ピジンからクレオールへのプロセスは言語の本質的機能を表す?
最近、言語の本を読み漁っている。
しかし、母語である日本語についての本は読んでいないなぁと思ったので
「旅するニホンゴー異言語との出会いが変えたもの」を借りてみた。
さっそく中をめくってみると
興味深い記述を見つけた・・・!
クレオール
これらの子どもたちがこのピジンを自分たちの大切な母語として使っていくためには(このようにして母語として使用されるようになったピジンを「クレオール」という)、いま目の前で起こっているできごとだけではなく、過去や未来のこと、この節のように空想の世界なども表現する必要が出てくるだろう。それにくわえて、そのできごとが起こる可能性の度合いや、そのできごとが起こると判断する根拠なども表現できるようにならなければならない。ピジンを母語として習得し、使用していくためには、子どもたちをはじめとしてその使用者は、さまざまな複雑装置を創り出していく必要があるのである。渋谷勝己、2013、「海外に飛び出した日本語」、『旅するニホンゴー異言語との出会いが変えたもの』、井上優編、岩波書店、11
引用したものの、実はこの文章の意味を十分にとらえきれてはいない。
母語とするために、複雑な諸装置を言葉に生み出す必要があるとは言っているものの、
両者の因果関係がよく分からない・・・。(私の弱い頭でダメなのだろうか...)
とにかく今考えるために
よく言葉に「思考」と「コミュニケーション」を引き合いに出すので、岡ノ谷一夫さんとチョムスキーさんの意見を借りる。
コミュニケーション
母語とする、これが岡ノ谷一夫さんのいう「コミュニケーションの為に進化する言葉」を指しているのであれば、納得がゆく。
今この瞬間の状況を正確に伝えるために、過去や未来的な表現を用いるようにならなければならない、ということになる。
思考
しかし
「思考の手段としての言葉」という側面も見のがすことは難しい。
「空想の世界なども表現する必要がでてくる」という点に焦点を当ててみれば、単なる情報伝達やつながりを求めるコミュニケーションのための言葉が母語を指しているとは思いにくい・・・。
もしかしたら・・・
ここでは私はある仮説を考えた。
今までは、「思考」「コミュニケーション」を分けて考えていたけれども、もしかしたらこれらが
「派生したもの」
「派生のもととなったもの」
と考えるほうが自然なのではないか?という考えだ。
フランス語
実はフランス語に興味深い文法がある。
「直説法単純未来」と「条件法現在」というものだ。
具体的な説明はいったん置いといて・・・
見て欲しいのが、とある動詞の活用。
直説法単純未来。
serai, seras, sera, serons, serez, seront
条件法現在。
serais, serais,serait, serions,sereiz, seaient
なんとなく、形が似ている気がしませんか?
実はこの下の方の条件法は、単純未来から派生したものだと言われています・・・!
全ての言語がこのような派生パターンを文法部分に持ち合わせている、というわけではないですが、
今回は、この考えを私の仮説に使いたいと思います。
「コミュニケーション」から「思考」へ
では先ほどから書いている私の仮説をまとめてみましょう。
この仮説だと、言葉の進化(複雑化)は、コミュニケーションが基になっています。
(ってことは言葉はやっぱりコミュニケーションの為に進化したのかな…?)
情報を同族に正確に伝えるだけではなく、同族とのつながりを保つための役割を果たすコミュニケーションをより円滑に行うために、文法などの諸装置がどんどん複雑化していきます。
そして、未来を表す表現が、仮定、つまり今ここには存在しないものを表現するように進化しました。
未来もつまるところ、確定ではなく可能世界(仮定した世界)のことなので本質的にはもしかしたら同じかもしれません。
今あり得ない世界の創造や記述が可能になったことによって、人間の「思考」の脳力が発達します。
それと同時に「嘘」もつけるようになりました。
人間が「神」や「宗教」「物語」のような
「虚構」を生み出すことが可能になる。
という感じでしょうか…。
今までは、コミュニケーションと思考を独立させた要素として捉えていたので、少し新しい考え方をすることが出来て、良かったです。
でも、まだ答えからは遠いような気がする…
と
今日も大学生は思索の迷路に迷っている。