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新代田でもう一つの"ブラックホール" 感想(猪狩翔一弾き語りメイン)
tacicaのGt.Vo.猪狩翔一さんの弾き語り感想。
つい先日、tacicaワンマンツアー物云わぬ物怪を終えたばかりでの弾き語り。
今回はFCサイトのラジオでも語っていたが、猪狩さんたっての希望で今年リリースされた「ナニユエ」にも携わっている森田くみこさんとの共演。
タイトルのもう一つのブラックホールとはtacicaと森田さんが共演した、ビルボードライブのタイトル「裸の特異点」から。
感想①森田さん
先行は森田さん。猪狩さんはバーカウンター部分で立ち見。
「猪狩さんとまた共演できて嬉しい。よろしくお願いします」
謙虚に控えめな声で自己紹介をしたと思ったら、人が変わったかのようにキーボードを強く叩き、力強い歌唱を見せてくれる。
失礼ながら森田さんの曲は少ししか知らなかったけれども、「生きててよかった」が聴けただけでも"生きててよかった"と思わされる。
せっかくなので、ということでtacicaのLEOをカバー。カバーするに当たって猪狩さんにセトリを決めているか聞いたところ、決めていないということで、あまりやらないような曲を演奏したいということで決まったそう。
鍵盤で演奏する女性が歌うtacica。新たな魅力を感じた。途中歌詞を間違えて、思わず間違えちゃったー、と明るく言っていたもののそれすらもこういうライブだからこそなのだろうなと楽しめた。
最後は笑顔で手を振りながら締めた。
感想②短い曲
ステージ転換のために一旦休憩。森田さんのキーボードは端に寄せられる。
弾き語りは相変わらずの眼鏡で、立ちながらの演奏スタイル。
「森田さん良かったですね。森田さんに鍵盤とコーラスだけ入れてもらうって申し訳ないことしたな……」
と前半の森田さんを絶賛してから演奏を始める。
一曲目はcaffeine 珈琲涅。tacicaのライブでは久しく聴いていない気がするけど、弾き語りでは割と定番なこの曲。
「今回珈琲をつくって、だから一曲目はcaffeineだなって決めてた。だけど近藤さんの時にも一曲目caffeineだったなって思い出した」
今回の公演に際して、二人が珈琲好きということもあり、オリジナルブレンドのコーヒー豆が限定で販売されていた。また、会場でもこの豆を使ったアイスコーヒーとコーヒーハイも販売されていた。
「近藤さんとやる時は絵を描く都合もあるから、曲の尺を伝えておいた方がいいなと思ってて。caffeineやる時に短い曲です、って伝えていざやってみたら、思ったより短かったって近藤さんに言われてしまった。
ホワイトストライプスっていうツーピースのバンドがいて、ステージに出てくるなり、ギターとドラムが一音だして退場するっていうのがあって、それを知っているからか免疫があって、大丈夫かなと思ってた」
恐らくこちらがその時の映像。確かにこれに比べてしまうと……。
感想③単独飛行発の曲たち
ディスコード。ディスコードを聴いたのは今年3月にあった猪狩さんのワンマン(といいつつアンコールでは小西さんが登場した)名古屋弾き語り公演のこと。その時から好きだったし、バンドアレンジも中々耳に馴染んできた頃、また弾き語りを聴くとさらに違った曲のように思える。
「グランドピアノは別だけど、ピアノはチューニングなくていいなって思います」
「コーヒーどうっすか?森田さんも僕もゴリゴリに苦いものが好きだから、どうせならブラックホールブレンドっていう名前にしようって決めました。ブラックホールって名前で苦くなかったらなんか変だよね」
未音源化のネバーランド。こちらは京都の単独公演(といいつつもブラザー小西が登場した)時に初視聴した曲。
子供のまま生きるネバーランド。子供の頃には持っていたもの、大人になることで忘れてしまうこと。或いは忘れたいのに忘れられないこと。
誰しも当てはまるような「共感」を歌にするのが本当に美しい。
続いて荒野を行く。
初めに聴いたのは弾き語りであったが、バンドセットのアレンジを最近聴き続けていたために新鮮味を感じた。たった1週間前にバンドセットで聴いていたのに、改めて聴くとやっぱり胸を打たれる。
「今日来る時にブルマを履いて太極拳をしているおじさんがいた。太極拳自体の動きはめちゃくちゃしっかりしてて。それにも驚いたんだけど脇に置いてある黄色いポーチに目がいった。どう考えてもこれに着替えは入ってないだろうから、きっと家からこの格好で来たんだろうなって。東京怖いなって思った。
羞恥心を捨てたとかじゃなくて、大義名分があるんだろうなって思うと、そこまでしてやりたいものってあったかなと考えたけど何もないなって思った」
そんな深く考えるとは……。
感想④愛あるカバー
「森田さん、せっかくLEOカバーしてくれたのに森田さんの曲じゃないカバーやっていいですか?」
最近発声練習でよく使っている曲のperidotsの
リアカーを披露。peridotsはあの中畑さんがメンバーのバンド。中々に高めでキツそうな声を出しているなと思っていたら、原曲はさらにキーが高いそう。peridotsは他にもチャレンジしたい曲があって、不定期に挑戦していきたいとのこと。
「チューニングなければなぁって思うんだけど、チューニングに助けられてる部分もあるなって思う。いかがですか?」
まさかの質問。
LEOやった方がいいかな、とLEOを披露。
crossingのステージの上に小さな電球があり、mvを思い浮かべる。猪狩さんの発する"さあ"には魔法がかかっている気がする。先日のワンマンツアーにおいて披露された夜明け前のサビの"さあ"という言葉に思わず猪狩さんに手を伸ばしてしまいそうになったのと同じように、今回は一歩踏み出したくなる。
「森田さんのLEO良かったよね?」
その言葉に観客が深く頷く。
「深く頷いたね……結構傷つきました」
でも、本当に深く頷いてしまう程に森田さんのLEOは素晴らしかった。
「愛あるカバーって曲が喜んでる気がして、感動する」
最後は未音源化の物云わぬ物怪。京都の単独飛行で語られていたが、ツアータイトルにはしたもののミニアルバムには入らなかった曲。アレンジも出来ているとその時話されていたので、ツアーでサプライズでやるのかなと期待していたがやらなかった。恐らく次のアルバムにこれとネバーランドは入るだろうと予想。という入れてください。お願いします。
感想⑤コーヒーとAIグラビア
終わってギターを置くかと思いきや、すぐさまやりまーす、との声でアンコール開始。ここから森田さんも前に出てきて準備。
森「こういうセットしてるときに喋る人がいると嬉しい、ってバンドマンがいってました」
猪「いや、俺はいないけどね。こういう時に喋ってくれる人」
森「じゃあ今日は私が喋りまーす!!」と森田さんが盛り上げてくれる。
「こはぜ珈琲とコラボしたコーヒー豆買ってくれた人いますか?」
私自身も公演前に買いに行ったが、会場の方の多くもどうやら買いに行っていたようで、森田さんが驚く。
猪「店の方で言えば、すごい苦いのが苦手な人には浅めにしてくれるみたい」
森「私はゴリッゴリのパンチの効いたやつが好き。もう胃を焼き尽くすような笑 そんなのが好きで、猪狩さんもそういうのが好きそうで良かった」
ここで猪狩さんがずっとしようと思っていた話をしたいと宣言すると、森田さんはえっ、怖いと怯えていた。
猪「インスタでグラビアの写真送りつけたのってどう思ってた?」
森「猪狩さんってそういうのに全く興味なさそうな人だと思ってたから、乗っ取られたなって思ってた」
猪「あー、そうか。でもさ、乗っ取られてなかったじゃん。今日まで何度も顔合わせてきたけど、どう思ってたのかなと思ってて」
猪狩さんがここでそれを送ってしまった経緯を説明。
YUGEのジャケットにも携わったデザイナーと打ち合わせの際にAIの話が出てきたそう。それをネットで調べていたら、インスタでAIが作ったグラビアが出てきた。それを寝ながら見ていたところ、思わずそれを落としてしまい、誤タップによって森田さんにそれが送られてしまったという。
森「そういうことにしておきましょう」
猪「思い出したんだけど、そのグラビア、ブルマだったんだよ」
森「運命ですね笑 ブルマかぁ」
猪「森田さんの世界観とか凄かったからこの話どうしようかなって思ってた。だけど準備してたから言わないわけにもなぁと思って」
森「万が一本当に送ってきても受け入れますよ」
猪「日頃のキャラと行いもあるよね」
森「でも私も送ったことありますよ。ただ削る動画とかしか見てないんで」
猪「えっ、ちょっと待って、ちょっと待って」
森「磨くとか削る動画見てます」
感想⑥セッションとアクシデント
曲やろうかと猪狩さんの一言から森田さんの曲「明かりのない街」を猪狩さんとセッション。誰かとセッションする猪狩さんを見るのは中々珍しい。
"この手で何かを作りたい"で二人の歌声がハモる。まさしくな歌詞にニヤついてしまう。
また是非森田さんとの曲を作って欲しい。
明かりを消して星を見よう。景色を見たいから、スマホを持たないでたぬきちの散歩に行くという猪狩さんの話を思い出す。作詞と作曲をこなすアーティストの方だからこそ、そういったことがアイデアにも繋がっているのかもしれない。
猪「良かったかもしれない」
森「僭越ながら」
ここでギターの弦が切れるハプニングが発生。切れた弦は一番前の席近くまで飛んでいた。
猪「切れそうだとは思ってたんだよね」
森「弦切れてるところ申し訳ないんですけど、またやれたらなって思ってます」
試奏するも中々難しそうな表情を浮かべていた。
一度はこれでやってみようと言ったものの、張り直すことに。
猪狩さんがマネージャーにギターを託すと、森田さんにちょっと喋ってて、とお願い。
森「ずっと一人でやってきて、一緒に演奏できるのってうれしい!たのしい!大好きみたいな」
猪「何だっけそれ」
森「ドリカム」
猪「昨日も会ってたんだけど、話してばっかだったね」
森「一時間半くらいの録音で、3回くらいしか合わせてなかった」
猪「でも、無駄じゃなかったね」
森「バイブス?」
猪「バイブスとか使ったことないけど、しっくりきた」
森田さんがバンドやっても、結局森田くみこだったと話していると、またしてもギターの弦が切れる。さすがにこれには猪狩さんも笑っていた。
森「ピアノでやりますか? ぶっつけ本番になりますけど」
やってみようか、と猪狩さんがギターを置こうとするもあった方が落ち着くな、となかなか置かない。せっかくだから味わいましょう、と森田さんの一言で観念したようにギターを置いて、直立不動でダンスを歌唱。
ギターを持たない猪狩さんと森田さんのピアノ。恐らくもう見られない光景を目の当たりにした。
昨年のビルボードライブでも二人で歌われたこの曲を思い出す。ビルボードという特別な空間で行われた裸の特異点はその名の通り、まさにブラックホールでtacicaと森田さんの音楽が織りなす空間に引き摺り込まれた。
猪「凄いね、良かった」
と思わぬアクシデントに見舞われながらも、アドリブでフォローした森田さんをベタ褒めして拍手を送っていた。
森「直立不動の猪狩さんを見られて新鮮でした」
二人のステージはお互いがお互いを讃えながら終わりを迎えた。
セットリスト
CAFFEINE 珈琲涅 (jibun)
ディスコード (YUGE)
ネバーランド (未音源化)
荒野を行く(YUGE)
リアカー peridotsカバー
LEO (LOCUS)
物云わぬ物怪 (未音源化)
en.明かりのない街with森田くみこ 森田くみこカバー
en.ダンスwith森田くみこ (singularity)
※()内はアルバム名。
おわりに
森田さんのライブを見るのは初めてだったのだけれど、mcと歌唱のギャップに驚く。その曲のストーリーや背景を語ってから演奏をするスタイルで初めて聴く曲でも想像を膨らませやすかった。
猪狩さんは曲を紹介するような語りをするのは苦手、と以前に話していて全く逆のスタイルの二人だった。しかし、世界観では根本的な部分ではすごく似ているなと思うこともあり、だからこそこうやって共演出来たのかなと思った。
tacicaのことが本当に好きだ、と森田さんが以前話していて、物云わぬ物怪の東京公演にも遊びにきていて、さらに物販の列まで並んでしまっていたという。その愛がこちらまで伝わってきた。
また来年のビルボードはもちろん、再来年の結成20周年の際にも関わっていただきたい。
もちろんこのイベントがまた開催されることも首を長くして待っている。
生きててよかった そう思えるように
今日も生きていく
キミのもう迷わないとは
只 群れを成して生きること
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