夏霧にたつぷり濡れる魚のごと 吉原文音

霧は、空気中に含みきれなくなった水蒸気が、小さな水滴となって出てきたもの。雲の中にいるような幻想的な風景となる。山や高原ではよく起きる現象であるが、地上で発生すると神秘的な感覚を生ずる。深い霧の中を歩けば、細かな水の粒が顔や手や足に針のように触れ、長い間霧の中にいると、水に浸かったように濡れてくる。次第にふっと肩の力が抜けて、くねくねと身体をくねらせながら泳ぐ人魚姫になったような感覚に襲われる。