城のある景色の釣瓶落しかな     後藤比奈夫

夕方の5時を過ぎると陽が傾いて西の空が赤く染まり始める。夏の7時に比べるとずいぶん早い。仕事が終わり通勤電車に揺られる頃となる。窓を流れる街並みに目印となる城を確かめるのが習慣となっている。何年も毎日見続けていても、四季を通して日々違って見える。背景となる空の景色が彩りを添え、見飽きることがない。眺める人の心が投影され、戦乱の世をくぐり抜けた城は、凛々しく映る日もあれば優しく慰めてくれる日もある。


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