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氷愛をもう一度……

街はこの時だけ静かに時を待つ

高く高く舞い上がる花を見る為に……

美月:うわぁ綺麗  今年も綺麗に上がったね〇〇

〇:…………

上がった時に歓声は全く聴こえない

静かに大きく鳴り響く音だけが2人の時間を奪っていった

美月:お願い。目を覚まして……

今から5年前、まだ〇〇が大学2年生の時〇〇は先輩に誘われあるサークルに入った

その時にいた人が……

先輩:うっす〜 美月〜後輩連れてきた〜

美月:あ!!あの子?!

〇:〇〇です。よろしくお願いします

美月:初めまして山下美月ですっ よろしくね??

美波:梅澤美波よろしくね

〇:よろしくお願いします

美月:ねぇねぇあのアニメ見てるんだっけ??

〇:はい。全巻と1000人しか当たらないフィギュアもあります

美月:え?!あのフィギュア当たったの?! 

〇:はい 

美月:え、見てみたいんだけど写真は??

〇:撮ってないですね。

美月:え〜!家行っていい??

〇:え、いいですよ

美波:ちょ、ちょっと美月

美月:大丈夫だってよし!今から行こ!!

〇:あ、はい

先輩:もうお持ち帰りか?!凄いなぁ、いたっ!!

美波:あんたとは違うから

先輩:男はそれ目当てだろうよ、あっあいつ付き合ったことないんだった

美波:え、そうなの??結構イケメンなのに

先輩:俺が磨いてやったのよ

美波:ふーん

美月:じゃっお先ー

美月は〇〇の左手を掴み走って大学を出た

美月:家まで何分??

〇:5分です

美月:よし!走るよ!!

〇:あ、ちょっと!!

〇〇はこの時だけで青春を感じられた

〇:ここです

美月:はぁはぁ……ほんとに5分??

〇:僕の速さでは、

美月:どんな速度で歩いてんの。

〇:いつの間にか1人で歩き続けてたら速くなりました

美月:はぁはぁ、そう、お水ある??

〇:ありますよ 座って待っててください

美月:わかったぁ あ、フィギュアどこ?!

〇:奥の部屋ですよ

美月:はぁい 

美月は重い身体を持ち上げ奥の部屋に向かった

そこにはアニメのグッズがずらりと並んでいた

美月:うわっ凄い。

〇:お水です

美月:ありがと〜 ん〜うまっ

〇:いつから好きになったんですか?

美月:ん〜1年前かな

〇:なるほど

美月:君は??

〇:連載スタート時です

美月:え、て事はあの激レアもあるの??

〇:はい

美月:え?!いいなぁ 今じゃ絶対手に入らないもんね

〇:すごく高いですよね

美月:そうそう あ、これこれ!!うわぁかっこいいなぁ

〇:ふふっ 良かったです

美月:ねぇ毎日ここに来ていい??

〇:え、まぁ。

美月:お参りしてたらいい事ありそうじゃんっ

〇:フィギュアにですか??

美月:そそ 

〇:あるといいですね笑

美月:あ、バカにしたなぁ〜

〇:してないですよ笑

美月:じゃあ毎朝来るからそこから一緒にいこ

〇:分かりました

美月:じゃっバイトあるから行くねっ またね〜

〇:はい

美月が帰った後も匂いが消えることはなく次の日を迎えた

それから美月は本当に毎朝8時に家に来てフィギュアに一礼し大学を一緒に登校した

その日々は約半年にも及んだ

今や2人は先輩後輩関係なくタメ口で喋り合う仲になっていた

最初は戸惑っていた〇〇も美月がお礼にと週一で朝ごはんとお弁当まで作ってくれる為少し彼女感が味わえて馴染めるのもはやかった

美月:はい、お弁当

〇:あ、ありがとう

美月:ねぇ〇〇 

〇:ん??

美月:今度花火、一緒に観に行かない??

〇:ふふっ いいよ??

美月:ほんと??

〇:断る理由無いからね笑

美月:やったっ よし!学校行くよ!

〇:だからちょっと待ってってば!!

美月:あははは

二人の間にはいつの間にか外見では見えない、心の中で強く硬い物が完成しつつあった

花火大会当日、街はお祭り騒ぎ屋台もずらりと並んでいた

美月:よっ

〇:お、浴衣、綺麗だね

美月:ふふっ ありがと 行こっか

〇:うん

2人は子供のように屋台を楽しみ花火が始まる15分前には席を確保しそこで待機していた

そしてそこは花火から最短、約50m程離れた所だった

さっきまではしゃいでいた空間は一気に氷のように冷めきっていた

始まっても尚2人は喋らずにじっと上の空を眺めていた

そして中盤頃〇〇は美月の左手に手を置き美月は振り向かせ目が合った瞬間

〇〇は想いを大声で伝えるも花火の音で全て掻き消され口パク状態になるも言い終わると美月は微笑んで手を握り返し、い音2回とお音の口が1回動いたように見えた

花火大会が終わるまでずっと2人は手を握り上を眺めていた

終わってもなお行き先が別れるまで手を繋ぎ

美月:ありがとっ 〇〇 またあしたねっ彼氏君っ

〇:うんっ

2人は隠してたつもりなのだろうがずっと口角が上がったまま帰路に着いた

2人は半年かけてハートの氷状を作り上げ関係を築きあげた

翌日美月は嬉しさのあまりみんなに言いふらした為即大学内で噂が広がった

〇〇は友達より価値あるものだと痛感した日だった

美月:ねぇ!〇〇

〇:ん??

美月:ちょっと〜私の話しきいてた??

〇:あ、ごめん聞いてなかった

美月:もぉ〜拗ねちゃうぞっ

そう言って頬を膨らまし可愛こぶる姿……

美月:じゃーん見てっ美月の特製ハンバーグ

〇:ハートのチーズ??

美月:そっ私の愛っ

〇:……ごめん、チーズ苦手なんだ。

美月:え?!嘘?!新しいの作るね!!

少し抜けている所……

美月:〇〇〜一緒に寝よ〜

〇:狭いじゃん

美月:え〜いいじゃんかぁ〜

〇:美月、露出高すぎ……

美月:え、好きじゃないの??

〇:心臓もたん

美月:もぉ〜〇〇ったら〜。可愛いでしょ??

少しでも可愛いと言って欲しい姿

美月:どしたの??

〇:テストが……

美月:あちゃ。頑張ってたのにね。よしよし

大丈夫!!私0点だったから!

〇:……それは大問題よ

美月:すみません。

優しい所も……

全てが   「大好き」

その好きという感情が増えれば増えるほど2人の結晶は固くなり綺麗に光る

だがある1つ、たった一つの些細な事でそれは崩れ落ちる

〇〇と美月が付き合って1年の時美月は就活の時期に入り何とか花火大会だけは来る事が出来た

4月からは大学は一緒に行くも会話は少しずつ減っていっていた

ちゃんと喋るのはこの花火大会が久しぶりな気がしていた

〇:あ、美月こっちこっち!

美月:あ、〇〇

〇:新しい私服??

美月:うん 似合ってる??

〇:すっごく

美月:へへっ良かったっ 行こっか

〇:うんっ

2人は射的、ヨーヨー、かき氷等屋台の定番は全てまわった

去年と同じ席に座り始まるのを待っていた

〇:ねぇ、美月

美月:ん??

〇:今日楽しい??

美月:え??うん

〇:そう

美月:え、どうしたの??

〇:何か笑顔が疲れてるかなって、

美月:そんな事無いよ……

〇:何かあった??

美月:ううん、大丈夫

〇:ほんとに大丈夫?? いつもの美月とは。

美月:大丈夫だって言ってるじゃん!!

しつこいって!!

〇:ごめん

美月:帰る

〇:あ、ちょっと美月!!

美月:ついてこないで!!

〇:………

人との絆は築くのは一生崩れるのは一瞬

この瞬間に2人の中の結晶に亀裂が入った

そこから2人は連絡も取ることも会うことも無く月日だけが経っていた

そして初めての喧嘩から2ヶ月後に美月から連絡が来た

だがそこには…… 

「別れよ」 この一言だけだった

2人の結晶は修復すること無く完全に溶け形すら残らなかった

〇〇は初めての想いで涙が零れなかった

美月:〇〇!!見て!!たこ焼き!!

美月:〇〇!!こっちこっち!!

美月:〇〇!!一緒に帰ろ??

当たり前になっていた美月との時間が終わりを告げまた1人の時間を過ごしていた

美波:は?!別れた?!

美月:うん

美波:何バカなこと言ってんの??

好きだったんじゃないの??

美月:そうだけど……今の私にそんな余裕ないよ。

美波:だからこそでしょ 何のために彼氏が居るの

美月:…………

そして別れた日から2ヶ月が経った日〇〇はアルバイトが終わり帰宅している途中

一人の女性がスマホを触りながら歩いていた

もうすぐで信号というのに止まる気配が無く〇〇は咄嗟に走り出していた

〇:危ない!!

??:?!

その瞬間悲鳴が微かに聴こえ聞き覚えのある声も聴こえた気がした……

そして現在……

美月:〇〇、お願い目を覚まして。

美月はずっと〇〇の左手を握りながら花火を見つめる

美月:去年この景色を見ていたら〇〇と今年も見れてたのかな……私が心の余裕を持て無かったからこんなことに。

あの時救った女性は美月だった

無意識に走っていたのも大好きな人だったから守りたいと思ったから

〇〇は初めて美月を抱きしめ必死に守った

その結果美月は軽傷で済み〇〇は頭を打ち8ヶ月経つも目が覚めずにいる

美月:ほんとにごめんね〇〇、お願い、目を覚ましてもう1回声を聴かせて。

わがままだけどもう一度〇〇の傍で笑っていたいから

おね、がい。帰って。きて。

〇:み、づき。

美月:〇〇?!〇〇!!

〇:僕は。どこにも行かないよ

美月:うわぁぁん!!ごめんね〜!!私のせいで!!

〇:美月泣かないで

美月:ぐずっ。うぅぅぅ

〇:美月??

美月:にゃに

〇:大好きだよ

美月:…………私も大好き、いや、愛してるよ

Fin





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