囀りの一羽なれどもよくひびき 深見けん二

犬が好きか猫が好きかと問われると、私は鳥が好きと答える。空をよく見るので、自然と目に入る。見上げる視界に突然なめらかな流線形を描きながら横切り、一瞬にして視線を奪い惹きつける。鳥の大きさや色を識別しながら鳥の行方を追う。落葉した枝にとまり囀りはじめると決定的である。一羽とはいえよく響く。どこにいるかわからないメスに届くよう、全身の筋肉を緊張させ命のかぎりに喉を震わせる。見えぬ相手を求めつつ鳴く。