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映画『アディクトを待ちながら』    私も「しらふ」を続けます

初日満席完売!

映画『アディクトを待ちながら』2024年6月29日(土)K`s cinema他で全国公開が始まります。初日と2日目は、予約開始当日に満席完売という注目の作品です。

アディクトとは、依存症のこと。アルコール、ギャンブル、薬物、恋愛、性、買い物、インターネット、ポルノなど、依存する対象は、世の中に溢れています。依存症に馴染みがない人にとっては、「依存症は回復困難な特殊な人」というイメージがあるかもしれません。しかし、この映画では、そんな先入観は吹き飛んでしまうでしょう。


予告編(YouTubeリンク)
https://youtu.be/QJ2qo6zONPQ
公式SNS
★Web
https://www.addict-movie.com
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@addict_0629
2024年6月29日(土)から
新宿 K's cinema より、全国順次公開決定!

「依存症は回復できる」

日本では、依存症の自助グループの取り組みについて映画で描かれたのは、この作品が初めてだそうです。実際の依存症当事者とその家族の熱演とリアルな言葉から、「依存症は回復できる」「依存をやめ続けられる」ことがわかります。依存症とその家族も大勢出演したパワフルなエンターテイメント、ぜひ全国の劇場でご覧ください。

映画『アディクトを待ちながら』

私も依存症だった。

私自身が性被害後の複雑性PTSDで、性的自傷から逃れるために伴う様々な依存症で苦しんだ経験から、東京都内で性被害者のための自助グループとグルーミング被害女性専用のシェルターを運営しています。PTSD症状の苦しみを手放すため、多岐にわたる依存症に苦しむ人たちと回復の取り組みを行っており、この作品を観たことで、私も依存症と闘い続ける、しらふを続ける勇気が出ました。
https://note.com/utss2020/n/na6e7a5516737

映画『アディクトを待ちながら』は、フィクションなのにノンフィクションでもあり、私は、報道試写会で画面に釘付けになり、上映終了後、会場は大きな拍手に包まれました。依存症に悩む人や家族だけでなく、これまで、依存症とかかわりがなかったという方々も楽しめるエンターテイメント作品です。

主演の高知東生さん

インタビュー


以下は、2024年6月18日、都内でのインタビューを書き起こしたものです。
(聞き手 郡司真子)
私自身も様々な依存症で苦しんだ経験があり、現在、性被害者の自助グループを主宰しています。今回、自助グループのメンバーだけでなく、幅広い方々にこの映画を見ていただきたくて、お話をお伺いします。よろしくお願いします。

◉自助グループによるエンパワメントの必要性
プロデューサー田中紀子さん

田中紀子さん


依存症になっていく背景というのは、特に子ども時代、自分がどうすることもできない、周りの大人たちに従って生き延びる方法がない、さまざまな周りの大人たちの関係に従って環境に抗うことができない、そういう背景がある人たちに起きているということに、目を向けることが大切だと、これまでも訴えてきました。
依存症になった人たちを叩くだけでは、何も変わらないと考えていて、そこからでは依存症の再発防止に繋がりません。
依存症の回復に必要なのは、健康的な人間関係の繋がり、かかわり、安全な居場所、役割を与えられることで、なおかつ、「依存症は回復できる」ということを伝えたいと思います。
これまで依存症が描かれた映像作品では、どうしようもない部分だけが描かれていて、なぜか突然家族の愛情を知った時に、急に回復するというような、そんなことないだろうというような描かれ方ばかりでした。依存症の回復プロセスが、映画で描かれたのは、実は、初めてなんです。依存症は、急に家族の愛だけで回復するというものではないんです。この作品では、自助グループによるエンパワメントによって依存症が回復していくということを伝えたいです。

◉ひとりじゃないよ、応援する人がきっといる。

ナカムラ サヤカ監督

ナカムラ サヤカ監督


依存症自助グループの力もあって、この映画には、依存症の方だけでなく、家族の方々もたくさん出ていただいています。私は親族の中に依存症の人がいますが、依存症の方だけでなく、自助グループや家族だけでなく、きっと他にも仲間がいるよと、私は思っているんです。依存症に関係ない人でも、心の中で応援している人もいっぱいいるよというのを描いたつもりです。これからも依存症の人を私は応援していくし、これまで関わりがなかった人でも、回復を応援している人は、きっといる。ひとりぼっちの夜が明けることをわかって欲しい。孤独に陥りそうになった人に、一人じゃないことが伝わると嬉しいなと、思っています。


◉自助グループの仲間たちの中で、自分が病気だと認めることが転機に
高知東生さん

高知東生さん

薬物をやめ続けることができるかが私の人生において大切なことです。人生の汚点となったきっかけ、自分自身の幼少から歪んだ認知を自分で作り出してしまったことや、ありのままの自分のことを言語化していくことで、共感できる仲間たちの中で、自分が病気だと認めることが転機になりました。振り返ってみて、自分の癖に向き合って、改善して、それをとらえながら、生き直しに向かって、自分の悪い癖が出ないように生きていくことで、自分の視野が狭かったことに気づきました。強烈な寂しさから、暖かさを求めてしまうことで薬物に繋がってしまいました。しかし、依存症から回復して、自分に向き合ったことで、どれだけ人を苦しめ、悲しませる思いをさせたか、わかりました。そのことを考えると、とても苦しくなります。自分を責め続けました。しかし、自助グループでは、悪かった見えていなかった自分のことに向き合って、許せるようになりました。人生の成長と償いについて考えることができました。私は、死ぬまで自助グループに通うおうと思います。今は、人の役に立つことが最大の償いだと考えています。自助グループでは、これまで気づけなかったことを気づかせてくれました。今、自助グループで繋がっている人たちとの関係を大切にしていきたいです。

◉多くの人が依存症と地続きであることに気づいて欲しい
(郡司真子)
今、渦中にいても、自身の依存に気づいていない人にも、幅広い方々にも、この作品に触れていただきたいと考えています。



田中紀子さん
私は、ギャンブル依存の夫に貢いだり、それ以前にも、男性に散々貢ぐようなことをやってきたわけだけれど、自分で選んでやったわけじゃない、そうすることでしか生きられなかったというか、そこにしか存在意義を見つけられなかった、自分を犠牲にすることでしか生きる場所がなかったということを自分で認めるのは、とっても辛かったけれど、回復してみると、そうやって生き抜いてきた自分はすごいなって、思えるようになったんですね。その時は、これで良かったんだなっていうふうに。私たちが、回復者が自分の生き方をちゃんと言語化できると、それを、発信を恐れずにしていくっていうことが大切なんだと思います。依存症について、どんどんエンターテイメントで表現できるようになっていくことが必要ですね。これから先、依存症について、たくさんの作品が生まれ、多様な自助グループもできると思います。日本で自助グループを扱った作品は、初めてですが、海外には、自助グループに関する作品は、とてもたくさんあります。
依存症って、凄く特殊なマイノリティの人たちかと思われがちですが、実はそんなことなくて、ギャンブル、クレプト、性依存、アルコール、物質依存なども含めたら、人口の大部分を占めるんじゃないですかね。
過去にあったことを言語化していく、恐れずに発信していく、エンターテイメントとして発信できることは重要ですね。
この映画は、つながりによって人はどう変わっていくかを描いた、日本で最初の映像作品です。社会には数々の依存症があり、けして依存症はマイノリティではありません。そのことがわかると、たくさんの人が声をあげやすくなり、発信されやすくなると思います。私たちは、Twitterドラマから発信して、これまでも多くの人に届けられたと思いますし、これからも、発信を続けていきます。

ナカムラサヤカ監督
自分に関係ないと思っている方々にきちんと届けるためには、きちんと面白くして、自分に関係あると思っていただけるようにしなければならないです。観た人が、画面に釘付けになることで、自分も登場人物になった気持ちになるんです。「90分で人生を変えます!」という作品を作ってきたように、私たちは、エンタメのチカラで発信していく、退屈するものを絶対作らないんです。この作品も、主役の高知さんがなかなか出てこないなと思わせて、観る人は作品に引き込まれていきます。
エンタメの力を使って発信するためにTwitterドラマを作ってきました。今はインターネットで多くの方々に届けることができる時代になりましたね。今回の作品を観て気づきを得た人が、自分で発信することもできますね。

2024年6月18日都内にて

インタビューを終えて

私は、放送記者経験やドキュメンタリー制作に関わってきたことなどから、ノンフィクションへのこだわりが強かったのですが、映画『アディクトを待ちながら』で、フィクションというエンターテイメントのパワーに圧倒されました。この映画の成功は、「依存症からの回復」という難しいテーマをより多くの方々に届けるために、エンターテイメントは、とても効果が高いことを実証するでしょう。ナカムラサヤカ監督や制作に関わった方々が、子育てと撮影を両立させ、作品作りに挑んだというのも、いまだにホモソーシャルな映画界において、とても画期的。今後の映画制作現場が変わるきっかけになって欲しいです。

2024年6月26日 
フリージャーナリスト 
性暴力被害者の会 代表 郡司真子

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