ミニレクチャー③「行動活性化」
東京大学相談支援研究開発センター/ピアサポートルームは、東大の構成員が長期休暇中の生活リズムを維持しながら運動不足を解消し、また健康的に新学期を迎えるために、2022/2/14〜3/24の平日にオンラインエクササイズというプログラムを開催してきました。
ヨガやピラティスのLIVE配信など曜日ごとにメニューは異なり、木曜日には相談支援研究開発センター等の先生方による、健康に関するミニレクチャーが行われました。その内容は非常に参考になるものであったので、今回はミニレクチャーの要約とピアサポーターの感想を公開します!
今回は3月3日に行われた、総合窓口の若杉先生による「行動活性化」というテーマでのミニレクチャーの紹介です!
レクチャー内容の概要
1.気分にかかわらず活動する
落ち込んだり心が疲れたりしている時、「体が重いから体を休めないといけない」 「やる気が出ない」と考え、何もしないでいることがあります。しかし、色々なことが頭に浮かんでかえ返って辛くなることはありませんか?
そういう時は体を動かして、楽しかったり達成感があったりすることをすると気持ちも晴れてくることが多いのです。「元気があれば何でもできる」ではなく、「何かをすれば元気も出てくる」。やる気になるまで待っていてもやる気はなかなか出てこないため、無理のない範囲の活動を通してやる気を呼び起こしてくるのです。できそうなことから少しずつ始めて、こころを活性化させましょう。
気分に引っ張られて行動は変化しますが、落ち込んだり心が疲れたりしている事による行動の変化もまた不安を呼びます。このように気持ちと行動との負のループで落ち込みや不安が増大してしまう時、コントロールのコツは「健康行動(役に立つ行動)」を増やすことにあります。私たちの1日の行動量は一定です。そのため、「健康行動(役に立つ行動)」を増やすことで「不健康行動(状況を辛くする行動)」を減らすことが期待できます。
2.不健康行動とは
不健康行動は、様々な不快感を避けるために生じ、習慣化していたり、何気なくやっていたりする行動の場合もあります。ここでは「先延ばし」を例にとって不健康行動が起こるメカニズムを見てみます。
【本当はしないといけないこと】
課題が溜まっている
↓↓↓
【考え】
「面倒くさい」
「こんなに沢山の課題はやりたくない」
「期限までに終わらないかもしれない」
↓↓↓
【気持ち】
憂鬱・焦り・不安
↓↓↓
【不健康行動】
ネットサーフィン・ゲーム
ここで不健康行動を取ることによって一時的にリラックスし、安心感を覚えます。しかし課題が溜まっている事実は変わらず、辛い気持ちが強くなってしまうため、長い目で見ると好ましくない行動(「回避行動」)だと言えます。
このように、何かのきっかけに対して反応(考え・気持ち)が起こり、そこで不快感を回避するために不健康行動を取ると、短期的には気分が少し楽になるものの、長期的には罪悪感が芽生え、また不健康行動に繋がります。この型を、 “Trigger Response Avoidance-Pattern (TRAP)” と言います。
一方で、健康行動を取るとどうなるのでしょうか。ここでは、「ミスをして落ち込み、自分に失望している」状況でまた例を見てみます。
【きっかけ】
授業で課題が出された
↓↓↓
【反応】
「失敗したくない」
気分の落ち込み・不安
↓↓↓
【健康行動】
文献を読む・計画を立てる
健康行動を取ることは短期的には疲れますが、長期的には達成感を覚え、次の健康行動に繋がります。このパターンを “Trigger Response Avoidance-Coping (TRAC)” と言います。
不健康行動のパターンから抜け出す鍵になるのが行動活性化。不健康行動を理解する上では、短期的な結果と長期的な結果で評価してみることが重要です。レクチャーで用いられたTRACの枠(下図)で自分の行動をモニタリングしてみると分かりやすいかもしれません。同じ状況でも行動を変えて評価し、不健康行動を健康行動に変えることで良いループが生まれます。
3.健康行動を増やすコツ
それではどのようにして健康行動を増やしていけば良いのでしょうか。
健康行動を増やすコツはスモールステップに分けること。活動を分解し、取り組みやすいものからチャレンジすると成功しやすいです。やりたく無いという感情は置いておいて小さなことからやってみることが重要です。
例えば、「レポート課題を提出する」ということでも、「PCにフォルダを作成する」「タイトルを書く/氏名を書く/1行書く」「文献の目次を読む」というステップに分解できます。また、心の中に障害物となる考えがある場合、それを前向きに捉え直してみるのも一つのステップです。
4.反すうについて
認知へのアプローチとして、思考を評価することもできます。ここでは反すうを取り上げます。
過去の失敗や将来に関すること、人間関係の問題など、物事を過剰に考え続けることを反すうと言います。反すうは、気分の悪化と活動の減少を招くことが知られています。反すうから抜け出すためには、繰り返し考えたことで生じる結果を評価します。
例えば2分間、同じことを考え続けている時、以下のことを評価してみます。
①問題解決の方向につながったか?
②理解できなかった問題を理解できるようになったか?
③自分を責める気持ちや抑うつ気分が減少したか?
①〜③になっていなければ反すうの可能性があります。そのような時は、この評価を合図に別の行動をとってみましょう。ここに行動活性化の要素が活きてきます。
今回のミニレクチャーは、感情と行動の負のループから抜け出す行動活性化について知る機会となりました。以下、参加者とともに受講したピアサポーターの感想です。
感想
・落ち込んでいる時に、何もしないでいるとかえって様々なことが頭に浮かんで辛くなる、というのは思い当たる節がある。そこで「何かをすれば元気も出てくる」ことを頭に入れておくだけでも、「何かをする」気が起きやすくなりそうだと思った。
・不健康行動のパターンから抜け出すのは大変だが、レポートを作成しなければならないのにどうしても気が向かない時でも「PCにフォルダを作成する」ことならできそうな気がした。言われるまで「フォルダを作成する」「氏名を書く」といった細々としたハードルをハードルとして意識できていなかったため、この活動の分解/スモールステップの作成が大きな鍵になっていると感じた。
・反すうの話で、「考え事をしながら歩いているのは反すうの時間を延長しているだけで散歩にならない」と指摘されていたこと、大変身に覚えがあった。花の数や葉っぱの色、風の匂いなど、意識的に五感に集中して反すうを止めて散歩すると良いということで、すぐに実践してみたいと思う。
東京大学ピアサポートルーム
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