きな顎からジョーという名前がついていると思うのですが、なんと北米版だと全然違う名前で「Megalodontia」です。意味は「巨大歯症」。
その他
Remember when I promised to kill you last? I lied. / お前は最後に殺すと約束したな?あれは嘘だ。
これは笑ってしまったので、急遽「その他」枠として紹介します。
言わずもがな、某映画の吹替版のパロディですが、なんとこれ、しっかりと元の映画のセリフになっていました。次の「筋肉モリモリマッチョマンの変態だ」も「it's the one gigantic motherf*cker」になっていました(オリジナルでは He's one……)。
ちなみにその後のフブキさんの「言うことを聞かないと娘が死ぬ。OK?というシーンで英語版はNOと答えているけど、日本語吹き替えはOKと答えている」というfun factのパートもちゃんと翻訳されていました。下調べがスゴイ。
おわりに
というわけで、3年ほど前のホロぐら数作品を英語字幕つきで観て、面白い・共有したいと思ったものをご紹介しました。公式の再生リストにまとめられているだけでも208本(2024年5月31日現在)ありますので、ほんの一部にすぎませんが、お楽しみいただけたのなら幸いです。
冒頭でも述べたように、ホロライブの公式チャンネルでアップロードされる動画(配信除く)は基本的に英語字幕がついていますので、それを見ながら動画を観ると良い勉強になります。僕は常に英語の字幕をオンにしています。もちろんホロライブEnglishのチャンネルの動画には英語字幕・日本語字幕がついていますし、Indonesiaでも同様です。これらも英語の勉強にうまく活用したいですね。
今回まとめていて予想以上に楽しかったので、新しく「ホロぐら翻訳字幕解説シリーズ」を作ってもいいな、と思っています。まあ、現状1ヶ月に1本ペースが限界なので、難しいとは思いますが……また気が向いたら書いてみます。
来月の記事は……実はもう内容が決まっています。次回は英語講座ではなく、海外ニキの「グッズ」についてです。ご興味のある方はぜひ来月もご覧いただけますと幸いです。
あ、あと、ゲーマーズライブの感想も書きたいです。