上等なブックカバーと栗のクープ
今日は大学にちょっとした用事があったのでその帰りに1人で二子玉川まで足を伸ばした。
二子玉川はまだ行ったことのない土地で、何かの番組で女性の憧れの街として紹介されているのをみてからずっと行ってみたかったのだ。
いつもなら誰かを誘うけど今日はひとり。
カフェで優雅に小説でも嗜んで、荒んだ自分を浄化する必要があるように思えた。
lisseteというカフェでお目当ての栗のクープを頼む。クープが何かわからないけれどそれはモンブランのような出立ちだった。
モンブラン?のくるくるの上にはマロングラッセと赤いきらきらが散らばっていた。
口に運ぶと、おお、ラム酒!
ラム酒のアイスと正方形のメレンゲのさくさくと何かしら(おそらくあんず?)が器の底に隠れていた。
深煎りのコーヒーともよく合う。
友人が貸してくれた小説(江國香織の「真昼なのに昏い部屋」)のページを進めながら周りを見渡す。
店内に入ってきたご夫婦(奥さんは赤ちゃんをカンガルーみたいな前かけのポケットにだきかかえていた)はとても落ち着いて見えた。
旦那さんはとても聡明そうだったし、奥さんも冷静だった。
私はあの奥さんのように器用になれないなと自己嫌悪する。
それとも歳を重ねたらもっと器用に賢く生きれるのかしら?
店を出て、目の前でやっていた若い陶芸家の作品展をみた。
素敵な花瓶があったけど7700円もしたので静かに裏返して店を出た。
この街には学生が多い。近くに大学でもあるのだろう。
帰り際、駅前に気になる雑貨店があったので立ち寄る。
そこで私は黒くてつやつやで柔らかい本皮のブックカバーと老夫婦が手を繋いで商店街を歩く姿がプリントされたポストカード(私の部屋の壁の一角には気に入ったポストカードを飾る場所がある)を購入した。
とてもいい匂いの南仏の香水とフィンランドからやってきた花瓶も気になったが我慢した。(あまりにもいい匂いで家についても忘れられないため香水は購入の検討中)
電車の中で小説に新しいブックカバーをかける。
不思議なことにこの素敵な買い物をあんなに憎んだ彼に見せたいと思った。
「上等やっさ」
と言って欲しいと思ってしまった。
本当に私はインテリジェンスのかけらもない愚かな阿呆である。
あんなろくでもないやつの名前をこの後に及んでまだ大切にしまっているのだから。