暫く名前を忘れていた

今年になってから、外に出ることがどっと減る。

バイトにいっても、私は役割としての「先生」と呼ばれるだけ。

言語的コミュニケーションをわざわざ行わなくても、意思疎通できるがゆえに、特に名前が呼ばれる必要もない家。

本を読めば、そこには様々な他者と、その名前が拡がっている。(本をちいとばかし過剰に読み過ぎたかな・・・。)


そこで、親が与えてくれた名前を忘れていた。「◯◯先生」と言われても、なんだか他人の名前のような気がして来たから、少し気が変になっていたからもしれないが、まぁとにかく名前を忘れていた。

「そうやな。ワタシ、この名前やったんやね。」と、違和感と違和感だけが残滓みたいに遠くに居座っている。

与えられたその名前を、何度も何度も頭の中で繰り返してみた。口にも出してみた。染み込んでいたはずの、十何年も一緒にいたはずの名が、薄くて、遠い。

それは、与えられた名前で、何度も口にし、何度も書きづらいと感じたもので、なんども言い間違えられたもので、何度も言ってもらったもので、「ワタシ」を代わりに表現してくれていたはずの、その名前が、どうもワタシより、15mくらい遠くにあるような気がする。

その名を意識した時、暗い空間に、自分の眼から少し遠い所に、その「名」のような何かがあるようにさえ思える。

遠いな、親が与えてくれたこの名前は・・・。

私は、他者から見れば、その名である。その名自身である。とりあえず今は、その乖離を強制的に結び付けている。でも、私はその名を持っているとうことに、自身が無くなってしまっている。その名は、劇場公演におく、仮の名でしかない感覚が、ワタシを襲う。

危ない。名が無ければ、この世界に存在することが出来ないというのに。



今日も大学生は惟っている。


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