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田舎で宣伝0で販売会をやって2日間で数十万売れた話

このインターネット時代でのマーケティングではどうインターネットを活用するのかが主軸になる、SEOのためにブログを書いたり、アナリティクを分析して日々自社のマーケティングを進化させていく。

もちろんリアルでのマーケティングもあるのだけれどその多くは立地であるとか、看板であるとか、チラシであるとかそう言うツールを使って宣伝を行うだろう、

先日僕たちの会社がある奈良県の田舎で本部の一部を使った販売会を行ったのだが、その販売会は広告を0にした結果僕は今までのマーケティングの概念が覆された、いやむしろ正しすぎて腰を抜かした。


奈良の田舎で宣伝0で販売会をやってみた

僕たちの会社は自慢じゃないけど田舎にある。

最寄り駅は無人駅で住宅街といえど車がないと生活がかなり困難な場所にある。

そんな僕たちが販売会をしようと思ったのは他でもないお客様からの声だった

「最近販売会してへんやん」

縫製工場を運営する私たちは年に2回くらい販売会を行っている。

販売するのは職人さんが縫ったシャツであるとか、技能試験の練習の時に縫い上げたジャケットであるとか、あとはアパレルメーカーさんに声をかけてサンプル品やファミリーセールで残ったものなどを安く仕入れてきたものだ。

他にも残布や余ったボタンやファスナーの残りなどマニアックなものも多い。

奈良県の人たちのほとんどは大阪で買い物に行くのだけれど頻繁に行くことはなく、布やボタンなどもローカルの手芸屋さんで売っているものはバリエーションが少ないから、年に2回の販売会にはたくさんのお客様がきてくれてたくさん買ってくれる。

毎回1日お店を開けると大体10万円くらい買ってくれる。

洋服なんかは2000円とかで売っているからなかなかの売り上げだ。

地域の方に来ていただくために毎回広告も打つ、2万円くらいかけて宣伝して、2日間開催し20万円の売り上げ。

と言うような感じだ。


実は今年の3月も販売会を計画していた。

と言うのも新型コロナの影響もあって売上が激減していたからなんとか少しでも売り上げを上げなきゃいけなかったから。

でも当時はまだ正体不明の新型コロナウイルスに対する恐怖も大きく、僕は開催中止を決定した。


「最近販売会してへんやん」

そう言ってくれたのも毎回販売会をすると結構買ってくれて、それでいて口コミでお客様をガシガシと呼んでくれる人だった。


まだコロナがなくなったわけじゃなかったけど、売上は下がっているし、

最近販売会もしていなかったから平日に1日だけその人とその人が呼んだ人たちだけにお店を開けることにした。

宣伝費は0でむしろTwitterやFacebookでの告知もしなかった。

完全に口コミだけに頼ることにしたのだ。

当初の売り上げ目標は7万円。

(と言うかその人が数万円買ってくれるから、ほぼその人の売り上げだと思っていた)

もちろん地域に広告なんて出さなかった。


セール当日

オープンは11時45分

金曜日だったので朝から普通に出社して朝礼して仕事していたそろそろオープン準備しなきゃなぁなんて思っていた、

11時20分

「やってる?」

はじめのお客様がやってきた。

おかしい。

おかしすぎる。

僕はそのお客様のことを知らない。

セーターを買ってくれた。

オープン前にもかかわらず知らない人がやってきて服を買ってくれたのだ、

オープン前というか年に2回しかやってないお店で宣伝もしていないから絶対にその日に店を開けることは知らないはずだ、

例のお客様が話したのだろう

しかしそれだけではなかった、店のドアが開いていて中に人がいることが珍しい田舎町だ、その後オープン前にもかかわらず道を通ったご婦人の90%くらいが入店してきて何かしらを買っていく。

車で来店してくれる人もたくさんいる。

「どうやって知ったんですか?」

って聞いたら

「○○さんに聞いた」

って言われた、そりゃそうだろう。

僕たちは信頼する一人に「お店やります」って言っただけなのだが、すごい拡散力だ。

完全に地元でバズってる。

60代のローカルインフルエンサーだ。

結果その日1日で17万円売れた。

宣伝している時の1.7倍売れた。

なんだよこれ。


幻の2日目

けど驚きはそこじゃない、幻の2日目に起こる。

「あんたらずるいわ、販売会やってるって友達に言うから明日も開けて」

関西のおばさまに「ずるい」と言われて、「ずるくないだろう」と思いながら僕たちは翌日もお店を開けることにした。

オープン時間は13時だと伝えた。


予定にないオープン2日目、オープン時間は13時だ。

僕は週末のルーティン通りパン屋さんでパンを買って家族と食べていた。

そろそろ昼だなぁなんて思っていたら午前中から出勤しているスタッフから連絡がきた

「お店を開けてください」

え?とりあえずいくわ。

と返事してお店に向かう、昼を少しすぎたあたりでオープンまでには時間がまだあった。

お店に着いたらスタッフに「もう4万円売れてます」と言われた。

オープン前の売り上げってそれアディショナル売り上げやん。


昨日もそうだけど田舎のお客様はフライングがすごい、オープン時間をガン無視して買い物してく。

もちろんありがたいのだが。

そしてその後も知らないお客様がめちゃくちゃきた

何度も言うが宣伝はしていない、2日目開けることも来ていただいたお客様にしか話していない。

どうやって知ったんですか?って聞いたら

「噂で」

と言われた、1日目は「○○さん」と言う発信元が分かっていたが12時間くらいたってそれはもうすでに「噂」に変わっていた。


結局幻の2日目にも初日と同じくらい売れた。

なんなんだよ。


混乱

僕は自分なりにたくさんマーケティングをしてきたと思っていた。

自分で言うのもなんだけど斜陽産業である縫製工場でこれまでおそらく100以上のメディアに出ている。

WBSも、ガイアの夜明けも、NHK国際放送も、民放の全国ネットも出た。

ファッション誌WWDや様々な情報誌、日経新聞をはじめとする全国紙にも出てきた。

Twitterではフォロワーさんが12000人を超えていろんな情報を発信してきた、

セミナー講師としてもたくさん呼んでいただき「広告塔」として活動してきた。


メディア露出だけじゃなく、メディアが取り上げたくなる話題作りをしたりしてB2Bでの問い合わせは年間1000件近くになるだろう。


自分はマーケティングをやってきた。

そう思っていた、そして今回は完全に力を抜いていた、

いや、手を抜いていた。

コロナのこともあるし宣伝を本気でやらずに「まぁこの人に売れたらいいや」と思って始めた販売会だった。

それがこの結果だ。


正直訳がわからなくなった、コストもかけずと言うか労力をかけずこんなに売れていいんだろうか?

弊社の売り上げとして「まぁ足しになれば」と思っていたが十分1つの仕事の売り上げとしてカウントできるほどの売り上げを上げることができた。


しかし冷静に考えれば当たり前のことだった。

だって多分これがマーケティングの本質だから。


マーケティングの本質

(僕がマーケティングの本質を語るのはまだまだ早いし専門家でもないから、いろんな意見があるのは甘んじて受ける)

偶然ではあったけどたった一人のためにやろうと思った販売会はその人にとって素晴らしい企画だった。

つまり完璧なペルソナができていた、そしてその人はうちに掘り出し物があることを知っていた。

その素晴らしい情報を他のペルソナにマッチする人「地元の方々」に最も信頼たる方法「直接」伝えたのだ。

そして売れたのが1日目。

その人の拡散力による結果だった、しかし問題は2日目である。

その人の拡散力はその日で終わっていたが実際に販売会が素晴らしかった、

地元には普段置いていないような商品が所狭しと並んでいて大阪にも売っていないような商品が低価格で買える。

その結果お客様から「ずるい」言われるような販売会になった、そしてそれが拡散された、これも最も信頼たる方法「口コミ」にて広げられた。

それがSNSである必要はなくて直接「あそこで面白いことやってる」と伝わった、

そして実際に広がって僕たちが知らない人たちがやってきて購入していただけたのだ。


マーケティングの本質は「伝え方」ではなく「伝えたくなる」であると思っている。

その伝えたくなるコンテンツを図らずとも作ることができていた。


田舎と都会は別の世界

もう一つの要因はこれが田舎だったから。

田舎というのは都会から「遠い」という概念の人が多いだろう。

しかし時間軸で考えると「遠い」だけではなく「過去」であるのだ。

つまり文明がまだ都会ほど発展していないし、常識や、コンテンツも発展していない。

場所が遠いだけではなく時間を遡って考えることができる。

孫正義さんが「タイムマシン経営」という(アメリカなどで流行っているものをいち早く日本に持ってきて流行らせる)経営を言うが、実は日本の中でもそれができる。

東京で流行ったものは大阪で流行る。

しかしそのあとは実は見逃されていることが多い。

東京でも大阪でも流行ったものが地方まで届かない、届かずに消えていく。

遅れて届く訳じゃなくてフェードアウトして消えていくのだ。

だから地方でこそいいものは売れる、だってまだないから。

ファッションなんて特にそうだ、東京で流行って、大阪で流行って、流行りが過ぎたものは処分される。

いや、まて地方がある。

地方なら売れる、だってフェードアウトされてなくなってしまうから。


今回「あそこにいい服がある」と口コミを広げてもらい、それが事実だったから広がった。

しかし置いている服はメーカーではファミリーセールも終わって本当に処分前だったもの達だ。

それが飛ぶように売れた。

つまり都会での不要物(もう売れないもの)は別世界である地方では価値のあるものに変わるのだ。

売る場所を変える。

マーケティングをする人は4P分析をするだろう

Product(製品)

Price(価格)

Place(場所)

Promotion(宣伝)


このどれもが地方では新しい、そしてブルーオーシャンである。

東京で不要になった製品は新しい製品として地方で受け入れられる、

奈良県の貯蓄額は日本で一番で、地方の人の方がお金がある。

販売場所はネットではなく、小さなお店だ。

そして宣伝は0、究極に信頼がおける口コミのみだ。


こんなビジネスやっている人がいるか?ベンチャーはレッドオーシャンで戦っているが、ここに誰が目をむけた?

もちろん上場を目指すIT企業は東京がいいかもしれない、けど僕たちみたいな物づくり企業やスモールビジネスはめちゃくちゃチャンスがある。

地方って面白い。


ビジネスの常識が、通用しない。

いや、

過去の常識が通用する。

攻略本が発売されているゲームみたいだ。


地方って面白い。


うん、

地方って面白い。


あ、12月にも実は販売会をするんだけどこれはまだ内緒。



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