人は誰でも役者なの
美月:お疲れ様でした〜
撮影を終え帰宅の準備をしマスクと帽子を被りスタジオを出る
時刻は20時を過ぎた頃、アイドル、女優をこなし続ける日々
家に帰るまで気を抜けず怪しまれないように電車に乗り帰宅する
唯一自分をさらけ出せる場所、家
誰もいない、誰にも聞かれない、何をしてもいい
美月:あー!!疲れた〜!! あ、風呂はいろ
風呂に入ると隣の家から歌声が聴こえてきた
その曲は私がセンターを務めた曲、僕は僕を好きになる
この曲は私に向けて書いてくれたと言っていた
何もかも自信がなく自分が大嫌いだった私を好きにさせてくれた曲、そして自分に自信を持てるようになれたきっかけを作ってくれた人がいる
その人も同じ悩みがあった
それが嬉しかったわけじゃない、ただ同じ人間がいた事に喜びを感じた
人は誰もが誰かと同じでいたいと思う
考え方が一緒、行動が一緒が落ち着く
だがそれを除く1人だけの考え方や行動をする人が大きく羽ばたいている
それでも人は新しい扉には手を出さない
リスクが分からないからだ
何度も開いてる扉は過去の経験談やリスクが分かるため把握が出来る
だが新しい扉にはそれがない、だから人は手を出さない
でも私はそれに手を出してみたくなった
完璧なアイドルと唯一無二のアイドルになりたかった
だがその反面LIVEをすると、私を嫌う人達が多く見られた
その文章を見て泣きたくてもアイドルだから泣けない
アイドルらしく振る舞い受け流した
だがその日に私は食欲を無くし周りの人に迷惑をかけた
そんなある日隣の人と出会うことが出来た
今隣で音痴なりに"大熱唱している"人に……
1年前……
美月:はい、はい。すみません……はい。失礼します
はぁ……私だって人間だっての傷つくに決まってるじゃん。
〇:あ、あのぉ。ゴミ捨ててもいいですか??
美月:え??あ、すみません どうぞ
〇:あ、ありがとうございます。
男の人はゴミを捨てて捨て際にこんな言葉を吐いた
〇:仕事ってなんなんですかね 人に好かれるようにするのが仕事なんですかねぇ
美月:え??
〇:あ、すみません。独り言つい出てしまうんです
美月:あ、そうなんですか
〇:お気になさらず、では
私は無意識に彼を呼び止めた
美月:あ、あの!!
〇:はい??
美月:私の事、知りませんか??
〇:知ってますよ、山下美月さんでしょ??
僕一応山下美月さん推しですよ??
そう言ってメガネとマスクを取るとそこには毎回来てくれる 〇〇さんの姿があった
美月:あ、〇〇君?!
〇:あ、そうですそうです
美月:え、なんでそんな冷静なの??
〇:え、いやだって別に芸能人が同じマンションだなんて幾らでもあるじゃないですか
美月:なら部屋は??
〇:501
美月:502
〇:…………ん??え……ちょっと僕の家来てくれません??
美月:え、なんで??
〇:ちょっと試したいことが……
そう言って部屋に戻ると〇〇君はありえない言葉を発した
〇:恐縮なんですが美月さんの風呂場に行かせて貰えませんか??
美月:え、いいよって言うと思います??
〇:じゃあお風呂っていつもいつ入ってます??
美月:いや、言いたくないですね
〇:いや、これは変な意味じゃなくて、僕の歌声聴こえてませんでしたか??
美月:ふふっ、最初からそういえばいいのに
〇:え、だって恥ずかしいじゃないですか
美月:そう遠回しに言う方が恥ずかしいと思うけど
〇:え、全く
美月:あ、そう笑 聴こえないよ
〇:あ、良かったぁ 壁薄くなくて良かったぁ
美月:どうして??
〇:いやぁ、たまにですけど風呂場で歌ったり愚痴を叫んだりしてるので、
美月:例えば??
〇:僕作家なんですけど、わざわざ面白くないとか、絵が雑とかってコメントする奴いるんですよ
だからそいつに向かって面白くないなら読むなよー!とか言ってます
美月:あははは!!
〇:え??
美月:ううん、なんか親近感湧くなぁ そっか〇〇君作家さんって言ってたもんね
〇:はい、一応これでも売れてる方です
美月:私がおすすめしたからじゃん
〇:……ごもっともです
美月:いやぁ、なんかスッキリしたなぁ
〇:あ〜ライブのコメント欄ですか??
美月:まぁ、ね
〇:僕はあのコメント欄見て言いましたよ
美月の努力知らないくせに暴言書くなやーって風呂場で叫びました
美月:ふふっ ありがとっ でもさ、実際そう思ってる人がいるじゃん??
〇:これは僕の意見ですから聴き流すかはお任せします
美月:わかったっ
〇:可愛い……あ、えっと人はどうしても上に立ちたい生き物なんです
自分が上なら見下せる、出来ない奴に文句が言える
自分が上なら自分の思うままにできるんです
暴言吐く人や悪口書く人は目立ちたい人なんです
悪口書いたら人と違うことやってるとか、何も知らないけど顔タイプじゃないから悪口書ことか
結局悪いことしてる人ってのは自分に注目を浴びせたい人なんです
会社や学校、部活、バイト、等あまり思うように動けず怒られたり、上司になれなかったり目立たない人がしてしまう人だと思うんですよね
美月:でもそれって偏見じゃん
〇:そうです。でもそれを否定するのも偏見じゃないですか??
美月:確かに
〇:そう、全ては偏見から生まれたんです
この人はこうじゃないからこうだとか例えば美月さんはあざといからこうだとか
人は偏見で全て解釈するんです
でもそれを信じて傷つついてしまう生き物が人間なんです
嫌い、キモイ、うざい、ブサイク、等マイナス思考を言われるとどうしても抱え込んでしまう
美月:でもそれを解決する方法あるの??
〇:ありません、ただそう思わないようには出来ます
美月:それは??
〇:それは、自分に自信を持つことです
自分に何もかも自信を持てばそんなことを言われても私はこうだからとかと肯定ができるんです
自意識過剰とも言われますが決して悪いことじゃありません
自信を持つということは1番悪口を言われても心が折れない人なんです
そして、強い人間なんです
〇:僕はもう慣れましたけど美月さんはまだ慣れないと思います ですがファン目線から言うと貴方はもう自信を大きく持っていい人だと思います
もう完全にアイドルだし、これからは女優など演技の方にも力を入れていいと僕は思ってます
私はこの時自然と泣いていた
泣いていることすら気づかなかった
それほど私の心は弱っていたんだと実感した
ファンの人から褒められたのも嬉しかったし、何より、自分の弱さを実感する事が出来た喜びも大きくあった
〇:僕はずっと貴方の味方です そんな人は数多くいます
美月:ありがとう……あれ、泣いてる??
〇:あ、え、美月さん!!ちょっとティッシュ!!
美月:あはははは
その日から私は自分に自信を持つようになり女優も両立出来ることが出来た
そして今はもうあの彼は居ない……
事故で亡くなった。今隣に居るのは大学生くらいの人
〇〇さんが最初で最後の歌ってみた動画をその人は爆音で流していただけだった
私も今もその動画を毎日聴いている
あの時休んで会っていなければ立場は逆だったかもしれない
私は風呂から上がり水を喉に流し込むとその動画を私は見た
そして概要欄を見ているとある文章が目に止まった
そこには〇〇くんと会話した時に言った言葉
決して人は強くなんてない、強がってるのがバレていないから強いと思われる。
人は誰もが弱い、だから人は涙を流しまた強がりをする 人は皆役者なのだ と
ふとした会話の時言った言葉を〇〇君は概要欄に宝物の言葉と書いてあった
私は涙を流しある時のLIVEの時に彼の動画を紹介した
美月:この動画1度見てみて下さい、今は亡き〇〇さんの動画ですが私を推してくれていたファンの方でもあります
そしてその翌日ニュースにもなり瞬く間に〇〇君の名は大きく知れ渡った
私は青空に向かって言った
美月:〇〇君また君の名を知る人が増えたよ
これで私を助けてくれた分はチャラだねっ
〇:それは無いですよ〜!僕が生きてる時にして下さいよ〜
そう言われた気がして私はにやけてしまった
そしてまた私は自信もって今日を生きる……
[完]