ギャラリーで、また会おう。[2020・3/4〜]
中国の小さな市場から広がったといわれるウイルスの種が1月、海の向こうでひとつの地域を(肺)炎で焼いた。それは2月に入ると一隻のクルーズ船とともに、日本にも身近な現実として上陸を果たし、3月から4月にかけては、健康や生命だけでなく世界中の人々の自由な活動をも奪い去った。その実害は、2枚の布マスクごときで守ることのできるレベルをはるかに超えるものとなった。
2月中旬に所要で神保町に出かけて以来、仕事などの数日を除いてほとんど自宅に引き篭もっていた。2月下旬、デザインに関わった林立夫さんの著書『東京バックビート族』の刊行イベントが延期になったくらいの頃から、電車に乗って街を自由に出歩くことが少しずつ恐怖へと変わっていった。日々深刻さを増す世界各国のニュースも不安を煽っていた。こんな様子では展示を観に行くのも難しいと身体が勝手に判断し、自主的にギャラリー巡りを休止することにした。3月までは電車が普通に混雑していて、人々の間にも新型コロナウイルスをめぐる温度差がまだあったと思う。
4月に入って東京を含む7都府県に非常事態宣言が発令されるに至り、それまで営業していたギャラリーや美術館も次々と休業を決めた。中止や延期を余儀なくされる展示も沢山出てきた。仕事などで関わった作家たちの展示も、軒並み中止や延期となってしまった。よく報道に出てくる、感染者数を示す対数グラフ。1か月前には想像もしなかった危機感があのグラフと同じように、短期間に急激にせり上がっていくのが感じられた。
ひとつの展示を開くまでに、何か月も前から周到に準備を進めてきた作家たち。自分も今まさに、このコロナタイムを機に、作家としての初めての個展の企画を進めているところだ。助走まで含めると何年〜何十年と温めてきた企画でもある。そんなふうに長く待ち焦がれた晴れの舞台がこんな形で消失してしまうという冷酷な事実に、これまで沢山の展示から感銘を受けてきた自分も、共感してやりきれない気持ちになってしまった。
これから行くかもしれない、といういつもの視点からは何も残す気になれず更新を休止していたが、そんな作家たちの無念な思いにいくつか触れたのをきっかけに、この時期に行きたかった展示(本当に楽しみにしていた展示が沢山あった)をリスケジュールも含めて、ここに記録しておこうと思い直した。
延期でも中止でも、生きて元気でいればまた必ず開けるチャンスはある。この期間中にオンラインで観られるという展示企画やアーカイブをいくつか体験してみたけど、リアルな空間での展示作品が発する空気の重みや質感にはどれも到底敵わなかった。だからこそ、ここですべての作家やギャラリーに向けて言いたいことは、「うちで観よう」よりも、「ギャラリーでまた会おう」なのだ。
ギャラリーで、また会おう。
上でも短く触れたように、2年位温めてきたイラストのプロジェクトが、コロナウイルスがくれた休み時間の恩恵により劇的に進み、第一弾となる作品集(ZINE)の方向性がほぼ固まるところまで来た。上は、その表紙に使われる画像(タイトルや文字要素も既に確定済み)。これから開く予定の個展に向けて、日々いろんな人(いままでお世話になった方、これからお世話になる方々)とやりとりしながら、一歩ずつ一歩ずつ、かたつむりのスピードで進めている。
このプロジェクトについて考え、人と話し、実際に手を動かすことが、この先の見えない状況をやりすごすための希望の光になっている。かすかな光を頼りになんとか生き延びて、みんなとまた会いたい。
P.S.
音楽や映画(ミニシアター)への支援を目的とする署名や基金、クラウドファンディングが続々と立ち上げられる一方で、中小のギャラリーなどを支援する活動は現状まだ見当たりません。原宿のシーモアグラスなどのように、実店舗が閉店の間はネットショップの商品を買うことが直接的な支援につながるかと思います。
ギャラリーでまた会いたいと強く願う一方で、この状況が長く続く場合のシナリオを、作家もギャラリーも念頭に置く必要が今後は出てくるのかもしれません(絶望ではなくある種のお守りとして)。
>>Cafe SEE MORE GLASS 通販部
>>HBギャラリー Online Shop
>>ウレシカ 通販サイト
etc…
[20/04/22追記]
>>「絵本」や「子どもの本」と近しい独立書店&ブックギャラリー&ブックカフェ リスト
絵本編集者の山縣彩さんがまとめてくださった、全国の子どもの本を扱うお店のまとめ。
オンラインショップや店舗ごとの独自の取り組みも、リンクで紹介しています。