【27日】「うっせぇわ」は極めて静かである
─執筆者 國井─
Takaさん、歌の紹介をありがとう。この歌の歌手を僕は知っているよ。「うっせぇわ」という挑発的なタイトルを社会に叩きつけたAdoさんでしょう(作曲はsyudouさんという身元不詳の別の人らしいね)。
この歌、1.4億回も再生されているらしい(6月2日現在)。歌詞から察するに、お利口さんで生きてきた主人公が、凝り固まった社会を切り捨てるというもの。自らを、そんな社会に対地して「現代の代弁者」と語る。
唸るような歌い声が作り出す世界観がなんとも魅力的だ。歌っているのが女子高生であるギャップも、現代社会のアンチテーゼとして強いメッセージとなる。個人的にこの歌がお気に入りなわけではないが、若者が生きがいいのはよいことだと思う。
だが最近、あるCMを目にした。以下のリンクからぜひご覧いただきたい。
彼女はあらゆる軋轢を「うっせえわ!」と一蹴する…はずではなかったのか…?それがいつしか、クソつまらない商業主義の替え歌へと変わってしまったのだ。Adoさん風に言えば「うっせぇ」CMだ。反骨精神は全て丸く削り取られ、カップラーメンを「うめぇ、うめぇ」と食べる歌を歌ってほしいと依頼が来たとき、担当者は一体何を考えていたのだろう。そもそも、なんでこんなオファーしようと思ったのか。
芸人やyoutuberがパロディにして陳腐になるのも残念だ。尖りに尖って世間に抗し続けるだけのパワーはこの歌からなくなってしまった。いつか思い出して後悔する中二病の歌になってしまったのだ。ちょうど先日、この交換日記であがった「ファッション」のようなものだ。
この社会にはもう、思想はパワーを持たないのかな。「うっせえわ」と題された一人の女子高生の叫びは、極めて静かに消えていってしまったよ。