パリオリンピック観戦旅11~SERvsCAN③
アタナシエビッチの一打に盛上る会場、そして誰よりも嬉しそうな本人。これまでの苦しみが反比例して、その笑顔に溢れていました。もう感無量。これが最後に見られただけで幸せ…。
完全にセルビアの流れになった第5セット終盤、ラストはラリーの末、イボビッチのアタックで幕を閉じました。
2セットダウンからの逆転勝利で、代表最後の試合を終えたポドラスチャニンとアタナシエビッチ。2人を追いかけてきた私にとって最高のストーリーでした。輪になって喜び合う選手たちを見ていたら、本当に嬉しくて胸がいっぱいで、とにかく感謝の気持ちでいっぱいに…。
オリンピックに連れてきてくれてありがとう!
フルセットで素晴らしいパフォーマンスを沢山見せてくれてありがとう!
勝ってくれてありがとう!
そして、
ナショナルチームで活躍し続けてくれてありがとう!!
試合終了後は最前列に人々が押し寄せるので、ちびっこの私は視界が遮られ、ちょっと高台に移動して選手たちの様子を見ていました。最後の試合を終えたポドラスチャニンは感極まった表情を見せるのかと思いきや、いつも通りの冷静な表情で、チームメイトと喜び合っています。どんなときでも変わらないポドラスチャニン…。結果が良くても悪くても、感情を表に出すことが少ないのは、これまで様々な試合を経験してきたからなのでしょうか…FIVB公式戦、世界最多の362試合出場。まさにレジェンド!
こんな記録を持っていながらも、気さくに接してくれる彼は、最後も客席の傍まで寄り、挨拶にきてくれました。
最後だけど、冷静なポドラスチャニンを見ていると最後という気がせず、また次のシーズンもチームにいそうな気がしてしまいます。キャプテンではなかったけれど、チームに及ぼした影響力はホントに大きくて…ヨボビッチを呼び戻すようにコラコビッチに直訴してくれたり、常にチームの状況を把握し、皆を裏から支えていた柱のような選手…そう、まさに大黒柱!そんな柱を失うことが、ポドラスチャニンのいないセルビアを想像することが、ホントに本当にできません。400試合までやれるでしょ!と、冗談で言いそうになるほど。始まる前のセンチメンタルな気持ちと打って変わって、すっかり明るい気持ちになっていました。
と思っていたその時でした。人影の隙間から見えたアタナシエビッチの姿。見ると顔が赤くなっていて…もしや、泣いている…!?
それを見ると、一瞬で涙が襲ってきました。
ポドラスチャニンと対照的に感情を露にするアタナシエビッチ。今、何を思いるのか…想像するともらい泣きしてしまいました。これまで辛かったのかな?苦しかったのかな?それとも…楽しかった…!? 楽しいシーズンもあったはずですが、なぜか私は辛かったことの方が大きく残っていて、その涙の姿を見ると、そればかりが蘇ってくるのです。14番の重圧に耐え、怪我に耐え、痛みに耐え、これまで活躍してくれて本当にありがとう!!
思うことは他にもいっぱいあるはずなのに、まだ頭で整理できず、頭が混乱している感じです。この時はまだもらい泣きというくらいで、思い返して号泣するのはもっと後になってからでした。
21時開始でフルセットにまで及んだため、終了後、会場は追い出しムードで忙しく、場内で選手と触れ合うなら、ファミリーゾーンへ行くようにと言われました。家族ではないけれど…行っていいの!?
退出口を通り過ぎてぐるっと回ったところにあるファミリーゾーン。英語での説明をちゃんと理解できなかったのか、言われた通りに行った場所はどうもカナダのファミリーゾーンのようで…。待てど待てど、カナダの選手しか出てこず、結局セルビア選手に会うことはできず、退散しました。
でも、この上ない最後を迎えられて、ファン冥利に尽きます。
狙っていたわけではなく、昨年冬、たまたま取れた五輪のチケットがこの予選第3戦目で、スケジュール的にもお休みをもらえる期間が限られ、ここしか確実に来ることができなかったのです。
きっとバレーの神様がそのように仕向けてくださったのだな…と感謝。
12年間これまで散々、試練を与えられては挫折し落ち込み、バレー観戦を止めようと思ったタイミングが幾度となくありました。でも、乗り越えてきたからこそ今日がある…。
喜怒哀楽、感情の忙しかった五輪観戦がこれにて終了。
帰り道、ホテルまでのんびり歩いていたら怪しい男性に声を掛けられ、話してみたら、審判の方でした。今回日本の女子の試合の主審をしたと、見せてくれた写真には、古賀選手と並ぶ姿。
そんないろんな出会いに恵まれた初めての五輪観戦。私が想像していた五輪とはちょっと違い、一世一代のメダルを目指して必死に挑む大会というよりは、大好きな選手の有終の美を見届ける大会でした。それでも、北京五輪観戦未遂のリベンジを果たせ、私のバレー観戦歴に新たな1ページが加わったことに大満足です。
誰もが特別な大会という五輪…。確かに2セットダウンからの逆転というのはなかなかなさそうで、五輪では割と起こり得ることのように思います。それだけ技術に加え、経験がものをいう大会なのかもしれません。そう思うとデメリットだと思っていた年齢層の高いベテラン勢の多いセルビアには、ある意味メリットだったのかもしれません。
12へつづく…
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