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#76 第10カ国目、イスラエル入国!三大宗教が共存する町エルサレムへ🇮🇱
7/1 シャパッド(安息日)に到着、シェルートで旧市街へ。
呆気ない入国許可に拍子抜けしながらも、自分のバックパックをバゲージエリアで拾ってから、テルアビブに無事着いたことを家族に報告する。トルコを除けば、自分自身初めての中東訪問だし、気を引き締めて行かねばらならない。
税関を通過したところにバッテリーチャージのステーションがあったのでスマホを充電していると、隣に大柄の男性が座ってきた。力士のような体型をした男で、彼が座った時に自分の椅子も沈み込んだくらいだ。名前はアデルと言った。クウェートから来たという。
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「今日はイスラエルはシャバット【安息日】だから公共交通機関は動かないね」
(イスラエルではユダヤ教の教えから金曜日没から土曜日没まで働くことは出来ない。例えばエレベーターのボタンを押す行為も作業と見なされるのでNG)
と言うと、近くにいたイスラエル人が、
「イェス。これがイスラエルだ。ウェルカムトゥー・イスラエル!」と励ましの言葉をくれた。
タクシーやシェルート(乗合バス)は動いているが、シャパッドのために通常より高額になる。安息日の移動はタクシーよりも安価なシェルートが最善の選択肢だ。もちろん、安息日に入国しないことこそがベストなのだが。アデルはシェルートの存在を知らなかったみたいで、感謝されアイスを奢ってくれた。🍨自分が泊まる宿は料金が16$だというと、「一緒に行きたい」というので行動を共にすることにした。
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横にあったATMでキャッシングをしておいた。空港のATMは手数料がかかってしまうのが痛いが仕方がない。
そうしているとまた一人、スマホを充電しに来た。フィリピン人女性で齢は50歳ほどだろうか。25年エルサレム在住で、仕事のためこれからロンドンに行くという。彼女は5カ国後を操れ、名古屋に5年間住んでいたとかで日本語も話せるという。三人で話が盛り上がってしまい、仮眠する予定だったのをすっかり忘れて気づいたら朝になっていた。
彼女の出国を見送って、我々はシェルート乗り場に向かう。エルサレムまでは70シェケル(¥2730)で行くらしい。10人揃わなければ発車しない。しかし現在5人ほどしかいないので、運転手は「一人85シェケルなら今すぐに出発するぞ」と交渉してきたが、自分は別段急いでいないのでその交渉には乗らなかった。結局運転手が折れ、70シェケルでエルサレムに向かうことになった。30分ほどかかって、エルサレムのダビデ塔近くで降ろしてもらった。100シェケル札を渡すと20シェケル札はすぐにくれたのだが、10シェケルは運転手のポケットになく、運転席からコインを取り出した。「これが10シェケルだよ」と言われて素直に受け取ってしまったのがいけなかった。その場でしっかり確認すればよかったのだが、それは10シェケルではなく、10セントだった。軽い詐欺に遭ってしまった。10シェケルは約390円なのでそれほど大きな額ではなかったが、これもまた良い教訓になったと思いたい。
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朝7時の旧市街はまだ店が開いておらず閑散としていた。アデルと自分は今日泊まるホテルを目指して石畳の道を進むのだが、アデルはすでに息を切らしている。自分が「こっちだよ」と言っているのに「待って待って、マップを確認しよう、確認しよう」と何度も何度も立ち止まろうとして一向に進まないので、「ここに座ってていいよ。俺が確認してくるから」と言うと、ようやく安堵の表情を見せた。
ホステルはすぐに見つかったので、アデルのところまで戻って彼を連れてきた。黄金のドームに繋がるチェーンゲートの真横にあるホステルで、機関小銃を持ったイスラエルの兵士たちが24時間常駐している。
まだ朝の7時半。「入れないのか?」と親切な兵士に聞かれたが、この時間でオーナーを起こすのは流石に気が引けたので、「もう少し待ってるよ」と伝えた。
ホステルのベンチで寝落ちしていた。気配がして起きると、そこにはオーナーがいてアデルがアラビア語で話しかけた。とりあえずバックパックだけ置かせてもらい、自分はすぐに旧市街の観光に出かけた。
アデルは眠気が限界だということで、アーリーチェックインでベッドで寝るという。疲れ切った彼を見て、27歳で世界一周を決意して本当に良かったと思った。昨晩は一睡もしなかったが、自分はまだ動ける体力がある。これが若さというやつなのだろう。人は老いには勝てないのかもしれない。だからこそ、自分の若い時期を何に振り向けるのか、そのタイミング、状況を見極めることこそ、人生においては重要なのかもしれない。そしてこの時ばかりは、納得のいく「若さの使い方」を出来ているようで嬉しかった。
ふと、深夜特急でも紹介された「ペルシャ逸話集」のなかのカーブース・ナーメ『老齢と青春について』という章の一文を思い出した。
「老いたら一つ場所に落ち着くよう心掛けよ。老いて旅するは賢明ではない。特に資力無いものにはそうである。老齢は敵であり、貧困また敵である。そこで二人の敵と旅するは賢くなかろう。」
人生や経験にも「旬」というものがあるということは、昔から言われていたことなのだろう。
さっそく足を運んだ場所は「聖墳墓教会」である。ゴルゴダの丘があったとされる場所に建てられている。
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入り口入ったすぐのところに、イエスが磔の処刑後、最初に横たえられたとされる祭壇があり、そこでは信者たちが額をつけて香油を塗り込み、持参した十字架などを祭壇につけて撫でている。
そこから左手にいくと、イエスを葬った墓の教会がある。しかし当然ながら、イエスはここに眠っていない。なぜって?
彼は死の三日後に復活し、天へと昇っていったのだから。
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二階には十字架がかけられた場所があり、人ひとりが入り込んでゴルゴダの丘に触れるようになっている。この場所からイエスの血潮が下に流れていったという。まだ朝早いにも関わらず、多くの信者たちが岩に触れようと順番待ちをしていた。
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ありがたいことに旧市街のメインスポットではWi-Fiが使えた。高校世界史で一通り学んではいたが、イスラエルのこと&エルサレムのことをもっと知りたいと思った自分は聖墳墓教会の前でYouTubeを開き、「池上彰と増田ゆりあのYouTube学園」で急遽再勉強したのだった。
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14時になった若者といえどもさすがにこれ以上は限界だった。ホステルに戻ってチェックインを終え、シャワーを浴びてからベッドに突っ伏した。アデルはまだ爆睡していた。
再び起きたのは18時だった。辺りはまだまだ明るいので、ヴィア・ドロローサ「悲しみの道」を歩いてみた。イエスがローマ総督ピラトから死刑判決を受けてからゴルゴダの丘まで十字架を担いて歩いた道である。その所々に「ステーション」と呼ばれる、道で起こった逸話を示すモニュメントがある。
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暗くなってきたのでホステルに戻り、共用部分でスマホをいじっていると、UAEから仕事で来ている女性と一緒になった。年齢は50代くらいだろうか。彼女の名前はアリアタといった。IRENA
(The International Renewable Energy Agency)、国際再生可能エネルギー機関のUAE支部に勤めている彼女は、「嘆きの壁」や「黄金のドーム」を見たかったが、今日はシャパッドのために入場できなかったことを嘆いていた。
彼女がテイクアウトで買ってきた魚のフライをシェアして食べようと言ってくれた。おそらく2000円以上する。流石に申し訳ないので断ろうとすると、「遠慮しないで」と言ってくれたので、ありがたく頂いた。
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夕食中、彼女とはかなり親密になった。自分の旅の話から彼女の仕事の話、日本の原発再稼働のこと、日本食、UAEでのスポーツ、クリスチャンとしてエルサレムに来ることの意義などなど、素晴らしい時間を一緒に過ごせた。
食べ終わった時には24時近くになっていた。出会いに感謝し、「おやすみなさい」をお互いに伝えてから別れ、ベッドに入った。