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tacica 20th anniversary tour “AFTER GOLD” at 熊本Django 感想
AFTER GOLDツアーの12本目。11月からスタートした今ツアーも残すところわずか。
立春を過ぎたというのに、大寒波が列島中を襲ってきていたためかなり寒かった。
感想① 距離感の近いステージ
初めてのライブハウスであったが、全体的にこぢんまりとした会場で、ステージまでの距離感が非常に近い。客席で聴くというかメンバーの一員になっているかのような。それくらいの近さがあった。
定刻になると客席の脇を通ってからメンバーが登場。遊戯のSEが流れて森を思わせる緑の照明が照らされる中での倒木。猪狩さんのギターソロ後に、木々が揺れて葉と葉が擦れるような音にも似たドラム、ベースの音が入り込んでくる。after goldの世界観に一気に引き込まれる。
ドラム先行で始まる日進月歩は、文字通り段々と進んでいくようなリズムが心地良い。
1番の終わりから2番初めまでの駆け上がって行くところは小西さんのベースを思わず凝視してしまう。
ミカラデタサビはステージからの距離が近かったこともあって全てがいつも以上に臨場感が増して聴こえてきた。なかでも特に中畑さんのドラムの音が直接身体全体に伝わってきた。間奏の際のメンバーそれぞれの音が混ざり合う感じは長年やってきた結果出せるものだと勝手に解釈している。
小西さんのチョッパー奏法が光るまぼろし。
前曲の攻撃的なベースとも違う独特な音を奏でる。そして歌も独特なリズムで歌われて、色気あるいは妖気さが漂っていた。
3人見合わせるようなカタチからスティックカウントで始まるEmpty Dumpty、メリーゴーランド。
こちらの2曲はいい意味で力の抜けた猪狩さんの歌声が聴ける。
メリーゴーランドからほとんど間を置かずにSOUPの演奏に続く。ここはCD音源と同じような流れ。
ラスサビ前、溜めてから猪狩さんの歌が「大都会〜」と力強く響く。中畑さんが演奏中にニヤリと笑っていたのも印象的だった。
感想②グッズ紹介
猪「ありがとう。小西がグッズ紹介します」
なるやんさんが出てきて小西さんへグッズを渡す。しかしうまく受け取れなかったのか、トレーだけステージに落ちていい音が鳴る。
小「ありがとうございます。熊本8年振りの物販紹介です。たぶんその時も自分がやっていたと思います。
じゃあ紹介していきます」
「Tシャツはバックにスケジュールがプリントされてます。
パーカーはTシャツと同じロゴがフロントにプリントされてて、バックは別のデザインが入ってます。今回はフロントにジップがあるものになっていて。昨日とか今日とか、明日も寒いので是非。逆に寒くなってよかったかなと」
ここで実物が用意されていたクッションを手に取って紹介。
「今回クッションを作りまして、いつもこの袋に入った状態で紹介してるんですけど、今回は開けてみようかなと。
あの、ただこれ不慮の事故で多少空気入ってるんで本当はもう少し小さくなってます」
じゃあ、と圧縮ビニールを破る。その後取り出したクッションを思いっきり押し潰していた。
猪「めっちゃ押すじゃん」
小「思ったより膨らまなくて」
割と力入れて押していた印象。
小「可愛いですよね。これ、誰かの家のソファにあったらいいなって自分は思っちゃいます。
今回の推しです」
トレーも今回現物を用意。
「カタチは灰皿ですけど、小物入れに使えます。玄関にあったらオシャレかな、と。見えないかもしれないですけどtacicaロゴが入ってます」
「ポーチも今回作りました。元はメガネケースなのでクロスがつきます。
スマホストラップは調整できるようになってます。なので身長が高い人も低い人でも同じ高さで使えます。
キーホルダーのデザインなんですけど、結構SAとかのガチャガチャでこういうデザインのものがあって。可愛いかなと思います」
「あと、今回メインになるんですがアルバムを熊本に持ってくることが出来ました。是非」
終了後、反省会。
猪「ルッキズムがちょっとあったよね」
小「え? 何だっけ?」
猪「身長が高い、低いとかね」
小「あ、たしかに」
猪「あとクッションさ、あんなに押す? 何かもう隠す気がないくらいやってたよね」
小「思ったより膨らまなくて動揺してた」
猪「本来は別にあんなことしなくて良いんで。自然と膨らんでくるものなので。膨らましたい方は是非ね」
雪の話。
猪「雪がすごくてね。
金曜の6時に出たんだけど、2回くらい下道に案内されたこともあって着いたのが21時。
スタッドレスだし、言っても僕ら北海道出身なのでみんなこれくらいの雪で騒ぎすぎかなとか思ってたんだけど、山口の雪は流石に引くくらい降ってた。でも何とか無事来られてよかったです」
小「風がめちゃくちゃ強かったね。高速道路って山の方にあるからかめちゃくちゃ強くて。ガソリンスタンドの看板が飛ばされてた」
猪「鳥が飛べてなかったもん。鳥が飛べなきゃ誰が飛べるんだっていうね」
本当に無事に来られてよかった。
飛行機や新幹線も大きく影響を受けていたので、鹿の仔たちも無事到着できているようでよかった。
感想③ 体調管理
グッズ紹介明けはアコースティックのネバーランド、ordinary dayと続く。
伸びやかでゆったりと丁寧に一音一音、一語一語を奏でていた印象。しかし、若干ギターの演奏時にノイズのような音が入っていた気がした。猪狩さんも時折アンプの方をちらりと確認していた。
エレキギターに持ち帰ると、3人がせーので演奏しだす花束と音楽隊。アコースティックの優しい音色からのロックサウンド。この緩急の付け方もライブの醍醐味。先ほどまでの3人とは違うノリノリで楽しそうに演奏する様がとても印象的だった。何となく歌詞からはこれからもバンド続けていくよという決意表明のようなものを感じ取れる。
ここからは既存曲メドレー。
青い照明でステージが輝いていた群青。こちらもまぼろし同様小西さんのチョッパー奏法に目がいっていた。
お次はバンドの代表曲的な人鳥哀歌はイントロからすでに歓声が上がる。クラップもあったりこういう分かりやすく盛り上がれるノレる曲があると自然と会場にいる全員の一体感が出てくる。
次の曲の準備中に客席で体調不良で倒れてしまった方が。中畑さんも気付き、なるやんさんと周りにいた方たちと協力して後方へ運ばれていった。
さすがに演奏は出来ず、一時待機状態に。
小西さんの前にいた方だったので、猪狩さんが小西さんに「何したの?」と詰め寄っていた。
小「何も……。あのでも本当に体調悪い方いたら無理しないでください」
猪「ドクターですか?」
場を和ませるトークが続く。
猪「昔、調子悪い時に熊本来てて。体調悪いとヴィレヴァンによく行ってだんだけど。熊本のパルコで稲中のラジコンを買って、それを今でも自分の部屋の一番いいところに飾っている」
小「あっ! あったね。思い出したわ。何か楽屋で走らせてた気がする」
猪「狂気だよね」
この話どこかで聞いたことあるなーと思っていたら2023年の「物云わぬ物怪」ツアー埼玉公演で話されていた。
猪「気候とかも結構急に変わったり、体調悪くなりやすいのでみんなも暖かくして、よく食べて、よく寝てください。ありがとう」
猪狩さんから気遣う言葉をかけられてからライブ再開。
歌詞にも「夜」という言葉が出てくるからか、冬の静かな夜にどこかマッチするLEO。
人鳥哀歌と同じような盛り上がりを見せるアロン。間奏の中畑さんのドラムソロで歓声が上がるのはもう恒例。激しい音が演奏されていたというのに、最後はピタリと音が止んだ。その時の一瞬の静けさが案外好きだったりする。
ギターの伸びやかな音が特徴的な夢中。ゆったりとしている曲で7分近くある曲だが、その長さを感じさせない。終盤で猪狩さんがビブラートを効かせるために右手をめちゃくちゃ揺らしていたのが印象的だった。割と静かめの曲なのに動きが激しくギャップがあった。
猪「熊本、8年振りだっけ?」
小「うん。しかも前は4人だった」
猪「またすぐ戻って来れるようにしたいです。最後に一曲やって帰ります。どうもありがとうございました」
本編〆の一曲はアルバムラスト曲でもある物云わぬ物怪。
"古くて草臥れた〜"からの猪狩さんのギターソロ、どこか哀しくて寂しい音色。もう過去には戻れないけれど、未だに過去に縋り付いているような。でも、その後のラスサビでドラムとベースの音が混ざり合ってきて、現実と向き合い、未来を見据えるような。少しだけど前を向けるようなそんな曲。
最後の一音が鳴り終わったのを確認してからメンバーがステージを降りていった。
感想④ くまモン
少々長めに間を空けてから再びステージに登場した。
猪「ありがとう。
さっき小西も言ってたんだけどアルバムを作ってきました。CDじゃない媒体で聴いている人たちも多いって分かってるんだけど、CDを作らないと作品を作った気がしないので作りました。
あと、4月6日に東京で記念公演をやります。それでポスターも作ってて。モバイル会員限定なんだけど販売しているので、良かったら。
終わったら物販立ってるので、見るだけでもいいので見ていってください」
猪狩さんがチラッと後ろを見てからの中畑さん紹介。
中「よろしくお願いしまーす」
猪「今朝、中畑さんと一緒にくまモンショーを見てきました。全然詳しくなかったんだけど、見事にハマっちゃって」
猪狩さんのアンプに乗っていたくまモンを手にする。実は初めからずっと気になっていた。いつものペンギンとダルマの隣に置いてあったので熊本だからかなと思っていた。
猪狩さんがくまモンフィギュアを見せびらかしていた。
中「めんこいねぇー」
猪「ショーも何か思ってたのと違って。結構機敏だった。何か熊の本能がまだ残ってる感じ、飼い慣らされていない感じがあっていいなって」
後ろで中畑さんが熊が鮭を取る仕草をしていたのが面白かった。
アンコール2曲はCo.starとアースコード。
Co.starのラスサビ前の中畑さんのスティック同士を合わせるカウントがさらに盛り上げてくれた。今回ツアーで2曲目のアンコールは変動してるけれどCo.starはどの公演でも演奏されている。だからか聴くごとに洗練されていってる気がする。
ラストに相応しい壮大なアースコード。ライブアレンジのアウトロが掻き鳴らされている最中に猪狩さんが頭を下げて、つられるように小西さんも頭を下げていた。
最後はピックを捨てるように床に置き、ギターもそのままステージに置きっぱなしにして去っていった。
その後、パーカーに着替えて、お待たせしましたと猪狩さんが物販に立っていた。お疲れだろうに。猪狩さんの体調も心配になる。とても有り難いけれど、体調だけは気をつけていただきたい。
セットリスト
倒木
日進月歩
ミカラデタサビ
まぼろし
Empty Dumpty
メリーゴーランド
SOUP
ネバーランド
ordinary day
花束と音楽隊
群青
人鳥哀歌
LEO
アロン
夢中
物云わぬ物怪
en.Co.star
en.アースコード
東京と仙台と同じセットリスト。熊本8年ぶりと言ってたので何か変化あるかなと思いきや変化なし。
さいごに
記録的寒波で交通機関も多大な影響を受けるなかだったが開催されてよかった。私は羽田から熊本まで飛行機で来たが気流の影響で大分揺れたが問題なく来ることが出来た。
初めての熊本、もちろん初めてのライブハウスだったけど距離感が近くいつもとは少し違った視点で見ることが出来たと思う。気づけば残すところあと5本。体調に気をつけて残りのライブにも参戦していきたい。
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もうあの時代には戻れないんだよな……