ESG投資について
この記事はMBCラジオ「Radio Burn+」のマガジン用に書いています。
次回のテーマは「ESG投資」。
ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点を重視し行う投資のこと。持続可能な開発目標=SDGsの考え方とも重なる部分があり、近年注目を集めています。
財務省の資料によると(出典:PDF)、日本のESG投資額は2018年で約2兆1,800億ドル。大きい金額ですが欧米と比較すると7~8分の1ほどの水準です。ただ2016年と比較すると数倍に増えているのも確か。これからさらに伸びてゆくことが予想されます。
ESG投資のメリットとしては、社会貢献につながることはもちろん、長期的に見てESG要素を踏まえた事業・企業が評価される社会的潮流の中にあるという意味で長期投資に向いている点があると思います(私見です)。
ここ十数年で、クラウドファンディングもずいぶん活発に行われるようになってきました。社会的事業を実施する主体から見ると、単発の資金調達手法としてはまず選択肢にあがるのではないでしょうか。ただ、その主体が株式会社やNPO法人などであって、継続的な資金調達を必要としている場合はやはり投資先として選んで貰える仕組みのほうがふさわしい。そういった意味でESG投資への関心の高まりというのは望ましいことではないかと思います。
投資を行う主体から見ても、まだまだ課題があるように感じます。
たとえば個人投資も徐々に盛り上がりつつありますが、投資先を選ぶにあたっては企業の財務状況や業績などを分析する必要があります。一般的にこういったものはIR情報という形で公開されていることが多いのですが、これに加えてESG要素(たとえば事業にあたって環境配慮をどの程度おこなっているか、など)を投資家自身が調べて判断する、というのは限界があります。この点は企業の側が、ESGに関する情報発信を積極的に行っていくという必要もありますし、IR情報の一環としてESGに関するものを誰でもかんたんに見られる仕組みなどがあるといいのかもしれません。
もうひとつ。ESG「投資」という観点でみると、投資である以上当然にリターンを求めるということになるかと思います。前述の通り、長期的にはESG関連事業を評価する潮流があり事業ニーズも高まっていくことが予想されることから一定のリターンを求めるESG投資の合理性というのはあると思います(私見です)。一方で、社会的事業というのはそれ自体が収益化しにくいものも数多くあります。収益化しにくい社会的ニーズへの対応というのはこれまでは公共セクター、いわゆる自治体の仕事であったのかもしれませんが、自治体財政も逼迫する中、また、より多様化する社会の中でこれらの担い手としてのソーシャルビジネスや非営利活動というのはもはや欠かせない存在です。
リターンを求めにくいけれど支援したい、というニーズに応えるとすると、現状の制度では「寄付」ということになります。寄付にも一定の制度は設けられていて、たとえば企業が行う寄付であれば一定金額までは経費算入が認められています。(非常に細かく決まってるので詳しくははこのあたりを)
しかしながらこの寄付税制、認定NPOへの寄付などは比較的優遇されてるのですがたとえば株式会社へ寄付しようと思うと経費算入が認められる額がぐっと下がります。行っている事業は公益性が高いものであるけれども、法人形態は株式会社、などという例も珍しくないので、このあたりは事業内容の公益性を基準に柔軟な運用があってもいいのではないかなあと思います。たとえば企業ごとに(あるいはもっと細かく事業単位で)個別にその公益性や社会性、あるいはESG要素をスコア化して、スコアに基づいて優秀なところへの投資は税制優遇して資金が集まりやすくする、などでしょうか。他にもクラウドファンディングに企業が出資したお金が経費で認められるようになるとさらにいいかもしれませんね。
コロナ以降、お金の流れはこれまでよりも急速に変わっていく予感がしています。投資や資産形成についても、もっと一般的なものになっていくでしょうし、その一環でESG投資も盛り上がるといいなあと思います。
番組ゲストは鹿児島でEnvironment=環境の分野ではトップランナーの一人、NPO法人くすの木自然館の浜本麦さんです。番組にはこれまで何度も登場いただいていますが、環境の話に加えて+お金の話、というのは意外と初めてかもしれません。
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なお、金融商品には元本割れなどのリスクがあります。あくまで投資は自己責任で。念のため。