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育休とエンジニアリングに寄せて

こんにちは、@vaaaaanquishです。

7月24日に第二子が生まれ現在育休を取らせてもらっています。

寝かしつけが終わった深夜に少しだけ育児の難しさとエンジニアリングについて考えていることを書いていこうかなと思います。


社会が育児をすすめる

最近、日経新聞の男性育休の代替要員に関する記事を読みました。

2030年に85%の男性育休取得率を目指す日本ですが、育児という家庭環境や健康状態が関わる事象では例外も多く、業務や人間関係との折り合いも難しいという内容になっています。

記事の中では、職場との両立という側面を中心に論じていますが、これらに加えて男女間など属性に関する側面や社会全体、個々人から見た側面など様々な面がある事は自明かと思います。他方、記事の中の話は、社会人であれば属性によらず何らかの形で肌で感じた事のある側面の一つではないかなと思います。

育児と仕事の話はよく話題になりますが、どちらも目的や進め方が全く違う物事であるが故に相互理解が進みにくく、その間に大きな壁があるという認識を私はしています。


ワーク・ライフ・バランスという言葉が流行って久しいですが、経済学的研究においては2000年代を通してワーク・ファミリー・コンフリクトという問題も同じ分野内で研究されています。

仕事役割と家庭役割が相互に干渉する事から発生する役割間葛藤の事を指し、先に挙げたような育児と職場との両立、家庭内の問題のような側面を取り上げられています。ワーク・ファミリー・コンフリクトが発生した環境下では、十分な育児/業務パフォーマンスが出ない事も知られており、育児と社会どちらの観点においても忌避出来ない問題になっています。家庭の問題、社会との接続どちらの側面からも解決しなければ良い育児には近付けません。

様々な側面がある訳ですが、この育児と社会の繋がりにおける壁を、どうにか小さくしていきたいというのが私の立ち位置であり基本的なスタンスです。


私の手の届く範囲という事で、いざIT業界に目を向けてみます。
前回の育休記事でも紹介しました通り、IT業界の育休取得率は高まっているなと感じています。

現在日本では、産後パパ育休などの新しい制度の導入が進んでいますが、そういった制度が出来る前から育休を推奨する制度や文化、そしてその成果を公表している企業が多くあるのがIT業界です。

もちろん、男性育休取得に対するモチベーションも非常に高い業界です。

「育休は育休に限らず」というのも知られつつあり、「育児」という事象に対する理解も他業界に比べ進んでいるなと感じています。

私も今回の第二子出産後には、病院と産後ケアセンターをあわせて3週間ほど妻が入院しておりました。その中で、長女の完全ワンオペや仕事との両立期間を経験しました。私自身はリモートワークで日々の経験もあり何とかなりましたが、そうはいかない環境も多くある事、子供という不確定要素の多い存在と暮らす難しさは再認識させられました。

こういった育児に関わる全ての難しさと向き合い、乗り越えていけるのも、周囲の協力や環境があってこそだと思うわけです。私も協力する側/される側として向き合う事を忘れないようにと日々考えています。


こういった業種における文化形成を推し進められるのもまた、社会であり、会社の役割であるなとも思っています。

たった1つの解決策は無いとも感じていますが、少しでも社会全体で育休が取りやすく、その折り合いも付けやすい形を模索するしか無いなと思い、私も1リーダー、1社員、1父親として、こうして模索の一歩となる記事を書いています。


エンジニアリングに寄せて

こと私に関しては、子供が2人に増え、育児とエンジニアリングについて考える時間も増えました。

IT業界は育児に対する理解度が高い方であるとは書いたものの、ソフトウェアエンジニアが育児と全てにおいて相性が良いかと言うとそうではない側面もあります。


業界特有の例を出すと、IT業界の移り変わりの早さに起因した、育児休業における現場復帰の課題が大きく居座っています。

法律上、育児休業を通して不利益な配置の変更や降格は決して行ってはなりません。一方、変化が著しい分野であるが故に、実質的に休業前後で変化してしまう事象も起こりやすい現実があります。

特にここ数年では、GAFAをきっかけに国内IT企業でも急なレイオフに近い事象が多く見られています。私自身も直近で、事業判断によりチームが解散するという事を2度経験しています。事業がひっくり返る事は少ないかもしれませんが、チーム単位、サービス単位なら「育児休業中に元の業務が無くなっている」という事態があり得るスピード感です。

速度が早い故に新しい育児に関する制度を組み込めている反面、反動となる社会の複雑さが一社員にのしかかるまでの速度も早くなっています。

エンジニアが武器として扱っている技術自体の移り変わりも、目まぐるしく変わっています。ここ3~5年以内に開発されたフレームワークが誰もが知っている大規模なWebサービスを支えている、という事も珍しくありません。また近年では、エンジニアリング以外のソフトスキルやビジネス感度も求められる領域も増えてきており、そういった環境下では「数ヶ月~数年の現場離脱がキャリアに与える影響」について全く考えないというのは至極難しい事でしょう。

復職については、私が司会を務めていますPodcastにて、戸倉さん、あらたまさんを交えて一度話した事があります。

ここでもまた、エンジニアとして産後もやっていけるのかという難しい問題について話しました。この対談では、エンジニアリングという武器が変わる世の中で、エンジニアの復職を"転職"も視野に入れて話しています。

人生の大きな決断の1つである転職が視野に入るほどに、業界の変化のしやすさ、若さ、スピード感が育児の問題に絡んで来ているなと、実際IT業界に身を置き育休を取ってみて実感するところです。


また、エンジニアがリーダーやマネージャーになる事の認知的負荷も問題を複雑にする要因の中で大きな課題だと感じています。

世間一般においても「多くの場合、チームや部署のリーダーになる前後のタイミングで出産、育児が発生する」事による難しさは知られています。そういった中でもエンジニアやデザイナーといった専門職は、マネジメントやビジネスに触れる機会が少ない状況が大多数故に、リーダーになるタイミングで専門外の物事に対する認知負荷が爆発的に増加します。

学生時代から技術を学んで、その技術で就職し、技術でキャリアを切り開いてきたような人が多い中、リーダーになるという事は人生の決断としてもとても大きい事だと、私の経験を含めても思います。

上のツイートは私のものでより広く仕事を捉えたツイートなのですが、同様に、育児という家族と人生における大きな決断による負荷、エンジニアとしてある意味で違った職種になるリーダーになる事の負荷は全くの別物です。
にも関わらず、それらはタイミングを見越したかのように重なります。
このバランスを取れ、というのは簡単なことではありません。


私は、事業と人と技術を繋げる事をミッションの1つとしています。

エムスリーの事業の成功に尽力し、優秀な若手リーダーも多いエンジニア組織をより良い形で続けるにはどうすれば良いか、自身の手の届く範囲で考える毎日です。

育児という難しい事象に最大限寄り添い、共に頑強なエンジニアとしての芯を見つけ、お金の話と向き合いながら、エンジニアの多くが幸せになる形を作ることに貢献していきたいなと、改めて育休を通して考えています。

エンジニアとして、親として生きてきた経験を、一人でも多くの人が共有し共感し協力できる形を目指す事が大切だとも思っています。


育児の楽しさ

ここまで、育児ないし育休の難しさについて書きました。
一方で、子育ては本当に楽しいものです。

前の日に出来ていなかった事が急に出来ていたり、本当に知らない事を知らないうちに挑戦していたり、子供自身が毎日刺激を受けて、大人に毎日刺激を与えてくれる、そういう存在です。本来は嫌な刺激も、可愛い笑顔で吹き飛ばせる不思議な力も持っています。

身近で人が成長していく様は、何より学ばされる事も多く、不安に対する耐性や寛容の幅を拡げてくれます。

何より私自身、娘たちの幸せを考えていく中で、私がやりたい事やエンジニアを幸せについて考え、エンジニアというキャリアを飛び出て今のVPoEという立ち位置に居ます。「インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」というエムスリーのミッションに心から共感し、楽しく働けているのも妻子のおかげだと改めて思います。

もちろん、こういった経験は育児意外でも得られるかもしれません。
育児に対しても、そういった他の経験に対しても寛容で、互いにより歩み寄れる状態を作っていきたい、そのために行動していきたいものです。


おわりに

妻と家族、同僚、医療と全ての祝ってくれた皆様に感謝して、娘の健康とさらなる社会の進化に想いを馳せながら、本記事を締めて行こうと思います。

冒頭「育休を取らせてもらっている」という表現を使いました。この表現は色々と角が立ちそうですが、私の今の心境を適切に表現する言葉として使っています。

育休は権利であり、より多くの方が積極的に取れるような環境を目指して少しでも尽力できればと思っています。加えて、そういった環境を作ってきた先人の皆様と今周囲でサポートしてくれている人の繋がりがあってこそ、私の育児休業は成り立っているなとも思っています。

私自身、エムスリーという会社にVPoEとして転職してまだ間もなく、まだまだ未熟で信頼関係を構築する段階での育休となり、本当に周囲のメンバーに助けられながら、まさに「育休を取らせてもらって」います。親族や家族だけでなく、社会から協力してもらえるというのは本当にありがたい事です。

育児休業の取得割合は年々増加しています。
私としては、子供と触れ合うかけがえのない時間を最優先に考えて欲しいと心から思いますし、育休の取得割合増加のニュースは非常に嬉しく感じています。しかし、結果として今までになかった課題や感情が生まれてくる事も事実あると考えています。

こういった問題から目を背けず、気持ちや言葉を最大限使いながら、より深く考え行動してより良くしていければと思う日々です。

娘が大人になる世界に向けて頑張ります。


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