「カブールの幽霊 in 下町リレー展」と、戦場に灯る小さな希望の光[2008・1〜2]

1月×日
ほとんど立ち寄らなくなった旧事務所に年賀状を取りに行ったついでに、近隣にある目黒区美術館『目黒区の新進作家—七人の作家、7つの表現』へ。タイトルの通り、7人の目黒区出身・在住の作家による展覧会。石川直樹さんの写真が目当てで行った。最近では探検家よりも、写真家としての活動がむしろ有名。7人の個性があまりにもバラバラで、作品によってはひとつの場所でじっくり見たいと思えるものもあった。目黒区の銭湯を左右対称の構図で見せていく屋代敏博の写真が面白かった。「目黒区の…」と謳うからには、この人のように地域と結びついた表現をもっと見てみたいと思った。直島とか、大竹伸朗にとっての宇和島みたいな。

1月×日

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かつて仕事でお世話になった人の同級生が主宰する『カブールの幽霊 in 下町リレー展』へ。最終日に滑り込みセーフ。谷中〜根津〜千駄木の複数の会場で、アフガニスタンの首都カブールの子どもたちが描いた幽霊の絵と詩、関連作品を展示していた。主宰の陳さんは自ら興したNPO「Like Water Press」のメンバーとともに、9.11以降戦乱に巻き込まれているアフガニスタンを何度か訪れ、現地の子どもたちに自作のアニメーションを見せる「ファンタジー映像キャラバン」という上映会を行っている。

アフガニスタンの子どもたちが描く「幽霊」とは、戦争のただなかにいる彼らの目に映る爆撃後の凄惨な光景や、恐ろしい軍人、爆弾で体の一部を失くしたり正気を失ってしまった人々の姿、など戦争がもたらしたあらゆる恐怖や災厄のメタファーなのだが、カラフルな色で描かれたそれらの独創的な幽霊たちをみていると、戦争の悲惨さとかアフガンの悲しい現状などはどこかに吹き飛んでしまい、不思議とやさしく前向きで明るい気持ちにさせられた。夢や希望が胸いっぱいに満ちてくるのを感じた。不謹慎だろうか? それこそが子どもたちの望みであり、陳さんたちの願いではないかと、ぼくは勝手に思ったのだ。自分の最近の興味ともリンクしていて、不思議な縁も感じられた。会場にあった募金箱にささやかな有り金を寄付し、手作りの画集や手記を買った。

陳さんたちの活動には共感できるところが多く、できることで何か力になれたらいいなと思っている。

1月×日
吉祥寺のにじ画廊『映画の中のリトグラフ3人展』。映画『人のセックスを笑うな』の登場人物の作品という設定で劇中で使われた、芳野、マツモトヨーコ、石坂しづかの3人のリトグラフの展示。石坂さんとは以前から面識があった。雑誌『Fu-chi』の表紙などでよく見ているせいか、やはり目によく馴染む。リトグラフについていろいろ教えてもらった。Macではできないのかなあ…。

2月×日
展覧会のはしご。まずは見本帖本店『クリエイター100人からの年賀状展 vol.3』。1年目のVol.1以来。内容よりも宛名面に書かれた住所が気になってしょうがなかった。デザイナーの多くが神宮前や青山近辺に事務所を構えている。そこまでの一等地じゃなくとも、なるべく都心に近い/アクセスしやすい場所に「窓口」としての事務所を設けておくことは、こういう職種において必要なんじゃないかと改めて思ったりした。

そのまま歩いて竹橋の近代美術館『わたしいまめまいしたわ 現代美術にみる自己と他者』へ。閉館30分前だったので、駆け足になってしまった。こういうコンセプトありきで、それに関連する作品を集めていくような展示はわりと好きだ。考えた人(キュレーター)の頭の中を推理していくのが興味深い。あまりに早足だったので断片的にしか覚えていないが、数百通りに変装・メイクした姿を証明写真に淡々と記録する澤田知子の作品と、世界の4都市の路上で直立する女性(本人)を背中から撮影した(各都市での人々の反応が面白い)キムスージャの映像作品が特に印象に残った。作品を見ているつもりが逆に、作品の方から自分を観られているような感覚にとらわれてしまった。服部一成デザインの図録を購入。

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続いて初めてのGallery KoyanagiでHanayoの写真展。入口がわからず数分探した。疲れていたからか、作品はあまり心に響かなかった。マルチ・タレントとしての花代は嫌いではない(とくに歌が良い)。

 
――2010秋以降の展覧会ツイートを、こちらのハッシュタグ #gbiyori に残しています。

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