娘にしてあげられること

 私の家族は認知症で施設に入居している母と、都内で一人暮らしをしている30代の娘です。
 母は、前にも書いた通りすべてを施設にお任せしているので、その関係に頭を悩ませることはありません。デリケートなのは娘との関係。
 
娘がうんと若かった頃は反発されて悲しい思いもしたけれど、今は気を遣ってくれているのがよくわかるし、そこそこ悪くない関係を保てていると思います。でも、気を緩めたらダメ。
 娘が内向的で友人が少ないせいもあって、ついつい娘の友だちヅラをしそうになるけど、それは絶対にしてはいけないこと。娘のことをいちばん大切に思っているのは今もこれからもおそらく私なのだけれど、それは娘を私に縛り付けることになりかねない。
 私の影響の及ばない新しい場所に娘は出て行かなくてはならないし、背中を押してあげなくては。できる? できるよね、娘が大好きで大切だからこそ。
 
私と同年代の女性の友人の中には、お嬢さんが地方での暮らしを選んだり、国際結婚をしている人がいる。私の娘がそうしたいと思った時に気持ちよく送り出してあげられる人でいないといけない。ウチの場合母一人子一人だから、そこんとこホント肝に命じておかないと。
 
一人息子が突然遠い地方の女性と結婚し、そちらの土地で生活していきたいと言いだしてショックを受けている友達がいる。付き合っていることも、何度もその地方を訪ねていることもまったく知らなかった、なぜもっと早い段階で話してくれなかったの、と。
 息子さんの気持ち、わかるよね。お母さんがショックを受けるとわかっていたから言えなかったんだよね。お母さんの気持ちも痛いほどわかるよね。離婚後一人で育てた息子を、同居していたわけではないけど同じ地方に暮らしている息子を、どんなに頼りにしていたか。夫や、他にも子供がいる人とはまったく違うよね。
 
この間、娘が「引っ越ししたいんだよね」とポツッと言ってたけど、そういうことも覚悟しないといけないし、もしそうなら「いってらっしゃい!」と送り出してあげないといけない。絶対に私に縛り付けちゃいけない。
 そのためには、私は大丈夫、ということを常に娘に伝えておかないと。精神的にも身体的にも金銭的にもぜんぜん大丈夫なママを死ぬまで続けていくこと。母一人子一人だからこそ。
 
具体的には、社交的だと思われるのがいいんじゃないかな、ほんとは違うけど。それか、一人が好きで一人でも大丈夫な人と思って欲しい。身体的な衰えのグチは、言うなら明るくね! 贅沢はできないけど、自分ひとりならまあやっていけるよ、ってことも、近いうちにちゃんと伝えて安心させよう。

 大きな財産はないし社会的な力は何もない、何もしてあげられない私。引っ越しするって聞いても、荷造りくらいはいくらでも手伝えるけど、保証人には多分なってあげられない。
 私が娘にできること。それはいつでも娘を気持ちよく送り出してあげられるお母さんでいること。それだけだと肝に命じておけ。

 

いいなと思ったら応援しよう!