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tacica 20th anniversary tour “AFTER GOLD” at 梅田Shangri-La 感想
全17公演のAFTER GOLDツアーも残すところ後わずか3公演。セミセミ(?)ファイナル。
個人的には1週間ぶりの大阪。大寒波到来で新幹線の道中、真っ白な雪景色が広がっていたが大阪は特にその影響はなし。ただ寒い。風も強く冷たい。しかしながら連休もあって新大阪も梅田も人多し。
感想①美しいライティング
定刻通りに遊戯のSEが流れる中で登場。
まずはオープニング曲倒木からスタート。猪狩さんの歌とギターの音色が会場を優しく包んでくれる。そしてアウトロの中畑さんのドラムの音が木々が揺れる音を思わせ、まさに森の中にいるかのようだった。
そんな「森」の中を抜け出すとドラムの強烈な音から始まる日進月歩。このリズムは拍手を贈られているような気分になって、背中を押されているかのように思える。今回小西さん側にいたこともあってコーラスで声を張り上げている小西さんが見られた。
真っ赤なライトがステージを包んで、小西さんの歪んだベースから始まったミカラデタサビは過去一カッコよかったのではないかと思うほどの演奏だった。それぞれが奏でる音が鋭い刀のような、あるいは重たい鈍器のような、例え方は悪いけど人を傷つけることができるようなそんな攻撃的なプレイだった。またサビではストロボがチカチカと光ったと思ったら、急に真っ暗になったり、ステージのライティングも素晴らしかった。
独特なリズム感と震えるような歌唱がクセになるまぼろしはいつ見ても感心する。素人目から見ても難しいだろうとわかるようなリズム。
吐息が漏れるような猪狩さんの歌声の方こそまぼろしのように思える。
中畑さんのカウントからのEmpty Dumpty。
今回のアルバムには入っていないのに、実は入っていたんじゃないかと錯覚するほど違和感のない曲。力強いドラムはまるで卵の殻を割っているかのよう。
間奏の猪狩さんのギタープレイは今回控えめ。だけどやっぱり何かが乗り移ったかのように演奏していた。
再びアルバムの流れに戻り、メリーゴーランドとSOUPに繋がる。
メリーゴーランドと言ったら遊園地の楽しげなアトラクション。ライティングも華やかにステージを照らし盛り上がっていたが、歌い方はどこか気怠げで、ベースの音色もどこか不気味な印象。間奏のセッションで猪狩さんと中畑さんが向かい合っていて、猪狩さん苦笑い、中畑さんが笑っていたのでもしかしたらどこかミスしていたのかもしれない。
ラストは猪狩さんのソロでピタッと音が止む。
そしてその後続けてSOUPに入る。こちらのライティングも素晴らしくステージを美しく際立たせる。そして、2番のベースメインのところではミラーボールも華麗に回っていた。
何というか色々ごった煮感があってSOUPという曲を表している気がした。
感想② ちゃんと硬い
猪「ありがとう。tacicaです。
小西がグッズ紹介します」
いつもの流れで小西さんのグッズ紹介へ。
端に置いてあったグッズパネルを小西さんが手に取ると、それだけで観客から歓声が。
小「ありがとうございます。なんか温かいですね。癒されます」
確かに今回は今までの会場の中で一番観客の熱量が凄い気がした。
小「今回Tシャツはフロントにツアーのロゴが入っていて、後ろには昨年からのツアー日程が入っています。
パーカーも作りまして、こちらもフロントにツアーロゴが入ってますが、後ろはTシャツとは別のデザインが入ってます。見比べてみてください。外寒いじゃないですか。ライブハウスは暑いですけど。だからすぐ羽織れるジップアップタイプのものを作りました」
今回もクッションは実物を持ってきていた。
小「今回のおすすめです。」
観客から可愛いとの声が飛ぶ。
小「ありがとうございます」
中「小西くんのことじゃないよ」ボソッと呟く。
観客「小西さんも!」
小「……ありがとうございます」
はにかみながら返答していた。
さらにクッションの実物を触りながら説明。
小「こう触ってみると手にちょうどフィットするんですよね。ソファとかにあったらいいんじゃないかと思います」
クッションが手にフィット? と思いながら次のグッズ紹介へ。
今回はあとポーチを現物で持ってきていた。
小「ポーチなんですけど、基はメガネケースです。メガネ使わないよって人は筆入れとかにもおすすめです。あと今回のアルバムのジャケットデザインのクロスもつきます。メガネかけない方はスマホの画面とか拭いてもらえれば。用途は色々です」
小「マルチトレーは灰皿の形をモチーフにしてます。パネルじゃ分かりづらいかもしれないですけど、レーザー加工でtacicaロゴが入ってます。玄関とかにあったら鍵入れとかの小物入れに出来ます。色々使えます」
「ストラップも作ってきました。スマホは勿論なんですけど、今回持ってきたサコッシュにも付け替えできます。あと簡単に取り付け部分が外せるので他のメーカーさんの物とか、他のバンドのグッズにも使えます」
なんでそんな業者みたいな紹介をしてるんだと笑ってしまった。
小「キーホルダーも作ってきました。
ウチら革のものをいつも作ってきているので今回はちゃんと硬いモノ作ってきました」
その言葉に会場が大笑い。
中畑さんも笑っていて、猪狩さんに至っては頭を抱える始末。これがなかなか尾を引いた。
小「あとはCDを持って来てますので是非」
グッズ紹介終了。
猪「……ありがとう。
なんかマルチトレーとかポーチとかコンプライアンスを意識してるよね。言い方が。
柔くなったね。硬くならなきゃいけないのは俺らの方かもね。
あの別に硬いモノを作ろうとしていないいからね。かっこいいものを作ろうとしてるんで。
あと何か業者みたいなんだよね」
猪狩さんが色々総括して話した後には深いため息をついていた。疲れとかやってられないよという感じがひしひしと伝わって来た。
あと、小西さんが観客を沸かせた感じを出せて良かったみたいなことを言ったら、猪狩さんがいやただ(運とか)降りてきただけでしょと突っ込んでいた。
感想③ ちゃんとまた来る
そんなグッズ紹介が尾を引いている中でのネバーランドは一瞬で終わったような気がした。
僕が今日の日を〜と歌いだしたと思ったらいつの間にアウトロの音が流れていた。楽しい幸せな時間はあっという間に過ぎるというのは良く聞くけれどまさにそんな感じだった。
続いてもアコースティックで演奏されるordinary dayの優しくも力強い音が会場に響き渡る。ゆったりと進んでいく演奏がタイトルの日常を感じさせる。
余談だが先日、米津玄師のライブに参加して、その中で毎日という曲があった。あちらの曲は自分なりに頑張りながら毎日過ごしているような歌だった。こちらは自分というよりもっと広い規模、世間、世界という視点から見ているような曲。何気なく日々を過ごすことって案外素晴らしいことなのかもしれない。
ギターを再びエレキに持ち替えて、せーので音が奏でられる花束と音楽隊。今回のアルバムの中でも真っ当なロックサウンドなのでしっかりとライブ映えする曲。
1番の魂が焼けるほど〜の前の中畑さんのシンバルが入るアレンジがここからさらに盛り上がるぞという感じがして見事に会場も盛り上がりを見せていた。
その余韻が残る中で真っ暗なステージがパッと深い青の照明で照らされて始まる群青では熊本の時と同様、小西さんのベース捌きを見ていた。スラップ奏法の跳ねる音が心地よく挟み込まれる。
病気とか哀しみとかで
呼吸の価値を思い知る日々
時々 出会う喜びとかで
呼吸の価値を思い知る日々
先にも書いたが、日々を過ごすことだけでも案外素晴らしいことだと思わせてくれる。
イントロから湧き上がっていた人鳥哀歌はまるで最後の曲かと思うくらいの盛り上がりを見せた。しかし、何故か相変わらず歌詞間違えが異様に多い。わざとなのかもしれないけれど、今ツアー大体違うのではないかと。
2番終わりの間奏でベースソロになるところで中畑さんがドラムスティックで小西さんの方を指していて、ベースに注目! という風にしているのがとてもライブ感が出ていた。
終わると会場からは大喝采。
次の命の更新も今まで見たことないくらいアグレッシブな演奏だった気がする。一番最初に音源として聴いた時は儚さとか哀しみのようなそういうしっとりしたイメージがあった。しかし、今回のライブではライティングも含めて、逆に力強さを感じるような、まだまだこれからも続いていくぞ、ここからまた更新していくぞという気概を感じられた。思わず涙ぐんでいた方も近くにいらっしゃった。それくらい力強いメッセージと表現力を持ったステージだった。
会場のボルテージがまた一段階上がったアロンでは間奏の中畑さんのドラムソロで一段と歓声が上がっていた。その後の猪狩さんの歌唱と小西さんのコーラスも一段と声が張り上げられていた。
この曲はリズム隊のベースとドラムに目が行きがちなのだが、猪狩さんのどうやっているんだというくらいのギター捌きにも見惚れた。
かっこいいとかっこいいとかっこいいが混ざり合えば、言わずもがなというくらい圧巻のステージだった。
またアルバム曲に戻り、夢中へ。
ギターの伸びやかでゆったりしたサウンドが心地よく、その雰囲気にまさしく夢中でのめり込める。最後の最後まで丁寧に音を鳴らし、最後の一音が終わるまで余韻がたっぷりあった。
猪「今回のツアーはたくさんの箇所をまわりたいっていうのがあって。でもやってみたら早く過ぎていって。8年とかぶりの場所もあって、そこの店長に『次はもういなくなってるかもね』って冗談で言われて。……あれ冗談じゃなかったのかな」
小「いや、流石に」
猪「なのでまた大阪と言わず関西もまた来ます。最後に一曲やって帰ります。どうもありがとうございました」
そういって締め括りは物云わぬ物怪を演奏。
もう急いで帰ろうとも
友達は思い出になっていた
ほんのりと寂しさを感じる歌詞。今回のアルバムは錆をテーマにしたとのことで年月の流れというのもそこに汲まれていると思う。年月を過ごせば、寂しいことも悲しいことも辛いこともある。もちろん楽しいことや嬉しいこと、褒め称えるようなこともある。だからやるしかないのさという思いで日々を過ごす。そんなメッセージが猪狩さんの声から、小西さんのベースから、中畑さんのドラムから伝わってくる気がした。
各々、会場へお辞儀をしてステージを去った。
感想④ ラスボスと猫の日
アンコールで再び登場後、話はCDのことへ。
猪「どこからどう見てもCDを作りました……。なんか駄目だね。宣伝に飽きてきている気がして、これは駄目だね。
ここまで来てくれている人たちにする意味ってあるのかな.……?」
中「今日初めての人もいるかもでしょ」
その言葉に猪狩さんはうんうんと頷いていた。
猪「なんめがっていうラジオ番組に今回も出させていただいて。作品にフォーカスしていつも質問もらえるので、色々語ってます。そこでカメラにハマってるってことを話してて、X用に撮ったんだけどなんかゲストはカメラマンみたいな、全然バンドらしくない写真を撮っていた。アーカイブあるので良かったら是非」
ケースをパカッと開けてシールの説明に。
猪「あとシールが付くんですけど、SNSでセリアの推し活グッズを使って飾っているという投稿があって、やろうと思ったらサイズ間違えてて。でも今回ちゃんとサイズ合っているのを買って、それが物販に置いてあります。見ていってください」
観客から可愛いかったとの声にありがとうと返していた。
猪狩さんも結構エゴサとかしてるんだなぁ。
猪「今日、難波から中之島美術館まで歩いていった。1時間くらいかかったんだけど。美術館はめちゃくちゃ良くて、浮世絵にキャッチコピーが入ってたんだけどそれが江戸アートのラスボスって書いてあって。なんか、でも自分がいなくなった後にラスボスって言われるの悪い気しないですよね。shangrilaのラスボスとか」
中「梅田のラスボスとか」
猪「ドラム中畑大樹」
中「よろしくお願いしまーす」
恒例の挨拶が終わったあとに中畑さんがボソッと「今日猫の日だけど、別に猫の方も猫の日なんて気にしないよね」と呟く。
猪「犬猫の飛行機問題あるじゃないですか。飛行機に乗せられないっていう問題」
話が長くなりそうなのを察知したのか中畑さんが立ち上がってストレッチ。猪狩さんも振り向いて苦笑い。
猪「でも、その問題に終止符を打つようなコメントがあって。"そもそも猫も犬も飛行機に乗りたいと思ってない"ってあって。でももうなんか大喜利みたいですよね」
確かにーと共感していたら、ここで猪狩さんが唐突に「ベース小西悠太」と紹介。
小西さんが客席も聴き取れないくらいで何かゴニョゴニョ言った後に「ギター猪狩翔一」と紹介をしていた。
じゃあ曲をやりますといつも通り宣言してからのCo.starからスタート。
さっきまでの緩さはどこへ行ったんだと思うくらいのかっこ良さが冴え渡る。
こちらも中畑さんのスティックカウントがあってからのラストサビに痺れたと思ったら最後の吠えるような猪狩さんの歌声にまた痺れた。
猪狩さんがアンプの方に近づき、少し前傾姿勢をとってからの締めはHERO。
アースコードの方が多かった気がするけど、熱量が高いこの会場でこの曲の演奏は大変盛り上がった。メンバーの皆さんの演奏も楽しそうでこちらも楽しかった。
セットリスト
倒木
日進月歩
ミカラデタサビ
まぼろし
Empty Dumpty
メリーゴーランド
SOUP
ネバーランド
ordinary day
花束と音楽隊
群青
人鳥哀歌
命の更新
アロン
夢中
物云わぬ物怪
en.Co.star
en.HERO
最後に
今回は会場の雰囲気も熱狂的で、凝り固まったアナログの考えかもしれないけど、やっぱり大阪はノリが良くてメンバーもそれに釣られて楽しそうにしていた気がする。
猪狩さんも仰っていたけど、あっという間のツアー。11月から始まって毎週のようにライブに行っていたけどそれももう少しで終わりだとやっぱり寂しい。
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