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フィルムなんてやらなきゃ良かった

出会ってしまったが故に、始めてしまったが故に、幸せが故に、失う怖さとか、消費するモノやカネの量に悩んだりして、いっそ出会ければよかったなって、出会ってなければこんなことで頭を悩ませたりしていないなって思うことって、22歳にもなればまあ、いくつかは経験したことなんだけど、己の人生におけるその最たる例がフィルム写真である。

兎にも角にも、お金がかかる。高校生の時1000円札を出してお釣りが来ていた写ルンですは、今や2000円弱で、写ルンですとかいう気軽なネーミングではなくて、写ルンでございます…とかそういう、荘厳な感じの名前に変えた方がいいんじゃないかってくらい値上がりしている。あのチープな操作性で2000円もかかるのってなんか、高尚なままごとしてるみたいで、アホくさくて最近はめっきり使わなくなった。

写ルンですで撮った高校生活
写ルンですで撮った登下校の道

かと言って、じゃあ辞めました〜!!!と簡単に辞める訳にはいかず、というかそれは、辞められないに近しい。何故か?出てくる写真が良いから。

クズ男と付き合ってるみたい。コスパ悪くても、タイパ悪くても、辞めなよって言われても辞められない。だって好きなんだもん。え?今月の煙草代?いいよ払うよ。

私が最近ハマっている中判のフィルムカメラは、16枚しか撮れない。

今Amazonで調べたら、フィルム5本セットで、14,180円(Portra 400)。つまり、1枚あたり約180円。バカすぎる。ここに、現像+データ転送代、合わせて大体1400円を上乗せして約194円。アホだろ。1枚だぜ。1回ボタン押すだけで200円。
やらない方がいいんだって頭ではわかっていても身体は止まらなくて、シャッターを何度も切って、震える。大袈裟じゃないよ。だってこの人差し指、押さなかったらグミ買えんだもん。



200円かけてるなんて、本当に馬鹿だとしか思えないけど、

でも、それでも、仕上がりの写真を見たら、黙らせられる。
いいから。黙って見ろよ、黙れ。なあお前、俺に金かけてるの間違ってないよ。
って言われてるみたいで悔しい。辞めたいのに、足を洗いたいのに、そんな写り見せられたら、一体誰が辞められるんだろう。一体誰が離れられるんだろう。本当に本当に大好き。

他のすべてがなくなったって、写真さえ、フィルムさえ、残ればいいって思っちゃうくらい、好きなもの。世界でいちばん大切なもの。他の何にも誰にも変えられないもの。
恋は盲目。私はずっと、他のものが目に入らないほど、一般論に基づく正しい判断なんてできなくなるほど、フィルムに恋をし続けていて、一生足を取られ続けている。足を取られている私の、奇妙なダンスを笑うように、仕上がる写真を見てまた今日も、ため息をつく。

明日もまた、シャッターを切って財布が薄くなる。その繰り返し、でも振り回されるのも、悪くないねって。そんなのただの現実逃避だ。わかっている。本当に最低最悪な趣味だ。早く辞められますように。こんなの、やらなきゃよかったって、本当は思っていないこともきっと、見透かしているんだろう。


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