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#109 フェズの革なめし工場見学🇲🇦
9/2−3 タンネリ見学/Aさんとタジン鍋シェア
昨日の夜、日本人のAさん(28歳)とYさん(26歳)が偶然同じ宿に泊まっていて、色々話すうちに仲良くなった。円安・物価高のこのご時世に、別々の日本人旅行者が一つの宿に偶然集まるというのは珍しい。岐阜県出身のAさんも東京で5年間働いた会社を退職して世界一周の旅へ出た人で、自分と同じ境遇、しかも1995年生まれと歳まで同じだった。彼も将来の仕事やこれからの生き方を模索しており、歳をとってから後悔しないために旅に出たようだ。
Yさんは大学院生で、現在フランスに滞在しているという。もの知りでフランス語も多少出来るようだ。もう就活も終わって、会社の内定をもらえたらしい。就職面接では自分が思ってもいないようなことを言って内定をもらったとかで、来年社会人としてやっていけるか不安だと言うが、社会人になった殆ど全ての人が自分の経験を上手に美化させて話しているので、負い目を感じることなど全く必要ないよ、と社会の先輩としてアドバイスしておいた。
旅については、一番良いのは「学生のうちに旅に出ることである」と三人の意見がまとまる。自分は睡魔が襲ってきたので先に寝たが、彼らは夜中1時頃まで話していて、ホステルのスタッフに「もう寝ろ」と言われるまで話していたらしい。
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翌日、Yさんはメクネスの町へ旅立って行った。彼を見送ってから、午前中はAさんとフェズの町を一緒に巡ることにした。
商店街を歩いていると、道端に座っていた地元のおじさんが急に、「そっちの道は行けないよ!」と言ってきた。しかし、道の先にも人はいるしどう考えても進める。「いや、絶対行けるでしょ?」と確認すると、「これを見ろ」といって頭上の標識を指差したが、それは車両通行禁止の標識だった。「いや、車だけでしょうよ(笑)」
これで我々を騙せると思っているおじさんも滑稽だったし、しかも誰が得する嘘だったのだろうか(笑)
インドで「通れないよ詐欺」に遭って最後お金を取られる日本人が多いことを聞いたことがあるが、今回の嘘はしょうもなかった。その他、マラケシュと同じく、別に聞いてもいないのに道を教えようとしてくる地元民がフェズには多い。しかも何故だか間違った道を教えようとするのがよろしくない。
結局、自分が信じた道が正解なのだ。
フェズはタンネリという革なめし工場の見学が有名なのだが、自分はモロッコ1日目のマラケシュの工場で140ディルハム(2千円ほど)ぼったくられているので注意深くなってしまっている。それ故にAさんの存在はありがたかった。こういう時二人でいればかなり安心感が増すことを実感した。
タンネリは高い塀に囲まれていて、どこかの店に入らないと見れないのだが、マラケシュ同様入ったら高い金額を請求される可能性もある。店前の道を歩いていると、「タンネリを見ないか?」とお誘いがかかるのだが、その中で「見学は5ディルハム(72円)で良いよ」という声が掛かったので、二人顔を見合わせてこの店に決めた。結果、タンネリの工場が真正面に見える良い店に入ることが出来た。タンネリは強烈な臭いが漂うので、ミントの葉をもらう。これがガスマスク代わりだ。
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上がって工場を見下ろす。この工場は13世紀から現在に至るまで使われているのだと、店の人が解説してくれた。屈強な男たちがタンネリで仕事をしている。おそろしい力仕事であり、この仕事は父から子へと受け継がれてきたそうで、その説明の通り、向こうの屋根の上で父親が子どもに教えながら皮を黄色に染める作業していた。
染料はマラケシュの工場と同じで、黄色はサフラン、青はインディゴ、緑はミント葉、赤は何かの花(ど忘れした)を使うようだ。そして鳩のフンを使って皮を柔らかくする。
生まれた時から仕事が決められているのを気の毒に思うかもしれないが、大前提、モロッコには仕事が少ない。そのことを考えると、ここでは仕事があるだけまだマシなのかもしれない。必死に働いているタンネリの労働者を見ながら、そんなことを思った。
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店で売っていた革小物土産を見てから、見学料5ディルハムを払って外に出ると、「君たち、ぜひアルガンオイルを作っている現場も見て行きなよ!同じ経営の店だからさ」とお誘いがあったので、10m先の店に入った。そこでは女性が石を使ってアルガンの実の中身を一つずつ丁寧に取り出していた。これを石挽きの道具で擦り潰すらしい。気の遠くなる作業を見ていて「これは機械化できないのですか?」と問うと、できないとの返答が返ってきた。これは大変な手作業だと思った。
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その後も旧市街を見学してモスクやら大学やら広場やらを観光した。フェズの町は迷路のようになっているが、Aさんの方向感覚が素晴らしいので、全く迷うことはなかった。
早めの昼食を二人でとることにした。タジン鍋とクスクスを食べた。タジン鍋は安定の美味しさでかなり満足した。店員が自分たちを日本人と認識すると、有名な某旅行本を持ってきて自分に見せてきた。その本にはここの店と店員の顔が載っていた。なるほど、そりゃ美味しいわけだ。おそらく、この店に来た日本人全員にこれを見せているに違いない。
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午後、ホステルに戻ると雨が降ってきた。午前中に観光しておいて良かった。そのままベッドで仮眠するつもりが、気づいたら19時になっていたので、Aさんと夕食に出かけた。ブルーゲート横のレストランに入り、ここでもタジン鍋と伝統料理を注文した。
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料理待っている間、将来の展望を話したり、YouTubeから流れてくる日本食の動画は罪だよな、という話になったりで楽しかった。
帰国した折には一緒に丸亀製麺を腹一杯になるまでお代わりしようぜと約束した。彼は翌日、砂漠のメルズガへと旅立っていった。
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