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そのバスは力強く上る上る【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から4】

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都バス「梅76甲」系統の車窓から
青梅市内を運行する都バス「梅76甲」系統は、都バスの最高地点「上成木」停留所へ向け、くねくねとした道を上ってゆく。窓の外には、都心の都バスには見られない、緑あふれる光景が広がっている。

 「みんくるガイド」は、都バスの営業所・支所・車内などで無料配布されている路線案内である。これには、一部の出入庫系統を除く都バスの全系統が色分けされて記載されており、運行頻度ごとに太さを変えてあるなど、視覚的にも分かりやすいものとなっている。皇居を中心とした23区内の路線図を裏返しにすると、都バスの乗り方や運賃制度の説明とともに、「多摩地域都バス路線案内」の項目が現れる。
 多摩地域の路線図を見ると、実はかなり広範囲の自治体(一部は埼玉県)にも都バスが乗り入れていることが分かる。多摩地域の路線図には「都バス最高地点」という注釈があり、前々から気になっていた。今回はこの場所へ行ってみることにした。
 JR青梅線宮ノ平駅から徒歩10分ほどの場所にある裏宿町。ここから発車する梅76甲系統、上成木行に乗車するのだが、本数が少ないので注意が必要である。梅76甲系統は、裏宿町から6停先の青梅駅始発の便もあるが、これを含めても、上成木行は一日4本(全日)という、貴重な路線なのである。
 裏宿町を発車した梅76甲系統のバスは、青梅駅、東青梅駅を経由し、商店街や住宅街を抜けていく。青梅駅付近には、観光振興を目指したレトロな映画看板が多数掲げてあり、車窓が楽しい。柳川を過ぎると、フリー乗降区間となる。
 フリー乗降区間では、原則として停留所以外でも乗降ができる。23区内の都バスにはない仕組みである。新吹上トンネルを抜けると、一部の便を除き、バスは北小曽木停留所まで進んで折り返し、再度トンネルの出口付近で成木街道に戻る。
 ぐいぐいと力強く、坂道を上るバス。右を見ても左を見ても緑色が映えている。紅葉の季節にはどのような色彩になるのだろう。雪が積もると、雰囲気はどう変わるのだろう。都バスの車窓から自然を見ることに慣れていないため、目の前を木々が流れていくのが新鮮だった。
 終点上成木に到着すると、目の前には静寂と清流があった。都バス最高地点の標高は約300メートル。「みんくるガイド」を見ると、ここから高水三山ハイキングの登山口まで徒歩1分とのこと。調べると、上成木から標高700メートル級の高水三山(高水山、岩茸石山、惣岳山)を経由して御嶽駅まで、徒歩5時間ほどで到達できるそうである。
 「次は登山道具を持って都バスに乗ろうか」。ふと、そんな気持ちが湧いてきた。山の空気の魔法だろうか。

都政新報(2017年11月10日号) 都政新報社の許可を得て転載