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胸ポケットでタイドアップ

Twitterではただの車オタクとして通している僕は、大学生の頃から細々と演劇を続けてきた。
別にその道で食っていこうなどと乱心したことはないから、賢明にも趣味のレベルにとどめている。そんな僕が所属している劇団はプロのマジシャンが運営するコント主体の『劇団コバヤシライタ』だ。

演劇関係者に限ったことではないが、件の新型コロナとやらは世界中に甚大なダメージを与えた。
不安定なエンタメの世界とは全く真逆な国家公務員という立場に身を置く僕は鼻歌混じりで阿鼻叫喚の社会を眺めていたのだが、ウチの代表はこのままではイカンとアレコレ奔走していたらしい。

未だにコロナに翻弄される2022年現在、三瀬賢太氏は『マジックができる文房具Youtuber』という立ち位置を確固たる(?)ものとすることに成功したようだ。
ロルバーンというちょいとばかしお洒落なメモ帳を愛でる動画なんかで、果たして収益化ができるのか?
Youtubeを本格始動させた頃の僕は半信半疑だったが、今やロルバーン公式から目をつけられるまでになったのだから驚いた。

in my room

さてウチの劇団がYoutubeで中心に据えた文房具についてだが、僕は全くと言っていいほど興味がない。
字を積極的に書く職業でないし、自己表現は全てキーボードやタッチパネルで行う世代だ。
そして何より字が汚い。冗談抜きで字が汚い。両親を悲しませるレベルで字が汚い。
自覚はあるが、練習するほどのモチベもない。
こんなふうに文章を書くのは好きだけど、字を書くのは大っ嫌いなのだ。

そんな僕が生まれて初めてボールペンに一目惚れした。
それはとある意識高げなウェブマガジンで紹介された「PENON」というメーカーだった。

胸元で差がつくおしゃれなペンは「ペン芯を100%リサイクル可能」なエシカルプロダクトでした

ネクタイペンと名付けられたその素敵なペンのクリップ部分はなんとも愛らしい小人用のネクタイがあしらわれている。
未だに僕は公私共にネクタイを巻くことに抵抗がある。
別にネクタイ=社会の首輪なんてITベンチャー臭い持論があるわけではなく、単に息苦しいからだ。

しかしこのペンならどうだろう。
シャツの第一ボタンを開けたまま、まるできちんとタイドアップしたような気分に浸れるのではないか?
流石にそれは言い過ぎだけど、魅力的なのは確かだ。
値段はたったの1300円。試しに1本買ってみよう。

ネクタイペンの他にも「フラッグペン」「メガネペン」
といったチャーミングな商品が揃っている

2日後、ネクタイペンはダンボール紙を何重にも重ねたような質素なケースに包まれてやってきた。
ペンそのものも至ってシンプルな木製だ。
PENONの作る製品はサステナビリティを第一に考えられているらしいが、誠に失礼ながら僕にはその分野に特に関心はない
僕にとってサステナビリティとはプラスチックゴミや果物の皮でできた時計ベルトにウン万円も払うことを言う。

過度な装飾とは無縁のPENONのペン
そこが気に入った

とはいえシンプルなモノはその作られた意図とは関係なしに大好きだ。
このペンの主役はクリップ部分。それ以外は無駄もなく、とても軽い。
ジャケットの胸ポケットに差すならばできる限り軽くなくては

ネクタイはレーヨンで刺繍され、まるで本物のよう

さて肝心のペンとしての機能だけれど、安心してほしい。ちゃんとインクも出るし、文字も書ける。

生粋の文房具趣味の方が今の感想を聞いたら、思わず僕の首をねじ切りたくなっただろう。
コレばかりは仕方がない。
僕は文具に対する造詣は浅いし、何よりエッセイを書き上げるためにこのペンを買ったわけじゃあない。

堅苦しい役所の窓口で、さりげなくお洒落を楽しむためなのだから

トラッドなレジメンタル柄だから紺ブレザーと好相性

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