#83 ワディ・ラム砂漠!🇯🇴
7/13〜14 砂漠をランドクルーザーで疾走/満点の星空/ベドウィン料理
最初は正直、ワディ・ラムを訪れるかどうか迷っていた。砂漠の魅力が分からなかったからだ。そんな時、アカバで知り合った19歳カナダ人のジェミニがインスタグラムにワディラムのストーリーをあげていた。そこには砂漠に座り、茶を淹れるベドウィン男性の姿があった。彼の風貌と雰囲気がかっこよくて、行ってみることにした。
ワディ・ラムへはアカバからバスが出ている。運賃は5JD(¥978)である。10時に自動チェックアウトをしてバス停に向かったのだが、「バスが出発するのは午後1時だよ」と言われたので一旦宿に戻った。この昼間の暑さで外にいるのは危険だ。
12時半にバスに乗り込むと、台湾から来た女の子が話しかけてきた。彼女もワディ・ラムのツアーに申し込んだそうだ。ツアーの方が、現地で申し込みをするより安いらしい。「45JDで申し込めたよ」という。これはかなり安いと思う。実は昨日の宿にもツアーの貼り紙はされていて、1人なら100JD(約2万円)、2人なら80JD、3人なら70JDというように値段が下がるのだが、自分はひとりだし、どうせ行くのなら2泊はしたいと思っていたので、ツアーには申し込まなかった。
一時間半ほどでワディ・ラムビレッジに着いた。入場料5JDが必要だと聞いていたが、なぜか払わずに入れた。今日予約したのは「Bedouin Future Camp」という宿で、事前に知らされていた場所まで歩いていくと、オーナーの知り合いという方の家で、クーラーの効いた応接室に通された。オーナーはこれから来るらしい。待っている間、甘いお茶を一杯くれた。
20分ほどでオーナーが現れ、隣の家へと移った。彼の名前はサラメフ。どうやらこちらの家がサラメフの家らしい。「今日のお客さんはあなた一人だけです」と言われて驚いた。どうやら今の時期は暑さのせいでオフシーズンのようだ。早速、ツアーのパッケージを紹介してくれた。一日フルのツアーは120JD、4時間のツアーは70JD、他にも2時間のツアーなんかもあった。
気温41℃の暑い中、一日中砂漠にいるのはキツい。そしてフルデイツアーの場合、昼休憩が3時間ほどあるとの情報を掴んでいた。かといって2時間だけのツアーというのもどうかと思ったので、吟味した結果、4時間ツアーに申し込んだ。後から考えても、この決定は最善だったと思う。これに夕食2回分の20JDをつけて計90JD(¥17617)だった。少し高いかなとも思ったが、これで手を打った。
90JD全部は現金で持ち合わせていなかったので、50JDはヨルダンディナールで、あとの40JDはドルで払う。(40JD→57$)
今日はホテルで休憩し、ツアーは明日9時からだ。早速トヨタのランドローバーでホテルに向かう。思えば自分は鳥取砂丘にも行ったことがないので、これが人生初の砂漠になった。赤銅色の砂の上をゆっくり進んでいく。テントがあるのはワディ・ラムの最南端で、夕陽がよく見える場所らしい。10分ほどしてキャンプに着いた。
テント内にはコンセントや冷房はないが、予想より綺麗にされていた。数メートルのところに共用シャワートイレがある。今日は自分一人しかいないので貸し切りだ。Wi-Fiはないと書いてあったが、今日の客は自分一人だけだったので専用の回線を繋げてくれてスマホを使うことができた。
荷物を置いてからさっそく砂漠を歩いてみる。
周りには誰もいない。ただ風だけが砂漠の上を滑りながら行くだけである。一人だけなのを良いことに、自分は歌い出す。最高のステージが用意されているのに歌わないのはもったいないだろう。曲はもちろん「若者たち」だ。
「君のゆく道は果てしなく遠い だのになぜ 歯を食いしばり 君はゆくのか そんなにしてまで」
今の自分に重ねてみる。なぜ旅をするのだろう?
日の入りが近づいてきた。テントの裏手にある岩場を登り、アカバ方面に沈みゆく夕陽をじっと見つめながら「また明日」と見送った。
この旅で一つ思うことがある。
旅人の究極の友だち、それは太陽ではないだろうか。距離感近いと暑すぎて、嫌いになることもあるけれど、インドの超満員電車から見た日の出や、ネパールのサランゴッドで拝んだ朝日、トルコ・カッパドキア熱気球からの早朝の光など、太陽が姿を見せてくれると、どこか安心する自分がいるのだ。
すでに西南西の方角に一番星が出ている。金星だろうか。星に詳しくないので分からない。20時半、夕食のチキンカブサを食べてから外に出てみた。
その瞬間、自分は理解した。「砂漠における最高の時間帯は夜である」と。満点の星空。星々が瞬く姿を実際に見たのはこれが初めてかもしれない。スマホでどうにか写真に収められないだろうか。ナイトモードで最大10秒間シャッターを開けて撮影したのがこれである。
2日目はいよいよワディラム砂漠を観光する。朝食を食べた後、9時にサラメフのランドクルーザーで出発した。
まず訪れたのはシャバル・カタール。「水の岩山」と訳せるようで、もともとベドウィンが使っていたという水場があったが、現在はもはや使われておらず、手入れがされていないので飲めないらしい。しかし自分は舐めてみた。すると、豊富なミネラル成分を舌で感じ取れた。サラメフは木登りが上手で、木に成った実を渡してくれた。食べてみると渋さの奥に甘さを感じる。
次はカザリ・キャニオン。昔の人類が描いた壁画が見れる。とは言っても、それほど大きなものではなく、子どもが落書きした程度のものだった。授業参観のときの親の気分になったような可愛いらしく微笑ましい絵だった。
ところでこのワディラムは、映画「アラビアのロレンス」のロケ地として有名だ。自分は恥ずかしながらそれまでこの映画を観たことがなかったので、ワディラムに訪れる前日にYouTubeでアップされているもので予習してきた。サラメフはロケが行われた場所にも連れてきてくれた。
このツアーのハイライトは砂漠丘をダッシュで駆け降りる場面だ。登るのは大変だが、太陽に熱せられた灼熱の砂漠丘を裸足で駆け降りるのは気持ちが良く、2回もやってしまった。サラメフがその様子も動画で撮ってくれた。
その後、ローレンスハウス、マッシュルームロックを見学し、キャニオン散策をして、最後に岩のブリッジに登ってツアーは終了した。かなり疲労が溜まっていた。
その夜、首都アンマンに在住の日本人の方がこのキャンプを訪れていた。星を見に来たらしい。ここのキャンプには過去に数回来ているそうで、オーナーとも知り合いだ。星の撮影用に大きな望遠カメラを持参していた。現在ではコンピュータのアプリで星の観察をコントロールするそうで、一つの星を基準にして、ずれたら自動で調整できるらしい。後にそのPCを拝見させていただいたがすごい技術である。
彼はヨルダンにはもう四年近く住んでいるとか。アンマンには三百人ほどの日本人が在住しているそうで、カタールW杯の時なんかはスポーツバーを借り切って盛り上がったそうだ。我々二人は夕食までの間、甘いお茶を何倍も飲みながら話をした。
今日の夕飯は豪華で、鶏肉や人参、じゃがいも、
ズッキーニを土の中で蒸し焼きにしたベドウィン料理を作ってくれた。味も最高だった。
そしてお楽しみの時間が来た。昨日と比べて少し雲は出ていたが、今日も最高の星空だった。すると、星座に詳しい彼がやってきて、北極星の位置と北斗七星、織姫彦星、白鳥座、蠍座などの場所を教えてくれ、星を見るのがさらに面白くなった。時々流れ星が流れるので、「良い旅になりますように」と祈った。
翌日は6時にアカバ行きのバスがビレッジから出るというので、5時半には起きなければいけない。サラメフが送ってくれるらしい。朝から本当にありがたい。0時半、日本人の彼に挨拶をしてから眠りについた。