見出し画像

【創作怪談】鴉が先か、目玉が先か。

今日も窓辺に夜鴉がやってきた

以下彼を甲、私を乙とする。

甲:ぎぃあぎぃあ

乙:うわ、なんだ君かぁ。せめてお得意のノックでもしてくれよ。

甲:いひひ、失礼しやした。今日も今日とて忘れっぽくて。

乙:まぁいいさ。それよりも今夜は随分と猫の鳴き声が五月蠅いようだね。外で何かあったのかい。

甲:へぇ、死体でございます。真っ赤ででっぷりとした熟れた肉がそこのあったのでございます。だからもう皆オマツリ気分となっておりまして。

乙:ふぅん。そう言うものなのかねぇ。

甲:だから今日はこれを持って来やした。新鮮でございやすので濡れてるうちに食べないと喉に張り付いてしまいやすぜ。

乙:うわぁ、目玉じゃないか。コロンと転がすんじゃあないよ。

甲:目玉はお嫌いで。好き嫌いしてたらあっしらのように黒くなれやせんぜ。

乙:別に黒くなろうと思わないなぁ。


今日も窓辺に夜鴉がやってきた

甲:こつんこつん。

乙:やぁこんばんは。今日は行儀が良いね。

甲:そうでございやしょう。なんたって機嫌もようございますからね。

乙:どうしたんだい、そんなに黒い目をニヤつかせて。

甲:あぁ死体でございやす。見たところどこかの畜生に荒らされたようですが。いつもお世話になってる貴方様に目玉の一つでも持ってこようと思ったんですが、一つは綺麗にくり抜かれておられ、もう一つは潰されたみたいに荒らされてたんでぇ。きっとありゃあ素人の仕業でございやす。

乙:う~ん、君たちも素人だろうに。

甲:そんな事ございやせん、あっしはもう死体漁りは何年も続けてきたんでございやすからね。猫や猪もお手の物でございやす。

乙:そうかいそりゃよかった。で、今日は何で来たのかい?

甲:へい、珍しく歩いて来やした。

乙:移動手段を聞いてるつもりはないよ。そもそも飛ばない鳥に意味があるのかい。

甲:いやいや貴方様、何用で来たかを歩いていたら忘れた。こりゃ立派な鳥頭じゃあございませんか。

乙:これは一本取られたなぁ


今日も窓辺に夜鴉がやってきた

甲:きゃつんきゃつん

乙:どうしたんだい、もう夜明けだよ。今日は随分と遅いね。世間では早すぎると言うらしいけれども。

甲:へぇへぇ。ちょいと重い物を運んでおりまして。ぜぇぜぇと運んでいたら月が薄くなっておりやした。

乙:そうかい、鴉も頑張って働かなくてはいけない時代か。難儀なもんだねぇ。

甲:いつもお世話になっております貴方様に贈り物と思いこいつを持ってきやした。なんたって金ぴかの輪っかでございます。

乙:あぁこれかい。これは僕が彼に渡した物だね。昨日と同じ死体から持って来たヤツなのかい?

甲:そうでございやす。ねぇ貴方様、一つ聞いてようござんすか?

乙:どうぞ、知らない事以外は答えられるとも。

甲:なんで貴方様は殺した死体をその場に置いておくのでございやしょう?自分の物にすれば独り占め出来る、もっともそのおこぼれをあっしらが受け取っているのございやすが。

乙:それは君らの為なんだよ。

甲:へぇ、それは喜ばしい事でございやすが。

乙:この土地には鳥葬の文化があってね。それで神聖が鴉に移るとされているんだ。そもそも人に神聖が宿っているかどうかなんて分からないんだけどね。

甲:ほほう、何やら難しい事のようで。

乙:実際こうやって話せるようになっているんだから笑っちゃうよね。

甲:はぁ。では片目を潰すのも貴方様の趣味でございやす訳でしょうか。

乙:違うよ。僕だって研究者として忙しいワケさ。お喋り鴉が二人も居たら時間が無くなっちまうじゃあないか。

甲:そういうもんでございやすかねぇ。

乙:そういうもんでございますわけだよ。

甲:はぁ。あっしとしては明日のおまんまが食えればいいわけでございやす。

乙:そうだねぇ、次は期待すると良い。とっておきの悪人を見つけてあるからさ。

甲:ほほうそれは良い事をお聞きいたしやした。早速仲間たちに伝えてきやす。

乙:あぁそうだ、今日は飛んで帰ると言い。そっちの方がよっぽど君ららしいからね。

かぁかぁかぁ

いいなと思ったら応援しよう!