はじめての鑑別所
鑑別所がどんな所なのか知っている人はどのくらいいるのだろう。
鑑別所というのは、罰を与える場所ではなく文字通り子どもの心身を鑑別するところだった。
どんな事件を起こしたかということの調査もされるが、本人の資質や経歴、育った環境などを専門家が詳しく調べていくような施設だ。
親は家庭裁判所へ呼ばれ調査をされる。
小さい時にはどんな子どもだったか、祖父母との関わりなどにも遡り、家族構成、育て方など細かく尋ねられる。
親の規範意識の確認だろうか。
暴走行為のビデオを視聴して感想を書くというのもあった。
このように家族の調査や本人の鑑別結果をもとにして家庭裁判所で審判が下される。
主に少年院へ行くか保護観察処分になるかだ。
次男の首をつかんだ先生は鑑別所まで来て謝罪し、次男はすぐに許した。
こんな時代に正面からぶつかってくれた先生だったが春に移動になった。
誠実な先生ほど責任を負わされる。
いつもと変わらない寒い冬で、
次男はしもやけの指で15歳になった。
鑑別所にいても一応は受験生。
勉強などほとんどしていなかったし、どのような審判が下されるかも分からない状況で、先生が願書の書き方を細かく指導し添削してくれて提出することができた。
あとは審判の日を待つのみだった。
私は自宅のベランダから桜の木をいつも見ていた。
桜が咲くまでには全部終わる、あと少し、もう少しといつもいつもいつも思っていた。
…鑑別所での調査結果は親に伝えられるということはなかった。なぜなのか不思議だ。
当時は鑑別結果を聞くという思考もなかった私だが、もし可能なら教えてもらったほうがいい。
鑑別所は非行以外にも一般の子どもの相談も受付けていた。私は無知だった。相談機関や助けがあることをほとんど知らなかった。
子どもの資質や性格に加え、親の考え方や在り方、言動が子どもにどんな影響を与えているのかを知ることは必要だと思う。
こどもが非行に走るのは家庭に原因があることが多いといわれる。当事者としては胸に突き刺さるいわれ方だが、私もそうだと思う。
父親、母親が、我が子を育てる時に起こるさまざまな出来事に対し、なぜそう感じ、考え、反応するのか。
親自身が心の奥の深いところで自分の守ろうとしているものに気づけるといいなと思う。
何が怖いのか。
何に腹が立つのか。
何にざわざわするのか。