今一番幸せなのは夢の中

あー

幸せな夢だったな


そう思いながら目が覚めた

憧れの人と並んで

何かずっと言葉をかわして

笑い合っていた


何でこんなところ通ることを選んだの?


そういいながらそれでもなお

浮足立った気持ちで

深い川の中を歩いていたりもした

目の前を横切る大きな赤い魚の名前を

わたしは彼に尋ねていた

夢の中らしい支離滅裂なシチュエーションで

暑くも寒くもなかった


川を抜けたら服も濡れていなくて

またおしゃべりしながらただ知らない道を歩いていた


ひとり親になって一年近く経った

私の人生はいつもなにかとうまくいかない

掴んだと思った幸せは虚構で

誰が悪いのか私が悪いのかすら

もうよくわからない

ただこうやって孤独に打ちひしがれているとき

ああわたしの人生だ

わたしのデフォルトの立ち位置に戻ってきた

そう思うくらいには

小学校高学年くらいの時から

ずっと孤独でなんだか息苦しくて

安心できる居場所を求め続けてきた



31歳になっても手に入らない


ずっと足元がグラグラ揺らいだまま

誰の手を取ればよいのかもわからず

そもそも差し伸ばされる手はどれも

さらなる闇への手招きのようだった


娘を私のような目にあわせたくないな

私より幸せに

どうかこんなに日々悩まないで笑顔で

人生を謳歌してほしい


そんな願望とは裏腹にすでに

娘から父親を奪ってしまったわたしに

神様は罰を与えるために

次から次へと私に、こんな無力なわたしに、

わたしには難しい難題を足元に転がして

わたしを躓かせる


ああもういやだな

諦めてしまいたい

いっそ もうなにもかも


そんな風に思う日々の中で

12月31日

孤独なシングルマザーの私とその娘を

泊めて一緒に過ごして大切な友人の

小さな都内のアパートで


幸せな夢を見ていた


直接触れたことのない

憧れの人の腕に体を預けて

ありったけの力を込めてしがみついた

心から安心して、すごくすごく幸せだった


現実ではなかなか見つけられない

私が求めてやまない

私を孤独にしない暖かさが本当にあった


浅い眠りだったから

不意に目が空いて思った


夢だったな

ああでもいい夢だった 

まだ幸せだ


殺伐とした日々の中の一瞬のオアシスが

夢の中にしか存在しないなんて

笑えるくらい悲しいけど

それでもまた今日から新しい年が始まったのだから

一歩一歩、重りを付けたままでも

歩き続けるしかないのですね



欲を言ったら

12月31日じゃなくて

1月1日の夢だったら

あら、なんて縁起がいいのかしらなんて

私をもっと励ましてくれたかなとも

思ったりした


今日はどんな夢を見るでしょうか


せめて夢の中では




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