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パリオリンピック観戦旅10~SERvsCAN②

悲しみに暮れる中の…「最後」の観戦。でもそんな中でもしっかり魅せてくれる選手たち。3セット目アタナシエビッチの2連続エースで目が覚め、私は何をしていたのだろうか…と後悔し始めます。こんな素晴らしいエンターテイメントを見せてもらっておきながら、悲しんでる場合ではないのに! そう、私を慰め元気づけてくれるのは、やはり選手のパフォーマンスなのでした。

1セット目を16-25で落とし、2セット目も22-25で失セット。

第3セットはアタナシエビッチの連続エースで逆転したところに、イボビッチのエースもあり3点差とリードし始めます。それでも簡単にリードを許してくれないカナダ…。マーの2連続エースですぐに戻されてしまいました。

セット終盤、ネデリコビッチのブロックが決まり、これでセルビアの流れになるかと思いました。ですが、ヨボビッチとネデリコビッチのコンビが合わずミスで失点…。しかし安定のルブリッチのアタック、調子を上げたクユンジッチのサーブでカナダを崩し、なんとかデュースの末、セルビアが1セット獲得! 最後の試合、悲しいストレート負けは免れました。

勝利が近づいた!というよりは、これで代表引退する2人のプレーがまだ観られる…という喜び。でも、できるのなら最後は勝利で送り出したいと欲が出てきてしまいます。そう思ったら涙を流し自分の世界に浸っている場合ではない!最高に楽しかったリュブリャナの観戦を思い出し、再び全力で声援を送り始めました。
もちろん選手の為なら、サーブ時の大ブーイングも!
ただ…、五輪は特殊な大会のようで、国際試合当たり前のように起こるサーブ時のブーイングが、全然ないのです…。その中で声を張り上げてブーイングするのは、本当にマナーが悪い観客に思われそう…。実際、声を出した直後、前列の席の方にも横の席の方の視線を受けてしまったので、「うるさくてごめんなさい」と謝っておきました。でも、それで止める気持ちは全くなく、それ以上にポドラスチャニンとアタナシエビッチの勝利を見届けたい気持ちの方が強く、後悔しないよう周囲の目を気にせずに挑みました。

第4セットはアタナシエビッチのポイントから。ディグから繋がるようになったセルビアは、リードを広げていきます。それにしてもカナダのサーブはホントにネットに触れるものが多い…。ネットを超えずエラーになるのも多くそれは助かるのですが、逆にネットインサーブもホントに多くて意表を突かれヒヤッとします。
対するセルビアのサーブはここへきて安定し始め、エースだったり、相手守備を崩したり、それぞれが効果的に働いています。良いサーブとトランジションで流れは完全にセルビア。ここは危なげなく25-19で、フルセットまで持ち込ませることに成功しました。

いよいよラストの第5セット。試合の行方が決まる大事な場面でもありますが、それ以上に重要な、2人の代表最後のセット…レジェンドたちのパフォーマンスの見納めとなります。でもそんな感傷的にる余裕は、もはやもうなくなっていて、すっかり応援モードに。ここまで来たらもう何が何でも勝たせてあげたい一心でした。

第5セット、アタナシエビッチのスパイクが決まり、ホッと胸をなでおろします…。大エースのアタナシエビッチですが、いつからかシャットアウトされる場面が増えたことで、祈るように見ることが常になってしまいました。セルビアの友人たちは、セルビアの黄金期を支えたミリュコビッチ時代から見てきているので、決められないエースには厳しい一面も。そんな声を聞くと、セルビアの14番を受け継いだ彼は、これまで相当な重圧と戦ってきたのだろうな…と想像せずにはいられません。身体がボロボロなのは知っているし、手術を繰り返し、若いころのようにいかないのは重々承知しています。それでもその中で最高のパフォーマンスを見せてくれるから、応援したくなる…。セット中盤にはエースで同点、さらにサーブで崩して逆転。この存在感はやはりエース・アタナシエビッチだと納得するのでした。

初戦のフランス戦ではフルセットで7本のブロックをマークしたポドラスチャニンですが、ここまで全くブロックポイントはなく、少し物足りなさを感じてしまいそうになります。ですが、数字には表れなくても、ワンタッチをとって繋いだり、威圧感でアタッカーの障害になっているのは紛れもない事実。私がセルビアを観続けてから、多少の波はあったものの、常に主力として活躍をし続け、今もなお技術の高さを見せているのには、本当に驚かされます。リシナツの復帰が見えない今、ネデリコビッチ成長の為にもまだ続けて欲しいのが正直なところ。私の計算が間違ってなければこれで公式国際試合出場362試合目。400試合までは余裕でいけると思ってしまうのです。

一進一退の攻防が続く第5セット終盤。4度目のマッチポイントを迎えたセルビアは、コート上の選手も一緒になって拍手で会場を盛り上げ、最後の最後、最高のフィナーレを迎えようとしています。正直、心の内は不安でいっぱいの状況で、いつマッチポイントを奪い返されるかとドキドキ。その中でバレーの神様は私に、最高のエンディングを用意してくださいました。

カナダのスパイクを必死に拾い上げたトドロビッチ、それをクユンジッチがアタナシエビッチの方角へと2段トス。近年、無理な2段トスを打ち切ることは避け、守りに入って返すだけのアタナシエビッチが、この時は勢いある若いころのように強気に全力で打ち切ったのです! マジ!?打った!?!? ボールはカナダの3枚ブロックを避け、クロス方向、ラインギリでコートイン。渾身の一撃が決まりました。

もう完全に鳥肌!!! 若いころ何の迷いもなく打っていたスパイクが徐々にマークされるようになり、体の不調と共に被ブロックも増え、そこから探りながら、無理り打ち切ることは避けていたのに、ここでこの最後の場面であんなに強気に打ち切った。しかもしかも私の大好きな、私が沼落ちしたあの時と同じ美しくてダイナミックなクロススパイク!!!! 
願ってもみなかったこの最高のパフォーマンスは、代表引退にふさわしい、彼にとっての最後の得点になりました。

11へつづく…

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