コンビニがドラッグストアに勝てない理由
ドラッグストアの店舗数が右肩上がりで増加しております。
特に地方では従来の大型のロードサイド店舗よりも、中型店舗を商圏内に複数出店するコンビニのようなドミナント出店が目立ちます。中にはコンビニの目の前や隣に出店する等、明らかなコンビニ潰し狙いの出店も見られます。
商圏内にドラッグストアがオープンするとコンビニは売り上げに大きく影響を受けます。品ぞろえ豊富、同じ商品でもドラッグストアの方が安い、営業時間も長くなっている、amazonの荷物が受け取れる、収納代行の支払いも出来る等々、当然客はそちらに流れていきます。しかし、単にサービスや商品施策の面だけではなく、組織体制の面で差があることが勝てない理由の一つとしてあると考えております。
「コンビニ=フランチャイズ、ドラッグストア=直営」による「意思の疎通、売り場実現スピードの差」です。
直営店は意思の疎通、売り場実現のスピードが速い
ドラッグストアに限らずですが、直営店舗で働いているのは社員、つまり本部から見たら間接的には部下です(アルバイトさんも働いていますが)。社員のスキルや意思に個人差があれど、社員は本部の方針に沿って働くのが基本であるため、フランチャイズよりも圧倒的に本部の意思を汲み取り行動に繋げる=売り場実現に繋がるスピードが早いという事になります。時には店長から「明日までに売り場を直せ」や「本部の偉い人が来るから売り場整えろ」といった指示が現場社員に出ることもあります。働いている側としてはきついかもしれませんが、売り場実現のスピードが速く、結果売り上げにつながっているののも事実です。
フランチャイズは意思の疎通、売り場実現のスピードが遅い
一方、フランチャイズ店舗は直営店舗と比較し売り場実現のスピードは遅いです。フランチャイズ店舗のオーナーは本部社員ではなく、本部から見て部下でもないため指示を出し動いてもらうという事が容易では無いからです。
FC店舗のオーナーは独立した経営者であるため、売り上げに繋がる極めて妥当性のある内容だとしても、本部から強制的な指示は基本的には出来ません。従って、まずは「提案」として本部社員がオーナーへ伝えるところからスタートします。この時点で直営店舗と比較し1つの工程を多く挟んでいるため、売り場実現のスピードはワンテンポ遅れていることになります。
続いて、本部と理念が共有出来ており理解を示しているオーナーであれば問題ないのですが、全てのオーナーが本部と相互理解し良い関係性であるとは限りません。本部社員の提案に対し当然反発したり受け入れる意思のないオーナーもいます。そうなると本部社員はやるべきであると理解してもらうため、様々な角度から提案というよりも説得に近い形でオーナーと向き合います。この時点でもうワンテンポ売り場実現が遅れているという事になります。
更に、オーナーへ説得をしたものの結果理解してもらえずという店舗も少なくはありません。そもそも売り場実現にすら至っておりません。本部としても強制感が出たり、優先的地位の濫用に該当する可能性があるため、これ以上は進められない状態です。直営店舗と比較し売り場実現度に大きな差が出てしまっているのは明らかです。本部がチェーン全体を一つに束ねて進めるという事は決して容易ではありません。オーナーの数だけ意思があるからです。
では、極論、全ての店舗を直営化すれば良いのではないか?と言うとそうではありません。現実的に全店舗直営化は困難であることと、そもそもフランチャイズ本部は直営店舗を増やすのが目的ではなく、フランチャイズパッケージに加盟してもらう店舗を増やす(フランチャイズパッケージを売る)のが本来のビジネスだからです。直営店舗を増やすのであればもはやフランチャイズビジネスでは無くなってしまいます。
コンビニがドラッグストアに勝てない理由を一例として意思疎通と売り場実現度の差を述べましたが、私が考える本部と加盟店やるべきことは下記の通りです。あらゆるコンビニ問題において本質的には変わりません。
(本部側)
・より効果的な施策を打ち出し続ける
・加盟店に理解してもらえるよう提案に力を入れる
⇒今後も加盟したいと思える魅力的なパッケージづくりを実現しないと業界の将来は無いと覚悟する
(加盟店側)
・本部の取り組みを理解しようとする
・過去の商売の経験をベースに一方的に本部を否定しない
・フランチャイズビジネスの本質を理解する
・フランチャイズは利益100%保証の万能装置でないと理解する