見出し画像

連邦債務問題の外交的側面と打開の可能性(内政問題VS覇権維持)

「米国をデフォルトに陥れ,米国経済を危機に追い込むことは、習近平とウラジミール・プーチンの術中にはまることだ」

Byヒラリー・クリントン(2023年4月24日付 NYT)

以前の連邦債務問題の際は、アメリカの最優先課題はテロへの戦争であり原油の重要性からサウジとの関係も悪くはなかった。
アメリカの外交はダブルスタンダードのため権威主義でも原油という経済安保の利害が叶えば支援するというスタンスであった。

しかし現在アメリカはウクライナ紛争、超大国競争で中露と対立。
ロシアは欧米による厳しい制裁を受けることとなった。
ここで中国はロシアの味方になることにより、陣営に取り込んでいる。また安く原油を大量に輸入している。
まさに漁夫の利で安くロシアを買い込んでいる。

バイデン政権は人権外交から権威主義のサウジを全面的に支援する用意はない。アメリカはシェールオイル生産でサウジの石油覇権を揺るがすこととなった。サウジとしても湾岸諸国としてももはやアメリカの安全保障には頼ることはできないと認識している。
2021年にはアメリカはアフガニスタンからも撤退し、もっぱら中国との覇権争い、ウクライナ支援、台湾防衛に傾注している。
サウジは石油覇権を維持するため2016年ロシアと組んでOPECプラス形成で影響力を維持。石油市場を支配する。
世界はエネルギー不安の時代に入りつつあるが、化石燃料需要はあと20年はなくならない。

アメリカの中東関与希薄化から中国がイスラエル・サウジ・イランと中立の関係を保ち中東でのアメリカの空白を埋めつつある。
長年アメリカの安全保障に依存してきたサウジは軍事的にもヨーロッパから武器供与の合意を取り付けている。
最近は中国の仲介で長年のライバルのイランと国交正常化を果たした。
ここで中国は米国の作った空白をただで獲得した。
今後アメリカに代わり世界の仲介役としてのプレゼンスを高めつつある。
ドル覇権に対抗した人民元網構築も対米覇権争いの一環である。

サウジも豊富な石油資源を利用して脱石油経済を目指しており、将来原油需要が減っても中東のみならず北アフリカ等でも影響力を高めていくであろう。
実際2020年にはG20 のホスト国を務めている。
経済力を通して外交上の影響力も高めつつある。

アメリカは中露に対抗してヨーロッパと組みウクライナ防衛に必死である。
それに加え、アメリカの関心がウクライナに注がれていることをいいことに中国は台湾軍事制圧の選択肢も排除しない。
蔡英文総統になってから中国は莫大な経済力を背景に主に米国の裏庭のカリブ海諸国の台湾と国交を持つ国を取り込み、台湾との国交関係を断絶させて切り崩しにかかっている。
アメリカは台湾防衛のためQUADやAUKUSなどの安全保障協定で中国を牽制し、経済的にも世界第2の経済大国の封じ込めのためにハイテク産業を中心に激しい貿易戦争を繰り広げている。
中国はロシア、そしてサウジを皮切りとした中東取り込みにから、今度はロシアが作った空白の中央アジアへの影響圏の奪取に乗り出しG7の日程に合わせて中央アジア5カ国との地域会議を主催する。
もしアメリカが内政問題からデフォルトに陥れば、今まで構築してきた国際政治経済上の覇権を中露に蝕まれることとなる。
アメリカは直ちに目を覚まさなければならない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?