大好きと伝えたくて
続く人生には幾つもの分起点が存在し
人は永遠に決断と言う試練に迫られて生きている
そして大きな分岐点は人生をも覆す影響力がある
人はその分起点に来た時にどう解釈し、行動するのかが大きな鍵になる
これは2人の人生が分起点によって交わった物語である
社会人になるのは当たり前という時代は今終わりつつあり
それぞれ好きなことを世に発信しお金を稼いでいる人が増え続けている
最初は誰しもお金になんてなるはずもなく苦しい時代がある
でもそれを諦めず続ける人が少しずつ報われていく
〇〇もその内の1人だった
〇〇が目指しているのはピアニスト
夜大きな駅やショッピングモールでピアノを弾き収入を得ている
今は社会人の2割も満たない所、バイトもしながら生き長らえている
決して辞めたいとは思わない、1人でも疲れが取れるのであれば弾き続けたい
だが同じ曲を毎日やるにもいかず弾ける曲数を増やしていく他無かった
上手い下手と言えばどっちか分からないが苦情が来ていないということは下手ではないのだと自分に言い聞かせている
そして今日も17時に最寄り駅 の東京駅に向かった
ピアノは置けるはずも無く毎日トラックに積み下ろしをして演奏している
1人で何もかも用意し19時頃から弾き始める
19時頃と言えば夜でも多く人が集まる時間
〇〇は譜面を用意せず手に置き演奏し始めた
母親や姉からはずっとこう言われていた
「あんたは人を幸せにする力を持ってる、ピアノでたくさんの人を幸せにできる、それは大きな武器なのよ」
その言葉を信じ今も演奏している
〇〇は集中すると目を瞑ったまま演奏する為周りの目や人だかり等把握出来ない
だがいつも演奏終わると同じリズムと大きさで拍手してくれる方が一人いるのは把握していた
でもその人がどんな人なのか分からない
拍手し終わると姿が分からないからだ
〇〇は少し気になりつつもいつもと変わらない音色で駅中に響き渡せた
1曲目と最後の曲は変えず、真ん中の曲を変更して演奏していた
いつも通り3曲披露すると拍手が起こった
今日はいつもより少し拍手が大きく感じた
〇〇はお辞儀をして少し休憩する事に……
フードをしていて全く顔が見えないが女性らしい服装の人が1人歩いてきた
「あの、〇〇さん、ですか??」
『はい、そうです』
「あ、良かった、これ良かったら……」
そう言って渡されたのは1本の缶コーヒーと封筒の紙
少し戸惑い、返そうとすると
「それでは、待ってますので!」
その言葉だけを吐き捨てて走り去って行った
頭の中で整理が追いつかずとりあえず開けることにした
その紙には予約している映画館のチケットが入っていた
しかも1枚ではなく2枚
〇〇はその紙を受け取りため息をついた
『これ、行かないと気まずい奴じゃん。』
少しテンションが下がりその後弾いた曲は暗い曲が多かったのだとか……
そして月日が経ちチケットの日になった
〇〇は早起きをし支度して行先に向かった
〇〇は到着して映画館の外で待っていたが上映時間に近づいても来る気配が無く仕方なく中に入り映画を見ようとするとその日に来ていた服装をしている人が座って待っていた
「あっ、来てくれたんですね」
『2枚入れられてたので、』
「あれ、そうなんですか?!すみません、1枚のつもりだったんですけど……」
『あ、全然大丈夫ですよ。入ります?』
女性は少し微笑んで頷き映画を堪能した
内容は恋愛もので男女が多く見られた
「まだ時間あります?」
『えぇ、まぁ』
「良かった、そしたらちょっとお話ししませんか?」
『いいですよ、カフェ行きます?』
女性は少し考えてとりあえずタクシーに乗りたいといった
未だに顔が分からず名前も知らない
そんな人と今タクシーに乗りどこかに向かっている
気を許したつもりは無かったが4時間しか寝ておらず睡魔に負けて目を瞑ってしまっていた
肩を叩かれ目が覚めるとそこには人目のつかない路地裏で店がひとつ立っていた
「降りましょっ」
『は、はい』
BARみたいな所だろうか、飲食店とは思えないほどの店内だった
「いらっしゃい……しーさんどうしたの」
「ちょっとね、席空いてる?」
「奥空いてるよ」
「ありがとっ」
僕は連れていかれるがまま奥の席に座った
「ふぅ、やっと帽子脱げる〜」
そして女性は帽子を脱ごうとすると
「はい、お水 しーちゃん見ない顔だけど誰??」
「えっと前話してた人」
「あー、ごゆっくり〜 料理適当でいい?」
「うん!!お願いー」
そう言って女性ははけた
「ふぅ、あっまだ名前言ってなかったですね、私白石麻衣と言います」
『白石さん、』
「あ、ご存知無かったですか??私もまだまだだなぁ」
『すみません、テレビ観ないもので……』
「いえいえ、全然っ」
『………ん??白石麻衣、さん??』
「はい??」
『まさか……』
──────────────────
数ヶ月前……
「なぁ〇〇〜この子可愛くない??」
『ん?どの子??』
「白石麻衣って子乃木坂46ってグループの人らしいぜ」
『ふーん 確かに綺麗だね、雅人のタイプ??』
「馬鹿言え、俺のタイプは橋本奈々未一択な」
『ふふっそうですか』
──────────────────
『あっ、芸能界の白石麻衣さん、??』
「一応乃木坂やらせてもらってますっ」
〇〇は身体に衝撃が走った
雅人には興味無いように振舞ったが〇〇は一目惚れをしていたのだ
そこから少しずつ追うようになり密かにファンになっていたのだ
その人が今自分の目の前に居ると再認識し身体が固まった
「知ってくれてました??」
『はい、』
「あ、そうだっんですねっ嬉しいなぁ〜じゃあ話し早いですねっ私がここに連れてきたのは1つお願いがありまして、」
『何でしょうか』
「私、乃木坂卒業しようと思ってるんですけど卒業式コンサートの時ピアノ伴奏として参加して頂けませんか??」
『え……』
〇〇の身体にまた電気が2回流れ込んだ
こんなに短時間で嬉しさと寂しさを体験するのはもう二度とないであろう
〇〇は手に持っていたコップを落としていまい水がこぼれてしまった
「あっ大丈夫ですか?!」
〇〇は何も出来ずただ水が服に染み込んでいった
この絶望が運命となるのはまだ先の話し……
Fin