veRevのご紹介 ー収益分配メカニズム
この記事では、「veRev」について紹介します。veREVは「半流動化」トークンの概念を導入した新しいメカニズムで、veトークンのステイカーに対する新しい報酬体系となっています。
UXD Protocolはこの方法を、まずはプロトコルの保険ファンドで運用する予定ですが、このメカニズムは効率的な収益分配を目指すあらゆるプロトコルにて広く用いることが可能です。
まずは、他のプロジェクトが基本的なアイデアを参考にできるように、基本的なメカニズムの概要を説明します。また、最後にはいくつかの派生デザインを概説しています。
既存のメカニズム
ほとんどのプロトコルは、取引手数料(DEX、NFTプラットフォーム)、管理手数料(Yield Vault)、発行・償還手数料(ステーブルコイン)などの形で、何らかのキャッシュフロー・収益を発生させています。
究極的には、これらのプロトコルの大多数はこのキャッシュフローをプロトコルに協力したガバナンストークンホルダーに分配することを意図しており、また「プロトコルに協力した」は多くの場合「(veトークン形式または単純なステーク形式で)トークンをステークした」ことを意味します。
収益分配が難しい原因は、以下4つの方針に沿った分配方法が全くと言って良いほど明らかになっていないことにあります。
プロトコルに最も協力した人たちにキャッシュフローを与える
ひどく懲罰的なロック・ステーキング期間(場合によっては5年以上)を必要としない
税金の柔軟性(収入を求めるユーザーもいれば、より有利な税制になるかもしれないという点でステーキング報酬を求めるユーザーもいます)
自然な形でトークンに需要をもたらす
いくつかの収益分配例とその問題点を取り上げたいと思います。
バイバック&バーン
(またはバイバックしたトークンをステーカーの報酬に)
バイバック&バーンの問題点は
キャッシュフローが誰に行くかをコントロールできない(プロトコルに協力していないユーザーにも恩恵を与える可能性がある)
バーンは将来のトークン発行・報酬の柔軟性を低下させる
供給の減少 = 需要の増加ではない
(短期的には価格に影響するかもしれませんが、長期的には一貫したデフレによりガバナンストークンの流動性が低下し、エコシステム内の参加者が少なくなり需要が減少してしまう可能性すらあります。)
以上の3点が考えられます。
また、バイバックしたトークンをステーカーの報酬に充てる場合の主な問題点としては
キャッシュフローがステーカーではなく、非ステーカーに行く
短期的に希少資産(現金)を希少ではない資産(トークン)に交換することが多くの参加者の準最適解になる
ステイカーに支払われる手数料はネイティブトークン建てになるため、ステーブルコインのキャッシュフローと比較してかなりの変動リスクを負うことになる
という3点が考えられます。
イーサリアム上の著名Vault系プロトコルであるYearn.financeはバイバック&ビルドの手法を取ることでこの課題をある程度解決していますが、それでも上記いくつかの問題に直面しています。では、手数料を使って開発者に直接ステーブルコインで支払う場合はどうでしょうか?
veトークンの収益分配
veトークンモデルは多くの場合、次のように設計されています:。
ユーザーは元金、例えば100トークンをロックします。この時、ユーザーはロックする期間の長さに応じて特定量のveトークンを受け取ります。例として、Curveのモデルでは、
1年間ロックされた1CRVに対しては0.25 veCRV
2年ロックでは 0.5 veCRV
4年ロックでは 1.0 veCRV が付与されます。
ここで、いくつかの問題点があります。
手数料の分配は、あなたのveCRVの残高に比例します(最大期間のロックでない場合、資本効率が非常に悪くなります)
ロックに応じたveの倍率設定は任意であるべきです(現在のモデルでは手数料収入を2倍にするにはロック期間を2倍にする必要がありますが、これは違う倍率設定でも良いはずです。)
トークンは通常、ロックが終了するまで完全に流動性がなくなります (クリプトのように新しい業界では、多くの場合プロトコルや企業のライフサイクルが年単位ではなく月単位となります。そのため数年単位のアプローチを取らざるを得ない場合、ユーザーがトークンをロックする動機は薄くなります。また、ユーザーはロックした資産を担保として利用することも出来ません)
報酬を3CRV建てで受け取ることを余儀なくされるため、多くのユーザーにとって税効率が悪くなります(3CRVはほとんどの法域で経常利益として計上されます)。
ve(3,3)収益分配
ve(3,3)モデルにおける手数料の分配自体は、ほとんどのveトークンモデルと同じです。ve(3,3)ステーカーは報酬(Solidlyの場合、投票したプールに対してのみ)を受け取ります。したがって、 veトークンの問題点1,2,3を継承しています。
さらに、veポジションを完全に流動的にするveNFTsの導入は、流動的なNFTs(半代替可能トークン)のセットの価格変動ダイナミクスと原資産トークンについてどう考えるかが不明瞭であるため最適とは言えません。
(インセンティブに促されるがまま)すべてのトークンがロックされている場合、基礎となるトークン価格は無関係であり、断片化されている一方で流動的なNFT市場がトークンそのものとして機能する可能性があります。
このような市場の力学について考えることは、言うまでもなく複雑です。
veRev
上記の課題から、新しい収益分配メカニズムによって解決したい事実が確定しました。
ロックされたトークンは、完全に非流動的でも完全に流動的でもない状態であるべきです。前者はあまりにも懲罰的で、後者はメカニズムを難解にする「ゲーム理論的」な力学を導入してしまうからです。
手数料の分配は、主にプロトコルに最も協力した人々(非ステーカーではなくステーカー)に行われるべきです。
プロトコルは、将来のトークン発行に関してある程度の柔軟性を保つべきです。(トークンのバーンをしない)
ロックされたトークンの経済的設計は、ロック期間にあまり恣意的に縛られるべきではありません(繰り返しますが、1年のロックが2年のロックの半分の価値でなければならない道理はありません)
ステーカーは、ステーブルコインの分配(現金収入)とステーキングリワード(米国ではステーキングリワードは異なる税制上の扱いを受けると推測されているため、より税効率が高い可能性があります)のいずれかを選択できるようにする必要があります。
UXDはプロトコル収益分配のための新しいメカニズム、veRevを紹介します。veRevは「ve Reverse Dutch Auction」の略で「ve逆ダッチオークション」を意味します。veRevの本質は、上記の問題の多くを解決しようと試みるバイバック・メカニズムです。
一言で言えば、veRevはプロトコルの収益分配によって行われる定期的な(例えば毎週/毎月の)逆ダッチオークションで、ユーザーは定期的に追加のveトークンで報酬を受け取り、veトークン(1veトークンは1トークンと同じ経済価値)をプロトコルに買い戻させるか、そのveトークン報酬を保持してトークン建てでその報酬を複利運用することができます。(譲渡が一切できない通常のveトークンとは異なり、このモデルのveトークンはveRevオークションを成立させるためにプロトコルの金庫にのみ譲渡が可能となっています。)
例を挙げてみたいと思います。
時刻 t=0に、アリス、ボブ、ワッシーの3人のステーカーがいて、それぞれ10ドル分のveトークンをプロトコルにステーキングしているとします。
t=1において、プロトコルは3ドルの利益を生み出し、ステーカーに分配したいとします。まず、プロトコルはこの利益をアリス、ボブ、ワッシーにveトークン残高を増加させる形で分配します。この例では、すべてのステーカーが同じveトークン残高を持っているので、全員が$1のveトークンを受け取ります。
ここで、プロトコルは逆ダッチオークションを開始します。このオークションは市場価格より割安な価格で開始し、市場価格で終了するとします。
アリスとボブはそれぞれその期間に得た1ドル分の報酬を売りたいと考え、アリスはそこからさらに0.50ドルを売りたいと考えます。ワッシーはワッシーらしく、何も売らず報酬を複利で運用することにします。
オークションは枠が埋まらず(利用可能な3ドルのうち2.50ドル)、市場価格で執行されることになりました。
オークション終了後、このような残高となりました。
ここでプロトコルは3ドルの利益を生み出しましたが、アリスとボブに報酬を与えるために2.50ドルしか使っていないことに注目してください。そこで、プロトコルはこの残りの$0.50を使って、公開市場でトークンを買い戻し、トークンの流通需要を生み出します。
何が起こったのか、少し考えてみましょう。収益分配の仕組みは、「キャッシュイン=キャッシュアウト」を満たさなければならず、そうでなければ非効率です。この場合、プロトコルは3ドルの利益を受け取ったので、3ドルの価値を分配すべきです。
上記表の通り、現金収入はすべて目標通りトークンに分配されたため、正味の価値創造はまさに0ドルであったことがわかります。つまりステークホルダーは、プロトコルが配布しようと考えていた金額である$3のステーブルコインを正確に受け取ることが出来ました。
さらに、トークンの正味のインフレやデフレは起きていません。
アリスとボブは共にインフレを招きうる報酬をプロトコルへ売却しました。さらに、アリスは元金の一部を売却することを選択し(彼女は元の残高の0.50ドルを売却しました)、プロトコルは0.50ドルを公開市場で購入したので、ワッシーに与えられた1ドル分のveトークンはインフレではありません(0.50ドルはアリスから、0.50ドルは公開市場から来たと考えてみてください)。なぜなら、元本の買い取りと公開市場での買い取りは、本当の意味での「バイバック」と考えることができ、それがワッシーに報酬として支払われるからです。
これが基本的な仕組みです。
次の期間では、ワッシーは比例して高い割合の収益を受け取ることになります。ワッシーは現在、ステークされたveトークン全体のうち$11/($11+$10+$9.5)=36%を持っているからです。
もしアリス、ボブ、ワッシーが3ドル以上のveトークンを売り戻したいと思っていたなら、逆ダッチオークションは標準的な価格-時間優先で実行されます(オークション枠が全て埋まった時点で提示された最低の販売価格にて執行されます)。
まとめると、veRevメカニズムには以下のようなメリットがあります。
プロトコル収益の分配は、非ステーカーよりもステーカーを優先させます。従来のバイバック&バーンモデルでは、キャッシュフローは非ステーカー(プロトコルにステーキングの仕組みがない場合は任意の数の非協力者)に行くことが定義されています。現金とトークンの希少性を考慮すると、最適な方法とは全く言えません。veRevは、プロトコルのキャッシュフローに対してステーカーを最優先します。
プロトコル収益の分配は、従来の「完全に非流動的な」veトークンを「半流動的な」veトークンに変えます。ユーザーは、veトークンのロック解除前に、自分のveトークンをいくらかプロトコルに売却できるため、トークンは完全に流動的でもなければ、完全に非流動的でもありません。
ある意味、これは全く新しいデザインのトークンです。この部分的な流動性により、より長い期間ステーキングするインセンティブが高まるはずです。実際、veトークンの流動性はプロトコル収益の増加に伴って増加するので、プロトコル収益を増加させる賢いガバナンスは経済価値を高めるだけでなく、流動性を直接高めることにも繋がります。「ペーパーハンド」や 「非活動的なガバナンス参加者 」は徐々にガバナンスシステムから退出し、そのveトークンをプロトコルに割引価格で売り戻そうとする可能性が高く、veRevはプロトコルにとって資本効率の良い買い戻しメカニズムになります。さらに、非協力的なガバナンス参加者をシステムから排除することで、そのようなユーザーが何らかの不正な方法で投票する可能性を低くすることも可能です。
ユーザーはveトークンの報酬を受け取るため、このveトークンの収益を現金に換えるか、あるいは報酬をveトークンのままにして複利運用するかを選択することができます。
これは、ユーザーがキャッシュフローを受け取るか、キャッシュフローを遅らせてveトークン報酬を複利で受け取るかのどちらかを選択できるため、多くの人にとって有利な税制上の影響を与える可能性があります。(もちろん、これについては税理士に相談してください。UXD Protocolはこれに関して一切の保証を行いません)vRevは買い戻しの安定化効果を初めに挙げたような多くの負の特性なしに再現し、トークンの間接的な恒常的需要源として機能します。
したがって、veRevは、ステークホルダーと非ステークホルダーの優先順位付けを解決し、新しい「半流動性」のveトークンを作成し、より長いロックにインセンティブを与え、ペーパーハンドをガバナンスシステムから退出させ、(おそらく)税制上に有利であり、非ステークホルダーの自然な需要を作成する新しいメカニズムであると言えます。
最後のポイント/デザインバリエーション
1つのveトークンが1つのトークンと同じ価値を持っているという仮定が、veトークンの残高に何らかの倍率を適用し、時間と共に減衰する通常のveトークンモデルとは異なることにお気づきの方もいるかもしれません。veRevモデルでは、経済価値と議決権を分離しています。このモデルでは、ロックの長さに関係なく1 veトークン = 1 トークンの経済価値です。
変わるのは、各ユーザーに固有の「ガバナンスパワー」乗数で、ガバナンスにおける投票の重みを制御します。例えば、あるユーザーが25%の倍率を持つ1つのveトークンを所有しているとすると、彼は0.25の投票権を得られるかもしれません。しかし、veRevを通じて売り戻せる彼らの持分の経済的価値は、依然として1トークンです。他のveモデルと同様に、ガバナンスパワーが(直線的に、または他の関数に従って)ゼロに減衰すると、残りのveトークンはトークンに戻されます。(プロトコルの好みにもよりますが、もう一つの選択肢は、ユーザーの流動性を、自分のveトークン残高にガバナンスパワーの倍率をかけた量にのみ許可することです)。例えば、100のveトークンと25%の倍率を持つユーザーは、残りトークンをロックしたままveトークン残高の25%のみをプロトコルに売り戻すことができますが、100%の倍率を持つユーザーはveRevオークションでveトークンの100%を売り戻すことができます。)
(第三の選択肢は、veトークンを無期限にロックすることで、すべてのユーザーに同じ投票権を与え、すべてのveトークンに対して100%のガバナンスパワー倍率を提供することです。その場合、ユーザーはプロトコルが生成する収益によってのみポジションを終了することができます)。
供給量の100%がステークされている場合(この場合、veトークン報酬の基準となる市場価格は存在しません)、プロトコルは無限の逆ダッチオークションを開始することができます。前回のオークションにおける執行価格よりも低い価格からオークションを開始し、枠が完全に埋まるまで買い戻し価格を上げていきます。この場合の逆ダッチオークションは、このエッジケースにおける価格発見のツールとなります。
ステーキング報酬(つまり正味のインフレ)を取り入れたいプロトコルは、veRevメカニズムを使うことでこれを非常に簡単に実現できます。
veトークンの報酬 = 利回りではなく、veトークンの報酬 = 利回り + 目標インフレ (買い戻すよりも多くのveトークンが報酬として与えられる) とすることを検討してみてください。同様に、純デフレを望むプロトコルはveトークン報酬 = 利回り-目標デフレ(買い戻す量よりもveトークンの報酬が少ない)とすることができます。
このようにveRevは、各プロトコルのニーズに合わせて調整できるトークン金融政策のレバーとして機能します。逆ダッチオークションで容量が余った場合、プロトコルはオープンマーケットからveトークンを購入します。ただし、オークション終了から市場執行までの待ち時間により、その間に多少値動きが発生する可能性があります。この場合、上記の例で示した正味ゼロの収支が変わり、実質的に小さなインフレやデフレが発生することになります。
(この差異が大きすぎる場合は、公開市場からのバイバックを停止して逆ダッチオークションを「連鎖的に」実施することができます。逆ダッチオークションは、前回の逆ダッチオークションが執行された価格を割引いた価格から始まり、任意の価格まで上昇することができるため、各オークションは必ず枠が埋まることが保証されています)「永続的なカニバリゼーション」、つまり低コストの資本を持つ単一の主体が全てのオークションにおいて最大の割引価格で買取枠を占有しようとすることを防ぐため、逆ダッチオークションはバックエンドで「金利」オークションと「元本」オークションに分割することができます。ユーザーが売りたいトークンの数と価格を送信すると、バックエンドは2つの「ラウンド」を実施します。最初のラウンドでは、ユーザーは自分に比例配分された利益を上限として(先の例では$1)売ることができます。その後、オークションが完全に満たされない場合(すべてのユーザーが自分の利益配分を売りたいわけではありません)、余剰分の枠は「元本」、つまり配分された利益以上のトークン(先の例ではアリスの余分な0.50ドル)の売却を受け入れます。 これによりすべてのユーザーが、希望すれば少なくとも比例配分された利益分を販売できるようになります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
またレビューと有益なディスカッションを提供してくれた
@joey__santoro, @wireless_anon, @0xkydo, @itoslemmas, @0x__fp, @heatdeathx, @bigz_Pubkey, @Alexand23684236, and @__euler__
に感謝を捧げます!
私たちのDiscordに気軽に立ち寄って、フィードバックしてください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。以下のリンク先のサイトでは、UXD Protocolに関するより詳細な情報を掲載しております。
公式ウェブサイト:http://uxd.fi/
Twitterアカウント:https://twitter.com/UXDProtocol_JPN
Discordサーバー:https://discord.com/invite/BHfpYmjsBM
<注意喚起>この記事は情報提供を目的としており、いかなる行動を推奨するものでもありません。何らかの投資判断を行う際には十分な調査を行ったり、財務アドバイザーに相談したりした上で行動するようにしてください。また、記事の正確性には万全を期していますが、内容に何らかの瑕疵があった場合の責任を負うものではありません。