虚業と実業のかさなりがうみだす世界
僕がまだ新人としてコンサルタント会社に勤めていた頃、お客さまに何度かこんなことを言われたことがあります。
「あんたらの仕事は虚業や。頭はええかしらんけど、実業として我々がやってる仕事のことをやるチカラなんてあらへんやろ?」
初任地は仙台なので、こんなべたな関西弁で言われたわけじゃないのですが、皮肉たっぷりに言われたこの言葉。悔しさに歯ぎしりしたこともしばしばです。まるで詰められるように、嘲るように言われた思い出は、その後もぼんやりと心にささっていました。
だからこそ、いまこうしてプラントエンジニアリングのお仕事をやりつつ、コンサルタントとしてのお仕事をしてる、ってのがあります。忙しくなっても、切り替えが難しくっても、意地でもやってやる。と。
ただ、こういう仕事のスタイルは、とてもメリットがあるのです。
ひとつはお客さまとの共感。
もうひとつはお客さまの理解。
やはり、自分が実業を手がけるからこそみえるものは多い。現場にたち、プロジェクトをコーディネートし、職人と話し、CADをひく。そんな中にひそむ悩みと進化。理想と現実。向き合うからこそ、せまってくるかたちがある。そんな自分だからこそ、耳を傾けてくれる方も多いように感じます。
冒頭のお客さまの言葉もどこか真実なんですよね。
ところで編集学校で学んだ大切な考え方に「インタースコア」があります。これは、2つ以上のスコアに注目して見方を重ね合わせることでこそ、新しいモノやコトが生み出される、という方法。
僕にとっての二つのスコアは、エンジニアリングとコンサルティングであり、水と人であり、異なる世界のソリューションなんだなと、最近ぼんやりと実感しはじめています。
いまならあのころのお客さまに胸張って言えます。
「実業を背景にした虚業は、もう実業みたいなもんでっせ」
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