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長瀬有花初心者も痺れた”放電”

 3/30日に表参道WALL&WALLにて開催されました長瀬有花ライブ放電”、自分は都合がつかずオンラインのアーカイブにて観測したのですがめちゃめちゃに良きライブでした。

 今回は前回の”エウレカ”と違いミニマルな規模での編成でお送りされる密度の高いライブとのことでまだまだ有花ワールドへの浸かり方が浅い実質初心者のような身としては例えオンラインであっても「自分はこのライブにて有花さんの放つ素晴らしさの何%ほどをちゃんと受け取れるのだろうか…」という懸念から観測することへのハードルが少々高いように感じていました。しかし「まぁ万が一さっぱりだな~となっても観測したい!」ということでチケットの購入を決意。いざ観測。


 ──結局は「この音作りは…!~~って感じでいいな!」とか「ここのこの奏者のテクニックは実はこう凄い」だとか綿密に作り込まれたライブの要素の数々をちゃんと咀嚼しきることは出来ずファーストインプレッションとしては「凄い!音が良いね~!」とかいう貧相な感想しか出てこなかったですがそれでもめちゃめちゃ凄いライブだったということは感じ取ることができました。後は良すぎて何回も繰り返し観て聴いて、としてきた中で気づいたというか個人的にこう思いました~というようなことを書いて感想を補強していきます。


 今回のライブは昼と夜公演の二部構成となっていて、おおまかなセトリの流れはどちらの公演も同じようにされている感じでしたが少しのセトリと演出・演奏の変更がありました。しかし、少しといってもライブの雰囲気などは両公演とも全くの別モノとなっていました。
 昼公演は照明の演出の大半がモノクロになっていて洗練された長瀬有花の音楽の世界を味わうのに相応しい空間が作り上げられており、匠然とした雰囲気を感じるステージとなっていました。
 一方で夜公演は有色照明が演出に用いられており雰囲気としては”エウレカ”の時の演出を会場規模に合わせてミニマルにしたもの、みたいな感じでした。もちろんただ徒に規模を縮小させた訳ではなく、音楽そのものの魅力を伝えるための演奏を邪魔しない範囲というものを考えてのことでしょう。
 そして今回のライブで自分が一番面白いな~と思ったのがVo. Dr. Ba. Ky.の四ピース編成でお送りされていたところです。自分の中では一般的なバンド編成はVo. Dr. Ba.そしてGt.の四ピース編成がベースとなって、チームによっってそこにキーボードやバイオリンなどといった楽器を足すという編成の仕方をしていくものだとばかり思っていました。しかもこのライブは同期を使わずに演奏をするということで一体どのような音が出来上がるのか、とライブを観るまでずっと気になっていました。が、いざ聴いてみればそこには立派な有花ワールドが展開されていました。


 昼夜両公演とも映画館の上映の音 有花ワールドver.(?)から開幕し、1曲目は「駆ける、止まる」でした。今までいろんなライブでいろんな「駆ける、止まる」が披露されてきましたがインストでなければ、生演奏でギターも同期も無しのバージョンは初めて聴いたのでとても新鮮でした。(というか今回はほとんどの曲がそんな感じで凄く良かったです)


 そして1曲目を演奏し終えて「とろける哲学」、「みずいろのきみ」とさらに二曲続けての披露となりました。今回は編成的に低音の強力さがとても魅力的だと感じていて、この二曲はゆるっとしてかわいい雰囲気の曲ですがよく聴くと結構いかついドラムが鳴っていたり以外と激しい演奏と有花さんの「だつりょく」が組み合わさることで不思議な神バランスで成り立っている楽曲でして、工藤さんの正確無比さと手数を誇るドラムと森田さんの華麗な6弦ベースによる上質な低音によって曲の持つ魅力が倍増しているなと感じました。


 続いて「ブランクルームは夢の中」、「アーティフィシャル・アイデンティティ」、「ライカ」が披露されていきます。この三曲はとってもノれるアレンジになっていてこれぞライブ!といったような楽しさが前面に出てるような音で個人的にとっても好きなアレンジでした。それと「A・I」にて森田さんが披露した猫の鳴き声のように唸るベースがあったところが個人的めちゃ良ポイントです。


 そして有花さんによるノイズの演出から7曲目「異世界うぇあ」へ。有花さんのノイズの入れ方など、今までの演奏の中で一番異世界感のある「異世界うぇあ」だったなと感じました。この曲が後に続く曲をも異世界情緒あふれるもののように感じさせてくれている気がしてます。


 ここでバンドメンバー紹介を挟み、次曲「オレンジスケール」自分はこの曲のライブver.が大好き人間なのでセトリに入れてくれて本当にありがとうございますって感じです。本当にありがとうございます。


 続いての曲は「fake news」。自分は今ライブのセトリに入ってるとはつゆほども思ってなかったのでビックリしました。黒い装丁の台本を手に取り有花さんのライブ史上初本番にてのニュース(フェイク)朗読が披露されました。昼夜ともに一度も噛んでなくて流石の滑舌すぎました。そして「fake news」が終わってから次の「近くて、遠くて」への繋ぎがあまりにも自然で良すぎました。入り方的に異世界のニュースに紛れ込んできたノイズみたいな感じがしました。ちなみに「近くて、遠くて」で平手さんがキーボードを弾きながらいきなり片手でトランペット吹き始めて仰天しました。そんなことできるんですか…?!


──「異世界うぇあ」でいざ異世界へ、「オレンジスケール」のパートで飛ばされてきた異世界を冒険していた道中で寄った町中に流れる「fake news」、そしてそこに突如ノイズが混じったと思えば「近くて、遠くて」が流れだす、みたいなストーリーが勝手に補完されるくらいライブのセトリ、および長瀬有花の世界に惹き込まれました。夜公演では「砂漠の水」が「fake news」の前に追加されていて町に至るまでの道中も表現されている感じもして良かったです。


 工藤さんの激烈ドラムソロから11曲目、「アフターユ」。途中途中で新たな歌い方を挟んだりアウトロでは有花さんが手ずからカズーを吹いたりと今までとは違う音をいくらでも出してくれる有花さん、流石すぎます。1番の「じっ と見る」の後がかわいすぎてかわいいです。


 次の「やがてクラシック」ですが”エウレカ”のときの神々しい壮大さとはまた違って通常よりもゆったりとした伴奏で、まるで100万年の時を実際に刻んできたかのような説得力と雄大さを帯びていてこれもまたとっても沁みます…。歌詞に登場する時間のスケールをより分かりやすく感じやすく表現しているようなライブアレンジ、大好きです。


 そしてここからが昼公演と夜公演のセトリにおいて大きく異なる点で、どちらも表現している世界観が素敵で一番好きなパートです。

 まずは昼公演。リミックスアルバムにて収録されているものをベースとして編曲されたような音でお送りされた13曲目「プラネタリネア」、「アフターユ」にも少し感じた宇宙的要素がさらに強まっていて、世界という枠組みに囚われない有花さんの音楽性を彷彿とさせるような感じが好きです。「プラネタリネア」の演奏を終えるとバンドメンバーの皆様が退場していきステージ上に残るは長瀬有花さんただ一人のみ。今度は何が起こるのだろうと注目しているとエレキギターが有花さんのもとに運ばれてきました。エレキかけて文字通りに有花さんが一人でステージに立ち、一人で音楽を奏でるライブとなりました。またここからは照明演出に色が宿ります。
 最初に有花さんが弾き語ったのはサカナクションさんの「ユリイカ」のカバーでした。出だしの歌詞が音になった瞬間に会場がどよめいていて「その気持ち、分かりすぎる…」となりましたね。久しぶりにライブステージにて披露されたカバー楽曲でそれが「ユリイカ」なのが最高です。有花さんの弾くギターの音と歌声のみなので声に乗せられた感情がダイレクトに届いてきてとっても心に沁みる音となっていました。


 お次は「微熱煙」。こちらもエレキによる弾き語りでした。音数が少ない状況での「微熱煙」は本っ当に最高です。大好き。後半の有花さんによるシューゲイズは圧巻でした。今まで「微熱煙」といえばアコギというイメージがありましたが弾き語りで音源と同じようにシューゲイズとその後の静寂とのコントラストを作れるエレキのみの「微熱煙」も最高すぎて痺れましたし、会場の皆でシンガロングするところとかいい光景すぎて泣きました。「微熱煙」は毎度刺さりまくります。


 最後の曲はアコギに持ち替えて「宇宙遊泳」の弾き語りでした。エレキだけでなく有花さんのアコギの弾き語りも聴けてしまう満足度の高さたるや。「宇宙でも 会えるなら」という歌詞で昼公演における歌唱の締めとなっているのがたまりません。最後まで感動が沢山で最高のステージが作り上げられてました。


 今度は夜公演。こちらは全編バンド編成でお送りされました。
 14曲目「微熱煙」。前述の通り今回はギターが編成されていない状態で演奏されたこの曲ですがこれを聴いて今まで自分が知らなかったベースの魅力や可能性を目の当たりにしました。こちらでは普段はギターが担う旋律の一部や後半のシューゲイズを森田さんが6弦ベースにて行ったのですがギターとベースを超高速で持ち替えてるんじゃと思ったくらいどちらパートを演奏していても違和などは微塵もなく完璧でした。ここまでのポテンシャルを持つ楽器もさることながら、楽器の持つ性能を最大まで活かし切る奏者も本当に凄いな…と改めて感服しました。こちらの「微熱煙」も最高でした。


 続く楽曲は「宇宙遊泳」。この曲もキーボードの音が駅のホームにて流れるものと音の雰囲気が近いけどその中に星々のきらめきみたいなキラキラとした音も入ってるのが好きなので今回のバンド編成による演奏も聴けたのが個人的に嬉しかったです。


 そして次は夜公演および長瀬有花ライブ”放電”最後の曲は「プラネタリネア」。なんとこちらはライブ中の撮影が許可されたものでした。長瀬有花という音楽の宇宙の旅を終えるようにふわふわとして煌びやかな音に聴き入ってる間にあっという間にライブは終演となりました。


 ”エウレカ”のときもそれまでの”長瀬有花”を吸収して進化したという形の集大成としてのライブをされていたのかなと感じていて、今回はそれとはまた違って今までに有花さんが積み上げてきたいろんな時期のいろんな良さを少しずつ集めてステージに並べたという形での集大成としてのライブをしてくださったように感じられました。だからこそのセトリや演出をされていて長瀬有花を知っていた人はいつかの輝きをもう一度感じれたり、知らなかった人にも今まで手に入れてきた有花さんの良さがどういったものなのかを存分に知れる素敵な構成だと感じました。
 まだまだ有花さんの本当の素晴らしさの数%ほどしか観測できませんでしたが、むしろこれから沢山の素晴らしさを発見できる有花さんの凄さを再認識できて嬉しいです。
 此度も最高のライブをありがとうございました。またどこかの次元にて観測させていただきたいなと思います。

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