#126 チクラヨ一泊経由し、アタワルパ終焉の地カハマルカへ🇵🇪
10/8、9チクラヨで一泊/チクラヨ市街散策
10/10〜12 カハマルカ行き夜行バス/アタワルパ捕虜になる/メルカド
チクラヨ行きのチケットを前日予約して良かったと思ったのは満席のバスを見た時だった。バスは12時半に出発し、すぐに昼食休憩があった。「ポリョ?(鶏肉はあるか)」と聞いたが、店員のおばさんは「¿Qué?(何?)」しか答えない。もう一度聞いたら「あ?」と返ってきたのでちょっとイラッとしてしまったが、スペイン語の発音が悪いのは自分なのでしょうがない。他の客が食べている肉のプレートを指し示したら理解してくれた。肉が固くて食べにくかったが腹は膨れた。
バスは砂漠地帯をひたすら南へと下っていき、チクラヨのバスターミナルに到着したのは陽が落ちた18時半だった。自分にとってこの町はカハマルカへの経由地に過ぎないので一泊だけする。久しぶりの一人部屋に安心した後、夕食に出かけた。チクラヨは思ったよりも大きな町のようで、夜でも街角で出店が出ていて賑やかだ。鶏ローストの看板を発見し、久しぶりに食べたくなったので暖簾を潜った。かなりのボリュームでこれで値段は20ソル(777円)。肉が柔らかくてとても満足したが、贅沢をしてしまった。旅資金の減りが予想よりかなり早いのでこれからは自重しなければならない。この日はホテルに早く戻った。
昨日チクラヨに着いた時すぐにカハマルカ行きのバス時刻を確認しておくのを忘れてしまった。11時過ぎに宿を一旦チェックアウトし、バックパックを背負ってチケットを買いに行く。途中1ソルのソフトクリーム🍦を食べながら。バスターミナルに着いて時刻の確認をすると、カハマルカ行きはまさかの一日一本だけで、しかも夜の10:40発だった。完全に無駄足になってしまったが、夜まで時間を潰さなければならない。チェックアウトしたホテルに戻って拙いスペイン語で事情を説明し、荷物を置かせてもらった。
さて、夜まで時間があるのでチクラヨの町を散策することにした。テンションが上がる場所はどこの町でもおばちゃんたちの威勢の良い掛け声があるメルカドだ。道の両側で思い思いに店を構えて行き交う人に声を掛けている。自分も目に留まった店に入り、豆ペーストが付いたカブリート定食を注文した。11ソル(428円)。
教会のある中央広場付近のカフェに入って時間を潰す。オレオシェイクは16ソル(622円)という高価な注文だったが、店の雰囲気は良かった。その後も道端で売っていたレモンケーキを食べたりしていると、縁側に座っていたおじいちゃんと目が合い、「日本から来ました」というと、彼は奥さんらしき人に「日本から来たんだって!」と伝えた。全然聞き取れなかったが、どうやら奥さんは日本が好きなようだ。お二人と握手をして別れた。
暗くなってからホテルのロビーで2、3時間過ごして再度バスターミナルに向かった。チクラヨからカハマルカまでの所要は7時間ほど。40ソル(1556円)で、座席はラグジュアリー感がありすごく心地よかった。その為気づいた時にはいつの間にかカハマルカのバス停に到着していた。カハマルカに住んでいるという若い女の子が、次の目的地「ワラス」までの行き方をスマホ翻訳を使って説明してくれた。優しい。
約3km先のホステルに向かって歩き出す。途中、工事現場の作業員たちをターゲットにしたDesayuno(朝飯)をやってるのを発見し、これから仕事に向かう工事の人たちと一緒に5ソル(194円)という破格の朝食をいただいた。朝からボリュームがあり最高だ。
ホステルに着いたのは7時半だったが、オーナーのお爺さんはとても優しい顔で出迎えてくれて、「チェックインまでソファーで寝てて良いよ」と言ってくれ親切に毛布も掛けてくれた。そして10時にはベッドに案内してくれ、仮眠を取ることができた。
14時半、カハマルカの中央広場に向かう。カハマルカの地は、最後のインカ皇帝アタワルパがスペイン人征服者ピサロに捕まり捕虜になった場所で有名であり、この広場がまさしく捕えられた場所であるという説明が書いてあったが、スペイン語だったので大体の意味しか掴めなかった。数十万人のインカ軍が200人足らずのスペイン人に負けるなど信じられない話だが、当時のインカ帝国に馬は存在していなかったため、びびってしまったようだ。その後アタワルパは自身の命乞いに金銀財宝を各地から取り寄せて助命嘆願したが、結局多数決で死刑が確定してしまったらしい。最初は火炙りに処される予定だったが、キリスト教に改宗することによって首絞めでの処刑に減刑されたのだとか。インカ文明では魂が肉体に戻ってくると信じられていた為、死ぬことは同じでも、遺体があるのと無いのとでは雲泥の差があるらしい。
中央広場の北側は野菜や果物から服製品、肉、魚、チュロス、パンなどを売る巨大市場だった。床屋やガラクタを売る店もある。この一帯がこの都市の心臓部であるのは間違いがない。小さな商売も数となれば巨大な市場を形成する。自分もカハマルカ経済に助太刀をするが如く、イチゴ250gを2ソル、ミニどら焼き12個入り3ソル、唐揚げ3ソルと貢献していく。夕食のロモ・サルタードはペルーの焼肉のタレ料理といって感じで美味かった。
翌日はカハマルカからチンボテ行きのバスを40ソルで予約したのだが、余計に疲れていたのであまり行動はしなかった。ここは標高2750mである。少し動いただけで息切れするのは体力の衰えからくるものだけではあるまい。バス停横の食堂で昼食にしてから町に戻り、ぶどうを1kg3ソル(116円)、バナナ2本を1ソル(39円)で食べていた。
最終日、SIMカードを購入した理由は、これからの日程が定まらず、宿を予約できなかったためである。ネパール以降、SIMカードはここまで使わずにやってきたが、急遽必要になったということで現地の通信会社「Claro 」の入り口を潜った。「SIMカードを買いたいんだけど」
しかし、当然返ってくるスペイン語はわからない。すると女店員さんは慣れた手つきでスマホ翻訳でやり取りを始める。仕事の動きに無駄が見られず、聡明な女性であることがその仕事ぶりから窺える。パスポートを渡して、出てきた契約書にサインと指紋を押せと迫られる。
「内容が分からない書面にはサインするな」
親父が言っていた言葉を想起させたが、この場合はどうしようもない。高橋是清にならないことを願うばかりである。
店員さんは速攻で完了させてくれた。気になる値段は7日間1Gで12ソル(466円)と手頃な金額だったことに胸を撫で下ろした。「グラシアス」と親指を天に向けてお姉さんにお礼を言った。
夜のバスまでホステルにいると、北イタリアから旅行に来ていたシモネという若者と話す機会を得た。久しぶりの英語だ。これほど誰かと話せるということが、精神面にポジティブな影響をもたらすことに驚いた。沢木耕太郎もギリシャのスパルタが出てくる章で書いていたが、「彼もまた、人だけは必要だったのではないか」という深夜特急の一文が思い出された。お互いの旅の無事を祈りながら、自分はホステルを後にした。