『春になる前夜』(小川未明)
とあるお仕事で、「日本のアンデルセン」と呼ばれる小川未明の作品を1年ほど読み続けてきました。主に短編が多かったのですが、そこで感じたのは「小川未明のお話はハッピーエンドが多い」ということです。子供の微笑ましいエピソードや四季のうつろい、小さな出来事での喜びなど、いわゆる「古き良き日本」を描いたものが多く、読んでいて心が温かくなります。
朗読教室のテキストを探していても、普段読書をしていても、「傑作には悲しいお話が多い」と感じることが多いのですが、小川未明のこの『春になる前夜』は、ハッピーエンドでもなく、かといって悲しいお話でもなく、自然の道理、なりゆきをそのまま描いたものではないかと思います。物語に登場するスズメは木の枝に止まり、人間達を見下ろしています。そこで何か働きかけをするわけではないけれど、地上にいるわたしたちには見えていないことでスズメの視点からは見えることもあるのかなと思います。わたしたちの日常も、仮に少し上からスズメが眺めていたとしたら、スズメがわたしたちの営みをどのように観ているのかと、自分を見る第三の視点をもつきっかけにもなります。
2月のオンラインレッスンブンガクコースは小川未明『春になる前夜』です。
やわらかな文章に導かれて、穏やかな朗読になることでしょう。朗読が初めての方にもぜひと思います。立春を迎える2月に、ご予約をお待ちしております。