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『ポラーノの広場』(宮沢賢治)
*2022年3月朗読教室テキスト①ビギナーコース
*著者 宮沢賢治
「何を探すっていうの。」
子どもはしばらくちゅうちょしていましたが、とうとう思い切ったらしく云いました。
「ポラーノの広場。」
「ポラーノの広場? はてな、聞いたことがあるようだなあ。何だったろうねえ、ポラーノの広場。」
「昔ばなしなんだけれども、このごろまたあるんだ。」
「ああそうだ、わたしも小さいとき何べんも聞いた。野はらのまんなかの祭のあるとこだろう。あのつめくさの花の番号を数えて行くというのだろう。」
「ああ、それは昔ばなしなんだ。けれども、どうもこの頃もあるらしいんだよ。」
タイトルの『ポラーノの広場』のすぐ後、通常作者名が書かれる箇所に「前十七等官 レオーノ・キュースト誌/宮沢賢治 訳述」とあり、この物語がモーリオ市の博物局ではたらくキュースト氏という人物がまとめたもの、という体裁になっています。
昔話として聞いていた「ポラーノの広場」が近頃また実在しているらしい、しかもそこへ行くと誰でも上手に歌えるようになるらしいとファッゼーロ少年から聞いた博物局員キューストは、少年らと地図を頼りに森へ向かいます。たどり着いた「ポラーノの広場」は、ほんもののオーケストラが愉快そうなワルツを演奏するのに合わせてみなが踊り出す賑やかな場ではありましたが、主体は「山猫博士」らによる酒盛りの場なのでありました・・・。
広場では登場人物らによっていくつもの歌が歌われ、その歌詞が掲載されているのも特徴的です。ここでは歌詞があるのみでメロディは不明ですが、「ポラーノの広場」の情景を良くも悪くも表しています。
物語の後半で、少年ファッゼーロらは理想の「ポラーノの広場」を自分たちの手でつくろうと誓いましたが、キューストがその輪に入ることはありませんでした。博物局員もやめ、いくつかの仕事を経たのちに、その願いが実現し産業組合を稼働させたことをファッゼーロからの手紙で知ります。そこにはあの歌の楽譜がついていました・・・・。
この童話が公開されたずっと後になって、賢治自筆の楽譜が見つかりました。「星めぐりの歌」と同じく、賛美歌のメロディが元になっているようです。オンラインではこのメロディもご紹介できたらと思います。
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