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景色の共有

そこに広がる景色をその場にいる人と共有出来ること

すごく幸せなことです。

今病院で夜間アシスタントの仕事をさせてもらっています。病院で働き出してから、生きることについて今までよりも多方向から刺激を受けるようになりました。

病院だから、元気に退院していく人もいればそこが最期の場所になる人もいます。


6月18日
この日は朝から雨がずっと降っていました。
大雨警報が発令させていた地域もありました。

雨だからか、私も朝からやる気がなくてね、
18時からの仕事までなにも予定がない日だったから
ずっと寝てました。なんだか、ぼっーーーとする日で
病院までの道も間違えるくらい。
道中も雨は降っていてワイパーの動きがなんだか忙しく感じました。

18時に着くとすぐに夕食の配膳があります。
一日に飲める水の量が決まっている人がいて、
その人たちの飲水制限表を見てお水を測ることから仕事は始まります。

18時30分には配膳を終えて、
19時10分くらいから下膳を始めます。

下膳の時間ね、ふっと大きな窓から外を見たら
もう雨がやんでいてね、ピンク色をした空がありました。すごく綺麗でね、私のいるところから虹は見えなかったけどどうやら虹も出ていたみたい🌈

私の病棟には大きな窓が2つ。
温度調節の理由でどちらの窓も開けられないけど、
窓越しではなくて生でその空を見たかった。

周りが田んぼで囲まれていて、今は水張りの時期だから
空の色が水に反射して大地までピンクになっていて
遠くの方に目をやると山に雲がかかっていてね、
本当に綺麗な景色でした。



そんな光景が広がっているのに、窓は自分のすぐ後ろにあるのに、見えない見られない人たちがいました。

点滴の関係、自分の意思でもう身体を動かすことの出来ぬ患者さんたちです。

ナースステーションから1番近いところに症状の重い人達の4人部屋があります。その部屋はベットのすぐ後ろに窓があって私からは外の景色がはっきり見えるけれど、その患者さんたちは窓に背中を向けた状態のベットの上にいるから、その日の天気も今日の空が綺麗だと言うことも知りません。

その人たち越しに、私からは見える空に
悔しいという感情を抱きました。


少し、ほんのすこしだけ首が動かせれば。
私が車椅子に乗せてあげられたら。
点滴が早く落ちきれば。
人間、目が後ろにもあれば。


今のこの綺麗な空を見られるのに。


写真を撮って、空を見てもらうことも考えたけれど
院内だから仕事中だからスマホを使うこともできない。
鏡で反射させることも考えた。鏡がなかった。

悔しい。ひたすらに悔しかった。苦しかった。

見せてあげたかった。見て欲しかった。
病棟内の景色が最後になってしまうかもしれないから。


窓と患者さんとの距離はたった数センチなのに、とてもとても遠く感じました。

結局その日の空を見てもらうことは叶いませんでした。

その日の帰り道たくさんの思いや感情が溢れて
雨はもうとっくに止んでいるのに、私の心には雨雲がかかっているようでした。

次の週、病院に行ったらその部屋のひとりの姿がなくて
転院なのか、退院なのか、お迎えが来てしまったのか
看護師さんには聞かなかったけれど、どこか違う、空が見えるところに移っていたらと思いました。


この体験を経て、
人と景色を共有出来ること
見えているものに対して意見を言葉にして交換出来ることの美しさを知りました。

今私の目に見えているものたちはいつか当たり前ではなくなってしまう。

「今日の空はとても綺麗だね」
「そうだね、綺麗だね、あそこ!飛行機飛んでる」

というたわいもない会話もなくなる時が来る。

だからこそ、
景色を共有したい。
対話をしたい。

その日の空をみて顔が浮かんだ人がいます。
あと何回、その人と見えるものがあるのか。
そこに会話があってもなくても、景色に限らず確かにそこにあるものを共有したい。

今あるあたりまえを
あたりまえに感じないくらい
あたりまえに感じたい。

私はこれからも周りにいてくれる人達と
たくさんの
息を飲むような景色を。
言葉を共有し生きていきたい。


今日も読んでくれてありがとう🏄‍♂️🩵
毎日身体が溶けるほど気温が高いですが、
今の時期しか見れないものをたくさん見て大好きな人たちと共有してね💕︎












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