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SCMキャリアにおける職務経歴書/CVの実例と、自己理解の解像度を上げる作成ステップ

1. なぜCVがキャリア形成において重要なのか

はじめまして、梶野透です。このNoteでは、主に社会人10年前後のSCM領域に関わる皆様を対象に、キャリア形成やスキルアップのヒントをお届けしています。なぜなら、私自身がキャリアの中で何度も「壁」を感じ、そのたびに学び直しや外部からの刺激を受けることで前に進むことができたからです。

最近、X(リンクこちらです:梶野Xアカウント)のDMで、「キャリアの棚卸しの方法」や「CVをどう作成しているのか?」というご相談を具体的にいただきました。
加えて、新卒で入社したP&Gでは、同僚や後輩からも頻繁に「どうやったら採用されるCVが書けるのか?」という質問を受けることがありました。当時からCVについての関心の高さを感じていましたが、それは時を経ても変わらないようです。そして、最近のDMでのやりとりをきっかけに、改めてCVについて考える機会を持つことができました。(P&Gでは基本的に新卒から育てるという方針で、組織運営を行っており、入社後にどこかのタイミングで転職するというのは既定路線でもあります)

私が特にCVについて強調したい理由は、CVが単なる職務履歴の羅列ではなく、自分自身を「言葉」で表現する力の結晶であり、過去・現在・未来をつなぐキャリアの「地図」そのものだと感じているからです。そして、この地図を作ることで、自分自身の価値を見つめ直し、新たなキャリアの可能性を見いだすことができると信じています。

このNoteでは、私自身の経験をもとに、CVを作成する過程で得られる具体的なメリットや学び、そしてどのように自分のキャリアを構築していくかについて深掘りしていきます。具体例として、シンガポール勤務時代にインド人の上司から英語版CVを何度もレビューしてもらい、独自のフォーマットとしています。

CVは、ただの履歴書ではありません。それはキャリアを俯瞰し、自分の価値を再発見し、未来を描くためのツールです。今回のNoteでは、CV作成の具体的な方法や考え方を、一緒に探っていきましょう。


2. 梶野のCVサマリー:実例から学ぶCVの構成

実例がないと、概念的な話になってしまいますので、恥ずかしながら私が現職のトリドールのCSCOを受けた際に使用したCVのサマリー部分をご紹介します。この部分は、自分が何者で、どのような価値を提供できるのかを凝縮して伝える、いわばCVの「顔」です。

実例:CVサマリー(抜粋)

大学卒業後、日本及びシンガポールにて約17年、一貫してサプライチェーン領域を担当。ロジスティクス、E-コマース、消費財、化粧品、外食、食品業界などに加え、アカデミック、官公庁、スタートアップなど、産官学において幅広い知見・経験を有する。キャリア初期において、様々な改善を実行。見える化、標準化、仕組化などの手法を会得し、製造業における改善を経験。その後、全体最適化そのものを策定・実行することへ軸足を移す。サプライチェーンの各機能軸全般を俯瞰し、現状を把握。社内外のチームを組成・育成し、中長期の視座で課題設定、戦略を策定。描いた未来のサプライチェーンを具現化し続け、現在に至る。2019年に、早稲田大学吉本研究室との共同研究を起点とした、荷主主導の全体最適化施策を主導し、ロジスティクスにおける各賞を受賞。2021年に国土交通省の推薦を受け、高度物流人材として登壇するなど、講演や講義の経験多数。これら発信する機会を、次世代の人材育成、組織の能力の最大化、新たな協業の起点とするなど、前例にとらわれない社会、組織への貢献も日々実践・模索している。日本語、英語にてビジネスや講演などを遂行可能。

梶野CV2024年1月時点

重要なキーワード(本CVでは、専門領域と記載しています)

CVサマリーの内容を支えるキーワードとして以下を設定しました数々の面接で、過去経歴書を見てきましたが、私自身ざっと目を通す際にはサマリー部分と、キーワードを拾う事のみを行います。ハッシュタグに近い扱いで、後述しますが、受け手に合わせることは必須です(募集要項やJDが明確であればあるほど)。現時点ではいったん2章以降の棚卸し、ご自身の言葉で言語化することが大事だと思います。

キーワードを整理し、これをもとに自分のキャリアストーリーを一貫性を持たせて構築しました。この「キーワード設計」は、受け手に一貫した印象を与える上で非常に効果的です。

CV 実例 2024年1月時点

以上、サマリーとキーワードをまとめたうえで、職務詳細、学歴などと合わせて、PDF/Word2枚にまとめることを必須と考えてください。
トリドールを受けた際には、大学の非常勤講師をそのまま続けたいという強い想いがあったので、あえて対外的な委員会、受賞歴、講演等をまとめ日本語3は3枚にまとめました。梶野は面接をする側の場合、印刷して読みますが、最初のページである程度把握することが多く、出来るだけサマリーをもれなくダブりなく書くことをお勧めします。

3. CVを通じて「現在地」を知る:過去の整理と現在の可視化

CVを作ることの一番のメリットは、キャリアの「現在地」を把握できる点です。しかし、単に過去の仕事を羅列するだけでは不十分です。それを俯瞰的に整理し、自分が何を得意とし、次に何が必要かを明確にするプロセスが重要です。

3.1 キャリアの棚卸しをどう進めるか

キャリアの棚卸しは以下の3ステップで進めます:

  1. 業務内容や成果をすべて書き出す

    • これまでの経験を可能な限り詳細に列挙してください。
      例: 「物流コストを10%削減」「新システム導入で在庫回転率を15%改善」など。
      ポイント:成果を数値化すること。数字は説得力を生みます。

  2. 失敗や挑戦をリスト化

    • 成功だけではなく、挑戦した結果の失敗も記録してください。失敗から学んだことは、再現性のある知見としてCVに生かせます。
      例: 「新プロジェクト立ち上げで進行遅延。原因分析で改善策を策定し、後続プロジェクトでは定着化に成功。」

  3. 感情的なエピソードを含める

    • 感情的な成功体験や挫折は、あなたの人間性を表現する上で重要です。
      例: シンガポールでの海外勤務時、文化の壁を乗り越えて達成したチーム連携。

  4. キーワードも可視化しておく。2章でふれた、ハッシュタグ的な要素を追加する場合にはとても重要なポイントとなります。

3.2 STARメソッドを活用して具体的に構造化する

STARメソッドは、CV作成において強力なツールです。以下に具体的な事例を挙げてみます。

  • Situation(背景):
    「物流業務のコストが年間で10%以上増加しており、改善が必要だった。」

  • Task(課題・役割):
    「物流コスト削減プロジェクトのリーダーとして、改善案を提案し、実行する役割を担った。」

  • Action(具体的な行動):
    「サプライヤーとの条件見直しを含む物流戦略を再設計。配送ルート最適化と統合システム導入を実施。」

  • Result(結果):
    「物流コストを15%削減し、配送スピードも3%向上。」

この形式でエピソードをまとめることで、受け手に明確で具体的な印象を与えられます。

3.3 現在地の可視化を進める

このプロセスを通じて、自分の現在地を正確に把握します。梶野の例の一部ですが:

  • 強み: 「現場での改善」「全体最適化」

  • 弱み: 「コードを書くなどのプログラミング」「SCMそれぞれの領域での深い知見・経験」

4. CVを未来のキャリアに活かす:目指す方向性の設計

CVを活用して未来を描くことは、単なる「過去の棚卸し」ではなく、「次のキャリアのデザイン」を意味します。

4.1 キャリアのゴールを明確にする

未来のキャリアを具体的にイメージしてください。以下の質問を参考に、次の目標を考えてみましょう:

  • どんなポジションに就きたいか?
    例: 「SCMのリーダーとしてグローバルで活躍したい」

  • どんな成果を出したいか?
    例: 「DXを活用したサプライチェーン全体の最適化を実現したい」

  • どんな影響を与えたいか?
    例: 「次世代人材を育成し、組織全体を変革したい」

4.2 ストーリー性を持たせる

キャリア全体を一つのストーリーとして捉え、CVでその一貫性を伝えます。

  • 初期キャリア: 現場で改善スキルを習得。

  • 中期キャリア: 全体最適化や組織変革に挑戦。

  • 未来: 経営視点でSCMをリード。組織変革。組織を超えた人材強化

4.3 キーワードの進化

初期のキーワード:「改善」「標準化」
中期のキーワード:「全体最適化」「SCM改革」
未来のキーワード:「グローバルSCM」「次世代育成」

5. 受け手の視点で考えるCV作成の考慮点

5.1 求められる人物像を理解する

  • 業界や役職ごとに異なる「求められる人物像」を理解する。
    例: 「変革型リーダー」を求めている場合、チャレンジングな成果を強調する。

5.2 再現性をアピールする

  • 実績が次の職場でも通用することを示す。

  • 具体例:
    「物流コスト削減プロジェクトを再現し、新しい環境でも同様の成果を出せる。」

5.3 書き方の注意点

  • キーワードの優先順位を、先方の文化や期待に合わせて調整。

  • 日本語版と英語版でフォーマットを微調整する(結論を先に書くなど)。

5.4 参考:トリドールにおける現職を踏まえたサマリーを作成

ひっそり本Note後半に記載しておきますが、上記のサマリー読んでいても、まだまだ文章のブラッシュアップや門後の修正が必要だなと感じる部分が多々あり、そしてキーワードももっと良いものかけるなと感じています。現職における日々の試行錯誤で、少し視野が広がったからなのか、文章に向き合い始めたからなのか、まだまだ伸びしろたくさんあるってことで理解しました(ポジティブ変換w) いかに、現職を踏まえて、ブラッシュした内容を記載しておきます。

大学卒業後、日本およびシンガポールにて約17年間、サプライチェーン領域に一貫して従事。現在はトリドールホールディングスの執行役員兼最高サプライチェーン責任者(CSCO)として、約30か国、20ブランド、2000店舗超の店舗への供給責任を統括。国内外のサプライチェーン全体を俯瞰し、戦略策定から実行までを主導。ロジスティクス、Eコマース、消費財、化粧品、外食、食品業界に加え、アカデミック、官公庁、スタートアップなど、多様な領域で知見と実績を積む。キャリア初期には、製造業を中心に見える化、標準化、仕組み化を通じたプロセス改善を推進。その後、サプライチェーン全体の最適化に軸足を移し、俯瞰的視点から各機能の現状把握、社内外のチーム組成・育成、中長期的な課題設定と戦略立案を主導。
描いた未来像を具現化し続ける中で、2019年には早稲田大学吉本研究室との共同研究を基盤に荷主主導の全体最適化を推進し、ロジスティクス分野で複数の賞を受賞。2021年には国土交通省の推薦を受け、高度物流人材として登壇。2024年よりトリドールに参画し、SCM本部長として組織文化を再構築。パートナー企業との協業や社内の仕組み化を通じて、グローバル展開を支える持続可能なサプライチェーンの実現を目指している。
トリドールでは、店舗への供給責任に加え、グローバル市場における標準化とローカル対応の両立を重視。各国の特性に応じたサプライチェーンモデルを策定・導入し、事業成長を支える仕組みを構築。また、発信の機会を次世代人材育成や組織能力の最大化、新たな協業の創出に活用することで、前例にとらわれない社会的貢献を日々追求している。日本語および英語でのビジネスおよび講演が可能。外食業界の特性を活かしながら、非連続的な挑戦を推進し、物流やサプライチェーンを通じた事業成長の新たな可能性を開拓している。

言い回しや、少し具体を入れたり引いたりしましたが、皆様どうお感じになるでしょうか?

6. 行動が未来をつくる、その第一歩を

CVを行動に結びつける

CVは書くだけでは価値を発揮しません。それをベースに、具体的な行動につなげることで、キャリアは新たなステージに進みます。ぜひ以下を試してみてください:

  • 今の自分を言葉にする
    一度CVを書いてみることで、自分自身の「現在地」が明確になります。どんなスキルがあり、次にどんなスキルが必要かが見えてきます。

  • 一歩踏み出す
    新しい挑戦や学びに一歩踏み出してみてください。CV作成の過程そのものが、行動を引き出す起点になるはずです。

皆さんの声を聞かせてください

このNoteは、社会人10年前後のSCM領域に携わる方々を主なターゲットとして書いていますが、読者一人ひとりが抱える悩みや目標は多様だと思います。

  • 今回の内容についての感想

  • 次に聞いてみたいテーマ

  • 自分のキャリアやCVに関する質問

ぜひ、X(旧Twitter)のDMやコメント欄で教えてください。皆さんの声をもとに、このNoteをさらに読者に寄り添った内容に進化させていきたいと思います。

次回予告:自分自身を深掘りするということ

次回のNoteでは、「自分自身を深掘りする」ことに焦点を当てます。なぜそれが重要で、どうすれば効果的に進められるのか?具体的なフレームワークや方法論も交えてお届けする予定です。

CVは、あなたの過去を伝えるだけでなく、未来への道を切り開くツールです。
このNoteが、皆さんの行動のきっかけとなり、新たな挑戦へとつながれば幸いです。次回のNoteもお楽しみに!