#116 大都市メデジン!【前半】スマホ翻訳で恐喝される🇨🇴
9/15、16 メデジン滞在/ケーブルカーからファベーラ/ボテロ広場/メルカド/植物園
朝8時半、隣駅まで歩いていると、ベネズエラから逃げてきたという中肉中背のお兄さんに出会い握手を交わす。現在ベネズエラの政治・経済状況はとても不安定で、国外に脱出する人が多いと噂で聞いている。この人もおそらくそのうちの一人なのだろう。コロンビア・メデジンについてまだ二日というので自分と同じだ。彼はもちろんスペイン語で話すのだが、スペイン語をかじっただけの自分の語学力ではほとんど聞き取れない。どうやらお金もそれほど持ってなく大変らしい。近くに、丸い揚げ物を売っている店があった。一つ2000ペソ(75円)で中身はモッツアレラチーズが入っていて美味しそうだったので、彼の分も買ってあげると、大変喜んでいた。炒飯みたいなものも売ってたので、これをブランチとした。
トルコのカッパドキアで出会ったMさんからもらったメトロカード「CÍVICA」で、サン・アントニオ駅を経由してアセベド駅から出ているケーブルカーに乗ってみた。メトロからは直通なので、追加の運賃は要らない。このケーブルカーが出来たことで、それまで2、3時間かけて登り降りしていた移動の負担が軽減され、中心街へ仕事に行けるようになり、それにより格差が縮まって治安も劇的に良くなった。まさしく市民の救世主である。それでもまだファベーラは危険なので、市民の生活を上から観察できるのは観光客にとってありがたい。
格差が縮まったといっても、ファベーラの家々はトタン屋根と穴あきの安い煉瓦で、それぞれが折り重なるように作られている。おそらく建築基準は満たされていないだろう。狭い環境で住民は懸命に暮らしている。
日本人の自分が危機感も持たずにふらふら歩いて良い場所ではないので、途中下車はせずにメトロに戻った。
その夜、仲良くなったドイツ人のカゴとチリ人のナチョと一緒にリオ公園へと遊びに行った。カゴはドイツ、オランダ、イギリスと住居を変えてきたとかで4か国語を話せる。彼女自身、語学を学ぶのが好きなようで、コロンビアに来た理由もスペイン語を学ぶためだというのでとても感心した。自分とは真逆だ。語学は嫌いである。
エスタディオ駅まで歩き、途中にあったジュース屋で、オレンジジュースと何かの果物ジュースを頼み飲み比べした。ナチョがスペイン語で話しているのを聞いて、国境を越えても母国の言葉が通じることに羨ましさ抱く反面、日本語という固有の言語を有している日本人のアイデンティティを誇らしくも思う。ともかく、言葉が通じるに越したことはないし、余計なトラブルも回避できるので、これからスペイン語習得に力を入れようと思った。
コロンビアはサッカーだけでなく、チアリーディングや体操も充実していて、エスタディオ駅周辺では夕方にたくさんのグループが練習に勤しんでいた。マリファナの香りがガンガンする。
三人でリオ公園まで散歩したあと、ホットドッグを買って夕食にした。ホットドッグはスペイン語で「Perro cariente(熱い犬)」と言い、そのまま直訳される。チーズが載っていて一つ5000ペソ(188円)で格安だった。エンパナーダという揚げ物も美味しかった。
暗い道でも皆でいると安心だ。ホステルに戻るとコロンビアらしくみんなお酒を飲んで盛り上がっていた。ダンス講師のディアナがダンスを教えてくれた。「上半身は動かさずに腰を動かすのよ」と教えてくれた。ハワイアンダンスの要領ね、と思ったが、これがかなり難しくてきつい。明日は完全に筋肉痛だろう。
翌日はボテロ広場に赴き、コロンビアの有名な彫刻家ボテロの作品を見学した。丸みを帯びた像が特徴的で味がある。その後、メデジンいち大きいメルカド(市場)で、トゥルーチャという魚のフライを頼んだ。魚が揚げられている間に出されるスープがバターをたっぷり使っていてとてもコクがある。これだけで満足できる一品だ。カラッと揚げられたトゥルーチャは鮭のようでもあり、鱒のようでもある。高温で揚げられていて、骨まで完食できた。これで価格は22000ペソ(818円)なのはすごい。市場の店だからできることだろう。
満腹になって、健康のために少し歩こうと思い、無料で入れる植物園に向かった。Universidad 駅の大学の横を通っていた時だった。前から歩いてきた二人組の男たちがグータッチを求めてきた。快くノリで拳を出す。すると「¿De dónde ères?(どこから来た?」と言うので「Soy de Japon」と返答すると、スペイン語が返ってくる。分からないので「Yo no hablo español(スペイン語は話せません)」と言ってみたが、「Escribe.(スマホの翻訳機能を使って書いて)」と踏み込んできた。これから植物園に行くんだ、というと、彼らも付いてくる。ベンチを促され、彼らは自分を挟むようにして座った。一人が自分のスマホを使い、打ち出した。翻訳を見ると、
「俺たちはあなたが誰であるのか、何の目的でメデジンにやってきたのかを聞く義務がある」
と書かれていた。こいつらやばそうだ、警戒アラームが上がりだす。
「翻訳がうまくいっておらず、意味が通じません」と打ち返すと、再度自分のスマホで一人が打ち出す。この時すでにこいつらからどう逃げるかを考えていた。渡された翻訳を見ると、長文の中に「ピストルを持ちます。私はあなたのバッグの中身を確認する必要があります」と書いてあった。そして、「Dinero」という。Dineroはお金の意だ。こいつは金を要求している。周りに大勢の通行人がいる中で、自分は今、恐喝に遭っていることを悟った。
自分は潔くペットボトルと痒み止めだけが入っているショルダーバッグを開けて彼らに見せ、「No dinero(お金持ってない)」と答える。
パスポートやカード、そして現金が入っている腹巻きを彼らに気づかれるわけにはいかない。
すると、「tarjeta?(カードか?)」と言われたが、
「タルヘタ?」と意味が通じないフリをした。このまま脅されて現金を引き出すわけにはいかない。そして何度かやり取りしている間に隙を見計らい、起立して歩を進めた。その瞬間、今まで全く話さなかった男の方が、膝でブロックしてきたが、自分は振りきった。振り向いて「何?俺はもう行くよ」と日本語で返す。
すると、彼は指で「座れ」と指図してくるが、その時の空気が怖かった。もう巻き込まれたくないので日本語で適当に返して二人から離れることができた。
周りに人が多かったのが幸いした。逃げられたのは幸運だった。無料の植物園を見学したが、恐喝された後となると、あまり身が入らなかった。
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