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なぜ加盟店は本部不信に陥るのか?②~6つの要因~

前回は、本部が加盟店に対し「品揃え」「営業時間」「オペレーション」を求める中で、意思とのギャップが増幅され、本部との関係がこじれていく事について述べました。本部が求めていることはフランチャイズビジネスとして間違ってはいないはずですが、何故そうなってしまうのでしょうか?
今回は「意思とのギャップ」が生じる要因について、現場で感じる要因を具体的に6つ挙げたいと思います。

①オーナーの元々別の商売経験

オーナーさんのコンビニ加盟前の職歴は本当に様々です。同じ小売業経験のあるオーナー、全くの異業種から参入したオーナー、個人経営からFCに切り替えたオーナー、脱サラしたオーナー等々。コンビニシステムの黎明期は地元のタバコ屋や酒屋がコンビニに鞍替えしていった例も多いでしょうし、一時期はコンビニ本部の社員が独立してオーナーとなり店舗を持つという動きも多くありました。
前職で様々な経験を積んでいることは良い事ですし尊重すべきだと思います。しかし、過去の経験則が必ずしもプラスに作用しない事もあります。特に、過去小売業を経験しているオーナー、強いこだわりや商売観を持っているオーナーの場合その傾向が強いです。本部の目指している方向性と合致すれば物凄く強い力を発揮するのですが、そうでない場合、フランチャイズシステムに対し自由度が低いことへの不満や自分の考えとのズレを感じやすい傾向にあります。

②本部社員のコミュニケーション問題

本部との関係がこじれている加盟店オーナーからほぼ確実に、「契約時の担当者の対応が不十分だった」「オープン時に担当した本部社員が何も教えてくれなかった」「数年前に担当した○○は高圧的で嫌な指導だった」といった、フランチャイズの「仕組み」と言うより「人」に対しての恨みつらみが非常に多く出てきます。本部社員が一方的に悪いわけではないケースも多々ありますが、当然オーナーも感情を持った人間ですので、本部社員のコミュニケーションの取り方をきっかけに感情的に本部への不満が増幅されていくケースは多いように感じます。その背景には様々な要因がありますが(別の機会に具体的に述べたいと考えています)「売上至上主義」「過度なチェーン間の競争」が最もであると考えます。
今でこそ公取委からの指導も強まっているため、本部社員による無断発注や高圧的な指導が罰せられる時代になってきましたが、以前は、売上達成のための過剰な仕入指導、競合に負けないための過度な出店争いが日常的にありました。トップからの指示が強まれば、現場社員の加盟店への指導は必然的に圧が強まり、結果的に本部不信へと繋がっていくきっかけになります。

③伸びない売り上げ利益

そもそもですが、売上が伸びて利益が出なければ加盟店の不満は募ります。
売上が伸びない要因は、社会環境、競合環境、本部施策、加盟店の店舗レベル、様々あるのですが、加盟店としてはまず「頑張っているのに売上が伸びないのは本部のやり方に問題があるのではないか?」と感情的になりがちです。
確かにコンビニ業界が成長産業で右肩上がりだった時代と比較し「頑張って取り組んだ分だけ売上・利益が伸びた」という大なり小なり成功体験の積み重ねが減ってきています。昔なら100個以上売れたような商品でも今は20~30個売れれば良い方という事も多いですし、今はコロナ禍という状況もあり、「目に見えて売れたなぁ」と加盟店が実感できる機会が減っているように感じます。また、今後は売り上げが伸びていかなければ、最低賃金の改定やエネルギー高騰による電気代の上昇で経費だけが増え利益は減る一方です。根本的に売上・利益が出なければ加盟店のチェーン満足度も高まりません。大いに改善が必要と考えます。

④ロイヤリティへの不満

加盟店は自分たちの利益が出なければ本部との契約内容に不都合があるのではないか?と目を向けます。やり玉に挙げられがちなのが本部へのロイヤリティです。
フランチャイズの仕組みとして粗利益を一定の割合で本部と加盟店で分配するのですが、この本部の取り分が多すぎるのでは?という意見は非常に多く聞かれます。(取り分の妥当性については別の機会で述べたいと思いますが)本部も家賃や店舗建設時に多額の投資をしているため丸々利益になっている訳ではないケースも多々あると思われますが、加盟店は知る由もありません。自分たちの利益と本部の取り分を比較すると不満を抱く加盟店は非常に多いです。

⑤思ったよりもきつい24時間営業

加盟店が感じる経営していてきつかった事として最も挙げられるのが、24時間営業の維持です。契約時に24時間営業について説明はあると思いますが、実際経験してみて初めて分かる大変さだと思います。
24時間営業を維持するには当然人員確保が必要ですが、個人経営とは異なり自分の意思で営業日や営業時間をコントロールするのが困難なため、(本部と雇用関係は無いですが)本部に働かされていると加盟店が感じやすい、という事が一番の要因ではないかと考えます。体調不良や個人的な用事のため特定の日を臨時休業にするという事は契約上認められません。そんな中で発注や売り場づくり、従業員の管理、個人経営者としての様々な手続きも行わなければならないため、この仕事に適性があるか精神的、肉体的にタフでなければ気力、判断力も低下し、本部からの提案も素直に受け入れられなくなっていきます。

⑥労働時間が長く判断力が低下

24時間営業の維持、人員不足対応、利益捻出のため人件費カット、余程利益が出て安定している店舗でない限り、オーナー・店長がシフトに入る時間は年々長くなっていると思われます。経産省のアンケートでは、オーナーの60%は休みが週1回程度しか取れていないというデータもありました。
労働基準法では残業は月45時間まで、そして80時間以上の残業が続くことで健康障害のリスクが高まると言われていますが、オーナー・店長は独立した経営者であるため、労働基準法で定めた残業上限は適用されません。
労働時間が長くなれば睡眠時間も短くなり、脳や体が休まらず正常な判断が次第に難しくなっていく。自身の経営についてゆっくり考える時間がある加盟店は本当に少ないです。

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