
ぼくのとくべつなひ
そのひ、ぼくはあさから、じじとてをつないでけーきやさんにいった。
いちごとぷりんがのった、かわいいけーきをかってもらった。
やったぁ!
あとでみんなでたべようね、きょうはとーちゃんとかーちゃんがむかえにくるからって、じじがいってた。
やっとやっと、このひがきた。ながかったなぁ。
かーちゃん、げんきになったかなぁ。
おしょうがつがおわったころ、かーちゃんはきしゃにのって、とおくのびょういんにいった。
よるにはかえってくるねっていっていたのに、そのひから、かえってきていない。
かーちゃん、ぐあいがわるくて、びょういんでしばらくおやすみすることになったんだよ。
とーちゃんがぼくにいった。
そんなぁ。そんなぁ。。。
このところ、かーちゃんはずーーーっとしんどそうだった。
こんこんがくるしそうで、はなみずがじゅるじゅるで、ゆうがたになると「またおねつがあるんだ…」ってぐったりしていて。
じどうかんでも、ずっとますくをしていて、あんまりあそんでくれなかった。
ほいくえんにいる、かぜひっきーが、かーちゃんにかぜをうつしたのかなあ。
ぼくとかーちゃんは、ないたりなかされたり、おこったりおこられたり、まいにちけんかばっかりしているけど。。。いなくなると、さみしいよう。
「かーちゃん、びょういんからかえってきてほしい…」
ぼくはなきそうになりながら、とーちゃんにいった。
とーちゃんは、そうだね、とこまったかおをしていた。
でも、そのときにとーちゃんと、しんどいけどみんなでがんばろうねって、やくそくしたんだ。
そのつぎのつぎのひ、くるまにのって、ぼくはじじとばばのおうちにきた。
しばらく、ここでおとまりだよって、とーちゃんにいわれた。
とーちゃんはおしごとでおとまりがあるから、ぼくとふたりでくらすことはできない。
とーちゃんとばいばいするときは、やっぱりないちゃった。
さみしいよう。かえりたいよう。
でも、がんばらなきゃ。とーちゃんと、やくそくしたから。
きっとかーちゃんも、びょういんでかぜひっきーと、たたかっているから。
じじとばばは、とってもやさしかった。
かーちゃんはあんまりのませてくれないぎゅうにゅうを、たくさんごくごくさせてくれた。
おもちゃやさんで、しんかんせんの「かがやき」と「のぞみ」のぷられーるをかってくれた。しかも、ぴかぴかひかって、おしゃべりもできるやつ!!
ほいくえんにいかなくていいし、おこられることもない。おもちゃのくるまも、おままごとも、ひとりじめできた。
でも。でも。
ひとりは、やっぱりさみしいし、つまらなかった。
はやく、おうちにかえりたかった。
それからなんかいも、なんかいもねんねして、ぼくはずっとまっていた。
そしたら、きのう、じじとばばにいわれたんだ。
とーちゃんとかーちゃん、あしたむかえにくるからねって。
みんなでおうちにかえれるからねって。
ほんと!?やったぁ。
おひるごはんのすこしまえ、げんかんのどあが、あくおとがした。
とーちゃんとかーちゃんだ!!
ぼくはいちもくさんにとーちゃんのところにいって、だきついた。
だっこ!だっこ!
うしろには、かーちゃんもいる。
ますくはしているけど、げんきになったみたい。
よかった。
とーちゃん、ぼくね、がんばったよ!
とーちゃんに、いっぱいおはなしがあるの!!
とーちゃんとーちゃん、とくっついているぼくに、とーちゃんは、かーちゃんにだっこしてもらわないの?ってしきりにいってくる。
うーん。。。いまは、とーちゃんがいいの!!
ぼくはしばらく、かーちゃんのほうをみないようにしていた。
だって。だって。なんか、はずかしいんだもん。。
ひさしぶりのかーちゃん。なんか、きもちがぐちゃぐちゃになるんだもん。。
かーちゃんのかおをみたら、なんでかなみだがでそうなんだもん。。
ぼくがないたら、なきむしかーちゃんも、たぶんないちゃうもん。。
ぼくはそふぁにすわるとーちゃんに、おもいっきりあまえた。
かーちゃんは、すこしはなれたところで、てれてるんだね、いいよいいよってわらってた。
そうそう!かーちゃんはぼくがどんなに、やだ!とーちゃんがいい!こないで!っていってもへいきだもんね!ぼくのきもち、いわなくてもわかってくれるもんね!
でも…やっぱりちょっと、かーちゃんがきになる。
そおっと、かーちゃんのほうをみたら、めがあった。
ひさしぶりの、にこにこのおかお。
そして、ぼくのなまえをよんで、いったんだ。
「おたんじょうび、おめでとう」って。
いやだ。ないちゃう。
きゅうにいなくなるなんて、ひどいじゃないか。
なんで、かぜひっきーなんかに、まけちゃうんだよぅ。
ぼくは、たいへんだったんだぞ。
かーちゃんがびょういんにいったあのひから、きょうでじゅういちにちめ。
ぼくは、ぼくは、ずっと、ずーっと…
「さみしかった…」
やっと、いえた。ことばといっしょになみだがでちゃって、くちゃくちゃのおかおになったけど。
かーちゃんは、がんばったね、ごめんね、ありがとうっていって、なきそうなかおで、ぎゅーってしてくれた。
きょうはぼくの、さんさいのおたんじょうび。
ぼくととーちゃんとかーちゃん、はなればなれだったのが、もういちどさんにんになれたひ。
ちょっとてれるけど、とってもとっても、うれしい。
なのに、なみだがでるのはどうしてかなぁ。
そのあと、ぼくととーちゃんとかーちゃんとじじとばば、みんなでごはんをたべた。
おたんじょうびかいもしてもらった。
ばばが、ぼくがえらんだかわいいけーきのうえに、ほそながいものをぶすぶすさした。これはなあに?
あ!!ひがついた!やめてよぅ!ぼくのだいじなけーきがもえちゃう!
かーちゃんいっつも、ぼくがだいどころでちちちちってひをつけようとしたら、ひはあぶないんだよっていうじゃないか!!
びっくりして、ぼくはなきべそかいた。それをみたとーちゃんとかーちゃんが、ふぅってして、ひをけしてくれた。
よかったぁ。。ぼくのけーき、もえなくて。。
ていうか、なんでみんなわらってるの!ぼくはひっしなのに!もぅっ!!
でも、けーきは、いちごがたくさんで、くりーむがあまくてふわふわで、さいこうだった。だから、ゆるしてあげよう。
かえりみち、くるまのまどからおやまがみえた。
とーちゃんがこどものころからみている、たてやまれんぽう。
おおきくて、ごつごつしていて、ゆきでまっしろで、かっこいい。
きょうはとくべつきれいだねって、とーちゃんとかーちゃんがおはなししていた。
そこから、ぼくはいつのまにかねてしまって、きがついたら、おうちのちゅうしゃじょうだった。
ああ、かえってきた。やっとやっと、かえってきた。
このおうちで、またさんにんでくらせるんだね。
ほっとしたら、やっぱりなみだがでちゃった。
そうそう、そのひ、ねるまえにおしえてもらったんだ。
かーちゃんのおなかに、あかちゃんがいるよって。ふゆがおわって、はるがきて、あつくなるころに、ぼく、おにいちゃんになるんだよって。
うーん。なんか、まだよくわからない。さんにんじゃなくなるの?
かーちゃんからあかちゃんがでてくるのも、ちょっとこわい。
ぼくがうかないかおをしたら、かーちゃんは、またいいよいいよってわらってた。
ぼくのきもち、わかってくれたはずだ。
それから、ぼくはとーちゃんのふとんにもぐって、とーちゃんとかーちゃんにはさまれて、ひさしぶりにさんにんでねんねした。
やっぱり、ねんねはこうでなくちゃ。ああ、おちつくなぁ。
あしたから、またとーちゃんとかーちゃんにいーーーっぱいわがままいうんだ!
1がつ18にち。ぼくがさんさいになったひ。
きょうはとびっきりの、とくべつで、たいせつないちにち。
以上、息子になったつもりの母による妄想日記でした(笑)
以前書いた、この騒動のときのものです。
イヤイヤ期真っ盛り。私には「かえってこないで!」「しゃべらないで!」等々大層横暴な息子なので、所々私に対して上から目線な書き方をしています。あながち彼の心の声と相違ないでしょう(笑)
ですが、このときばかりは本当によく頑張ったと思います。
これを書いて、私もいつもより少し息子に優しい気持ちになれました。
泣きながら書いたことは言うまでもありません(笑)
実はこのエピソードを、所属しているオンラインサロン「京都暮らしの編集室」で知り合ったまめまめこ(にう)さんに話したところ、素敵な短歌にしてくださいました。
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この短歌を聞いて、そのときの息子の表情や自分の込み上げてくる気持ち、いろいろなものがはっきりと蘇ってきました。
そうか、息子が発した「寂しかった」の一言が、こんなに大きな意味を持っていたのだなぁと再確認しました。
短い言葉の中に、人生の大切な瞬間が、ぎゅっと詰まっていて。とても嬉しかったです。
この短歌はこれからも、私の心のお守りになってくれると思います。
まめまめこ(にう)さん、本当にありがとうございました。
ご縁に感謝いたします。
最後に。
息子はこのときのことを、そのうち忘れてしまうのかもしれませんが。
いつかこの文章を、読んでもらえたらいいな。
そのときにどんなクレームを受けるのかを楽しみに(笑)、これからも小さな毎日を積み重ねていこうと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。