ビッグピクチャーを描く
アマゾンの創始者フェフ・ベソス氏が、自身が保有する宇宙開発企業「ブルー・オリジン」初の有人飛行で、短時間の宇宙旅行に成功しましたね。昨年は、野口聡一さんが、宇宙船「クルードラゴン」に搭乗しました。これは米国スペースX社の民間宇宙船で、NASAが民間企業の力を借りた初の本格飛行でした。あのイーロン・マスクのスペースX社。クルードラゴンは、ロケット技術だけでなく、宇宙船の内装やシステムも斬新で、最先端の革新性を感じます。操作盤もタッチパネル。
米国は、2020年代後半にも月面に人が滞在できる基地を建設する「アルテミス計画」を打ち出していて、日本も参加を決めています。月の地中には水資源があり、月面基地の生活やロケット燃料に活用する計画です。すごい時代になってきました。でも私は子供の頃、もっと早く宇宙計画は進むと思っていた。映画「2001年宇宙の旅」のように、21世紀頭には宇宙開発が本格化すると想像していました。アポロ11号が月面着陸したのは1969年。アポロ計画(月飛行計画)は、安全性やコストの理由で1972年に終了。この時期は東西冷戦下での米ソ宇宙開発競争でした。しばらく有人飛行は行われませんでしたが、1981年に米国政府とNASAにより「スペースシャトル計画」(有人打上機計画)がスタート。チャレンジャーやコロンビアで事故があり、多くの飛行士が犠牲になったのを覚えている方もいるでしょう。シャトル計画は、アポロ計画同様、主に安全性、コストを理由に2011年に打ち切られた。以降、米国はロシア宇宙船「ソユーズ」に頼った宇宙ステーション輸送をするなど、活動は縮小していました。このように国の方針で行ったり来たりしつつ、私が少年時代に夢想していたような大宇宙時代はなかなか訪れませんでした。
そして現在の民間開発。NASA×民間×国家の強い連動です。ビジネスと最新科学技術と国家支援が、うまく噛み合えば、急速に宇宙開発が発展する可能性を感じます。近年、あらたな一歩を踏み出せたのは、決してすごいロケットテクノロジーが発明されたからではありません。大きなシナリオと現実的なローリングがマッチングされたということ。ちなみにトム・クルーズが、スペースX社と宇宙で長編映画を撮影する可能性について話し合いを始めており、そこにはNASAも参加しているといいます。これからの時代は、ビッグピクチャーを構想し、その実現のために多様性を力に変える能力が求められます。私たちはイーロン・マスクにはなれませんが、そのダイナミックさは参考にしたい、そう感じます。
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