信じるな、疑うな
おやおや、何をそんなに焦ってるんだい?
え? 頑張らないと認められないって?
承認欲求ってやつかい。それも悪くないねえ。
でもね、あんた。
認めてもらおうとする相手を間違えちゃあいけないよ。
あんたがとった行動は、認めるに値するんだろ。
その行動が善であるってえのは、あんたの価値観に基いてんだろ。
他人様がそれを善しと思っているかどうかなんて、わからないじゃないか。
あんたと同じかもしれないし、違うかもしれない。ちょぴっと同じでほとんど違うってこともある。
それなのに、みんなにあんたのことを認めろっていうのは、土台無理な話じゃないかい?
あんたの価値観はあんたが持ってるんだよ。
トートロジーっていうのかね、こういうの。いや、洒落た言葉使っちまったね、へへ。
まあとにかく、自分で善しと思ってることをしたんなら、それを完璧に認められるのはあんただけなんじゃないのかい。
昔のマラソン選手みたいに、自分で自分をほめてあげりゃあいい。
それができれば苦労はないって?
だったらあたしが認めてあげるよ。
あんたはあたしで、あたしはあんたなんだから。
はいはい、よく頑張りました。いい子いい子。ナデナデ。
さあ、どうだい?
おや、なんだか不満そうだね。
なに、あたしじゃダメだって? まったく失礼しちゃうね。
あんたはあたしで、あたしはあんただと言ったろ。
そうかい。あたしを信じないなら、あんた自身も信じるな。
吐きそうになるくらい自分を疑ってみ。
疑い尽くした先に何があったか、見つけたらあたしに教えておくれ。
それまでのあいだ、あたしはちょいと冬眠することにするよ。
なんだか今年は冬が早そうだからねえ。
シーユー!