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性的指向とは

はじめまして、閲覧ありがとうございます! 無性愛者に興味を持ってくださった皆さまのためにも「無性愛者とは」の説明から入りたいところですが、無性愛者を説明するには「性的指向」の定義を避けては通れません。しばらくご辛抱ください。

性的指向とは、「(ライクではなくラブとして)どの性別を好きになるか」のことです。たとえば、
・男性として男性を好きになる
・男性として女性を好きになる
・女性として男性を好きになる
・女性として女性を好きになる
・男性も女性も好きになる
などがあります。

そして、
・「男性として女性を好きになる」
 「女性として男性を好きになる」ことを「異性愛」、
 そのような人を「異性愛者
・「男性として男性を好きになる」
 「女性として女性を好きになる」ことを「同性愛」、
 そのような人を「同性愛者
・「男性も女性も好きになる」ことを「両性愛」、
 そのような人を「両性愛者
と呼びます。
ここまでは知っている方も多いかと思います。

では「ナニ性としてナニ性を好きになる」のが無性愛者なのかと言いますと、「男性も女性も好きにならない」ことを「無性愛」、そのような人を「無性愛者」と呼びます。

異性愛者が同性を好きにならないように、同性愛者が異性を好きにならないように、無性愛者は同性も異性も好きにならないのです。

…と言い切れるならシンプルだったんですけど!

「性的指向」の定義

アメリカで専門家が使っている「性的指向」の定義をご覧ください(※諸説あります)。

Sexual orientation | An inherent or immutable enduring emotional, romantic or sexual attraction to other people.(生まれつきまたは変えられない、他人に感じる長期的な情緒的・恋愛的または性的魅力)

「情緒的・恋愛的または性的魅力」とあります。ということは、これらの魅力のどれか一つでも相手の性別が決まっていれば、それが性的指向になるわけです。

この定義に沿って、最初のリストを書き直しましょう。
・「異性に情緒的魅力を感じる」
 「異性に恋愛的魅力を感じる」
 または「異性に性的魅力を感じる」ことを「異性愛
・「同性に情緒的魅力を感じる」
 「同性に恋愛的魅力を感じる」
 または「同性に性的魅力を感じる」ことを「同性愛
・「異性にも同性にも情緒的魅力を感じる」
 「異性にも同性にも恋愛的魅力を感じる」
 または「異性にも同性にも性的魅力を感じる」ことを「両性愛
・「異性にも同性にも情緒的魅力を感じない」
 「異性にも同性にも恋愛的魅力を感じない」
 または「異性にも同性にも性的魅力を感じない」ことを「無性愛

極端な話、「情緒的には異性だけに惹かれ、恋愛パートナーにしたいと感じるのは同性だけだが、性的魅力は異性にも同性にも感じない」人は、異性愛者であり、同性愛者でもあり、無性愛者でもあることになります。

sex=セックス?

「『性的』指向」という名前から、性的パートナーの持ち方だけをイメージされがちなこの言葉。「sexual orientation」の訳語だとご存じの方でしたら、ますます「sex」の字面に引きずられてしまうかもしれません。ですが、次のようなコピペがあります。

すげー今頃気づいたんだけど
採用面接にあった「SEX」って欄に「無し」って書いたんだがあれ性別のことだよね

解説するのもヤボですが、性別セックス欄を性行為セックス欄だと勘違いした笑い話です。そう、sexが単体で使われる場合、英語圏では「性別」と解釈されるのが普通です。そしてsexualはその形容詞形、つまり「性別の」。orientationは「物事に対する姿勢」なので、sexual orientationは全体として「性別に対する姿勢」という意味になります。性的パートナーについてだけでなく、もっと幅広い関係性に求める性別というわけですね。
(「性的指向」という訳語が定着する以前には、sexual orientationは「性別指向性」と訳されることもあったようです)

余談

上記のとおり、sexual orientationのsexualは「性別の」を意味しているというのが本来です。ところが英語圏では近年、sexualを「性愛の」と解釈し、sexual orientationの定義を「性的魅力を感じる性別」に限定する動きが見られます(この場合、旧来のsexual orientationは「orientation」と表現されます)。したがって、海外の文献に「sexual orientation」という表記が出てきたら、「性別のorientation」と「性愛のorientation」、どちらの意味で使われているのか気をつけて読む必要があります。

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